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米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、12-13日に金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)を開催して、0.25%の利上げを決定。政策金利であるFFレートの目標を1.00-1.25%から1.25-1.50%に引き上げた。今年に入って3回目、2015年12月に利上げを開始して5回目の利上げだった。

FOMCの結果を受けて、市場金利は低下、米ドルは下落した。利上げがほぼ確実視されていたため、「材料出尽くし」となったからだろう。ただ、それだけでなく、FOMCの決定が7対2であり、反対した2人のメンバーが「据え置き」を主張したことも大きかったかもしれない。今後の利上げが難しくなると判断されたからだ。

もっとも、利上げと同時に発表されたFOMCの政策金利見通しは、2018年に3回の利上げを想定していた。これは個々の参加者の見通しの中央値であり、全体では0回(=利上げなし)から5回までと参加者によってバラバラだった。それでも、分布は前回9月時点からほとんど変わっていない。

一方、FFレート先物などで市場の予想をみると、2018年に2回の利上げが5割ちょっとの確率で織り込まれているに過ぎない。つまり、「3回どころか2回の利上げも難しいかもしれない」が市場の有力な見方である。

ちょうど1年前には、2017年の利上げ回数をFOMCは3回と想定する一方、市場の予想は2回だった。結果からみれば、FOMCが正しかったことになるが、2018年はどうだろうか。

2018年の金融政策をみるうえで、注目すべき点をいくつか挙げておこう。まず、税制改革の行方だ。トランプ大統領が選挙公約にしていた、減税を含む抜本的な税制改革は、議会で法案成立の一歩手前まで来ている。

FOMC後の会見で、イエレン議長は「株価の上昇は一部に税制改革を反映している」と語った。FOMCの経済見通しでも、2018年の経済成長率は9月時点より上ぶれしており、FOMC自体が税制改革の景気刺激効果を見込んでいることがうかがえる。

今後、税制改革がスムーズに成立するのか、その中身が市場の期待に応えるものなのか、それらは株価の行方を考える上でも重要なポイントとなりそうだ。

次に、賃金や物価の動向がある。それらが落ち着いていることが、FRBが利上げに慎重になっている最大の背景だ。賃金の伸び悩みが続いているものの、失業率は17年ぶりの水準まで低下しており、労働市場が相当にタイトになっていることを示唆している。また、FOMCは、足元の物価の軟調は一時的要因が大きいと判断している。今年春に携帯通話料金が大幅に下がった。物価上昇率は前年同月比でみるのが基本なので、しばらくは物価を押し下げる状況が続く。しかし、その効果も18年春にははく落するので、FOMCの想定通り物価上昇率が高まっていくか、大いに注目だ。

イールドカーブ(利回り曲線)のフラットニング(平坦化)も気になるところ。これは短期と長期の市場金利の差(短期金利<長期金利)が縮小することを指す。FRBの利上げを反映して短期金利はジリジリと上昇してきたが、長期金利はさほど上昇しておらず、結果として両者の差が縮小している。このままいけば、18年には逆転(短期金利>長期金利)がみられるとの予想もある。経験的には、長短金利が逆転してから1〜2年後に景気が後退する傾向があるため、フラットニングが進めば、FRBは利上げを躊躇するかもしれない。

そして、FOMCの構成が変化することも無視できない。周知の通り、18年2月にFRB議長(=FOMC議長)が現在のイエレン議長からパウエル理事に交代する。生粋のエコノミストだったイエレン議長と異なり、パウエル新議長の専門は金融制度だ。したがって、金融政策の判断に関して、パウエル新議長はFOMCの議論をリードするよりもコンセンサス形成を重視するかもしれない。

FOMCは、議長と副議長を含むワシントン本部の7人の理事(現在は空席が3)と、全米12の地区連銀の総裁が参加する。そして、政策決定に関する投票権を持つのが、7人の理事と5人の地区連銀総裁の12人だ(現在は9人)。ウォール街を管轄するニューヨーク連銀の総裁は常時投票権を持っており(現在のニューヨーク連銀総裁は来年夏ごろの引退を表明している)、残る4人の総裁は1年ごとのローテーションで決まる。

今回、「据え置き」を主張した2人のメンバーはいずれも、地区連銀総裁の中で利上げに慎重な「ハト派」とされているが、18年は投票権を持たない。代わって投票権を得る総裁らは、利上げに積極的な「タカ派」が多いとみられる。

一方で、金融政策担当の副議長を含めて空席の理事は、トランプ大統領が指名する権限を持っている。どのような人物が指名されるかによっても、FOMC内のパワーバランスは変化しかねない。

上記以外にも、ワシントンの政治動向、世界の経済状況、他の主要中銀の金融政策、株価や為替相場、商品市況、金融機関の健全性、あるいは北朝鮮や中東における地政学リスクなど。金融政策の判断において、様々な要素を考慮しなければならないことは言うまでもない。

○執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。