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text:Fumio Ogawa(小川フミオ) photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

もくじ

パワートレイン
ー 手がけるのは「アウディスポーツ」
ー パナメーラ4Sを引きあいに

駆動システム
ー クワトロ、コーナーでも威力

外装
ー クーペならではの華やかさ

内装
ー 気分が盛りあがる演出が随所に

試乗記
ー 「RSは本当に『別もの』だ」
ー だからといって「これみよがし」ではない

スペック
ー アウディRS5 スペックをおさらい

パワートレイン

手がけるのは「アウディスポーツ」

レースカーなどを手がけるアウディAGのモータースポーツ部門がアウディスポーツ。そこが手がけたホットモデル、アウディRS5クーペが2017年12月に日本に上陸した。

アウディスポーツの前身はquattro GmbH。リッチなリソースを駆使して、スペシャルなスポーツモデルを作りだすことでも知られている。モータースポーツをはじめ、歴代のRSモデルもここが手がけてきた。

RS5クーペの導入を喜ぶアウディファンが日本にも多いだろう。なにしろ(すべてのモデルに共通しているが)RSというのはしびれるような官能性をそなえた『別もの』である。

RS5クーペは、2017年5月に発売されたA5クーペをベースにしながら、ドライブトレインもサスペンションも専用開発されているのが特徴だ。

エンジンは2893ccV6バイターボ。これは最新のスポーティなパワーユニットだ。本国ではほかにRS4アバントに搭載されている(日本市場には2018年導入予定とか)。

この新しい高性能V型6気筒ユニットは、3.0 TFSIエンジンから派生したもの。特徴のひとつはバンク角をあえて90度にしているところにある。

読者のかたもご存知だろうが、V型エンジンにとって理想のバンク角は60度。それでもあえて90度を選択した理由として「重心を下げられる」ことや「バンク内に触媒コンバーターや補機類が搭載できること」のメリットの大きさがプレスリリースでは挙げられているのだ。

スチール製のシリンダーライナーを用いたアルミ合金製クランクケース、燃焼室の中央にインジェクターを配した新しいTFSI(燃料直噴システムとターボチャージャーを組み合わせたパワートレイン)の燃焼方式、エグゾーストマニフォルドをシリンダーヘッドと一体化したサーマルマネージメントシステムといったものは共用である。

3.0 TFSIエンジンからの変更もある。

パナメーラ4Sを引きあいに

3.0 TFSIエンジンからの変更は、言うまでもなく排気量だ。シリンダーのストロークを3mm短くして86mmとしている。「内部にかかるより大きな応力を考慮して」とアウディでは説明する。さらに微視的にみると、クランクシャフトを補強するために、メインベアリングの径は独自に2mm拡大している。

もうひとつ、というか最大の変更点ともいえるのが、バイターボ化だ。バンクごとに大径ターボチャージャーを装着して大出力を絞り出している。さきにも少し触れたインジェクターもハイパワー化に貢献している。

このユニットはアウディがいうところの「Bサイクル」という燃焼方式が採用されている。エンジンの負荷状態、つまり回転に応じてバブルの開閉タイミングが自動的に調整されるのがこのシステムの妙。

アクセルペダルをあまり踏んでいないときは燃費重視の燃焼で、とばしているときはパワーが重視される。これに高性能インジェクターも大きく貢献しているという。

すでに何度も登場する名称だが、わざわざ特別な名前をつけたのには、従来のミラーサイクルにターボ技術と、理想的なスワールを燃焼室内に発生させたうえでインジェクターにより高効率の燃焼を実現しているという自負からだ。

興味ぶかいのは、現在ポルシェとアウディは(ある意味かつての924時代のように)エンジン開発において緊密な協力関係にあることだ。このアウディいうところの2.9 TFSIユニットも同様だ。パナメーラ4Sと(ほぼ)おなじである。

