将来的には”70歳定年”になるとも

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 高齢ドライバーによる事故が社会問題化し、免許の自主返納が奨励されるなか、航空業界では逆に“歳をとった人に操縦してほしい”というニーズが高まっているという。

 北海道に本社を置くエア・ドゥ(AIR DO)が、相次ぐ機長の退職で大量の計画運休(11月〜来年2月で計60便)に追い込まれた。このままではパイロット不足はさらに深刻になると考えられている。

「日本航空(JAL)と全日空(ANA)を筆頭に、国内航空会社のパイロットの年齢は40代後半から50代前半に偏っている。彼らが定年を迎える2030年ごろ、日本の空が機能不全に陥ると危惧されています」(国交省担当記者)

 航空ジャーナリストの青木謙知氏もこう語る。

「アジアを中心に航空需要が高まり、20年後には全世界の旅客機が現在の2倍に増えるとの予測があります。日本でも、国内線の便数はこの5年で2割も増えたが、操縦桿を握る側の育成が追い付いていない」

 そこで打ち出されたのが“シニア人材の活用”だ。2015年3月、国交省は関連通達を改正し、64歳だった旅客機パイロットの年齢上限を67歳に引き上げた。

 結果、わずか2年で国内15の航空会社に、それまでゼロだった65歳以上のパイロットが53人在籍するようになった(2017年1月時点)。国内のパイロットの1%程度だが、パイロット不足の流れは加速するとみられる。現役の若手パイロットの表情は複雑だ。

「自動操縦が主流となっても、経験を蓄えたベテラン機長の存在は心強い。ただ、年齢を重ねるにつれ視力や咄嗟の判断力に衰えが生じる不安は否めない」

 航空機はひとたび事故が起きれば、自動車事故よりもはるかに大きな犠