RS5クーペとパナメーラ4Sの2つのユニットを比較する、基本的な成り立ちは同じで、ストロークは86mmと共通。ただしボアがポルシェでは84mmであるのに対してアウディは84.5mmと拡大されている。パワーはポルシェが440psだがRS5クーペは450ps。トルクも56.1kg-mから61.1kg-mへと引き上げられている。

駆動システム

クワトロ、コーナーでも威力

クワトロシステムは、通常フロントに40%、リアに60%のトルクを配分。やや後輪駆動の雰囲気を残し、最大で85%のトルクが後ろにいく。

RS5クーペのクワトロシステムに組み合わされるのは、セルフロッキング機構を備えたセンターディレンシャルギア。リアディファレンシャルには電子制御式多板クラッチを使ったスーパーポジションユニットを組み込んでいる。

ねらいはコーナリングをよりスムーズにより速く行わせること。ワインディングロードなどでは後輪にスタンバイのトルクをかけていることで、タイトコーナーなどでのトルクコントロールが迅速に行えるのがメリットだ。

絶えずコンピューターでトルク配分を計算しているこのユニットは、タイトコーナーでは外側の駆動輪により大きなトルクを配分して車両をカーブの方向へと押しやる。結果、ニュートラルステアに近づき、トルクを有効に使った、つまり速いコーナリングが可能になるのだ。

外装

クーペならではの華やかさ

アウディRS5クーペの実車を見て思うこと。第一にスタイリングの華やかさが強く印象に残る。現在A5ラインで最もスポーティなRSモデルが設定されるのはこのクーペだけ。

全長4725mmと扱いやすいサイズの車体に長めの前後長をもったルーフが組み合わされている。プロポーションがいいA5クーペの長所が活かされている。リアクオーターウィンドウの伸びやかなグラフィクスがいいかんじだ。

アウディのデザイナーがうまいなあと感心するのは、ちゃんと4人乗れるパッケージをもったオリジナルのクーペボディを活かしつつ、エアロパーツの付加と、ディテールまで気配りされたカラーリングで、唯一無二の存在感を実現しているところだ。

とくに試乗車はミラノレッド(パールエフェクト)という赤色系の外板色で、ふつうの赤より朱色に近いあざやかな発色が特徴的だ。クロームとグロス(艶あり)ブラックのアクセントとともに、かなり目を惹く仕上げである。

内装

気分が盛りあがる演出が随所に

内装も同様だ。ドアを閉めると見せられないのが残念だというぐらい、スポーティでかつほかにないキャラクターが確立されている。

スウェードとスムーズ、2種類の表面処理されたレザーを組み合わせて、レーシングカー的な雰囲気を盛り上げてくれる.クルマの価値にふさわしいアウディスポーツの入念な気配りだ。

エンジンをかけるときも心躍る演出が目をひく。シフトレバー脇に設けられたエンジンスタートボタンを押すと、抜けのいい爆発音が気持ちよく響く。

アウディバーチャルコクピットとよばれるTFT液晶による計器類が出現して、針がレッドゾーン近くまで回り、次に通常の画面が表れる。赤が基調なので、オーナーは毎回気分が盛り上がること必至だろう。

手の平に吸いつくような横長のユニークな形状のシフターを手前に引き寄せるようなイメージでDレンジに。ティプトロニックとよばれる8段のギアボックスでファーストギアが噛み合ったイメージを頭に持ちながら軽めのアクセルペダルを踏み込む。そうすると次の瞬間からRS5クーペのとりこになってしまう。

試乗記

「RSは本当に『別もの』だ」

アウディRS5クーペは機能的なパッケージングを持ちつつ、きちんと『派手』である。クルマにもっとも大事な要素である、乗るひとの気分を昂揚させてくれるはなやかさなのだ。それが徹底しているのが他にない魅力となっている。

張り出したフェンダーに大きく拡大されたエアダム。中央にはすごみをきかせた大きなグリル。立体的な形状のヘッドランプには、見る人が見ればすぐわかるスポーティなアウディであることを証明するLEDによるシグネチャーランプが組み込まれている。

このクルマに興味を持つひとにとっては、スタイリングにおける多少の誇張は歓迎すべき特徴だろう。もちろん走り出したとたん「RSは本当に『別もの』だ」とうれしくなる。

スウェードで巻かれたフラットボトムのスポーティなステアリングホイールと、ハニカムパターンのステッチでいろどられたスポーツシートの役割は視覚的効果だけでないと、走り出して最初のコーナーに入った瞬間にわかる。

静止から時速100kmまでの加速が3.9秒とリアルスポーツカーなみの数値が発表されている。これはおそらくまったくの誇張でない。はじけるような加速感は圧倒的だ。

試乗した車両にはフロントセラミックブレーキ(2017年12月の時点で84万円のオプション)が装着されていた。強烈な制動力ととともに、足に直接ブレーキがくっついたような、絶妙なコントロール性に驚かされる。

今回の試乗コースにはコーナーが連続する道が含まれていなかったのは残念。そう思いたくなるぐらい、路面に吸いつくように走り、車体のロール制御といいステアリングホイールの正確性といい、みごとな出来である。

1900rpmから61.1kg-mの大トルクを出す設定のエンジンだけに、踏み始めから猛烈な力だ。軽めのアクセルペダルに載せた足のごくわずかな入力にも敏感に反応して、驚くほどのペースで疾走する。

かつて最初にRS4アバントに乗ったときのことを思い出した。あのときも炸裂するパワーが圧倒的だったが、進化したRS5クーペではすべてのコントロールが繊細に行えるのも大きな特徴だ。

だからといって「これみよがし」ではない

ステアリングホイールへの入力に対しても、車両は即座に応答する。ごくわずか舵角をつければ車両はそのぶんだけぴっと動く。動きはまさにレールに乗っているようだ。車両がドライバーの意思のままに走る。ロールが抑えられた車両の動きはまさに4人乗りのスポーツカー。

回転をあげていっても途中でパワーがダレるようなことはない。反応性がよく、いっぽうで上の回転域でしっかりパワフルをしぼりだすターボチャージャーの設定もよい。

どこまでも加速が止まらない。驚くべき感覚だ。このクルマを堪能するのはサーキットでの走行会に参加するのが最善の方法だろう。かなり楽しめるはずだ。

アウディ・ドライブセレクトというドライブモード切り換えシステムも搭載。「オート」「コンフォート」「ダイナミック」それに設定を好みで組み合わせられる「インディビジュアル」の4つのモードが選択できる。

サーキットでは言うまでもなく「ダイナミック」がいいだろうが、ふだん乗りは「オート」が絶妙。足まわりは硬すぎず、かといってピッチングが起きるようなソフトさもなく。ステアリングホイールの重さも含めて『適切』なドライブ感覚が味わえると思う。

RS5クーペならではのよさは、これみよがしなスポーツカーではなく、エレガントさを合わせてもったスタイルだ。この美学はずっと健在だ。アウディ(とアウディスポーツ)はこれをずっと進化させ、新型として結晶化させている。

すべてに気配りの行き届いた作りのよさは、毎日つきあうモデルとして満点だろう。いいものとは自分のためだけに作ってもらったような感覚を味わわせてくれる。このクルマにはそれがある。だからこそアウディのRSモデルは世界的に評価されつづけているのだと思う。

スペック

アウディRS5 スペックをおさらい

車名アウディRS5クーペ
エンジン V型6気筒2893ccツインターボ 
ステアリング ラック&ピニオン 
全長 4725mm 
全幅 1860mm 
全高 1365mm 
ホイールベース 2765mm 
車両重量 1760kg 
最高出力 450ps/5700-6700rpm 
最大トルク 61.1kg-m/1900-5000rpm 
燃料タンク容量 58ℓ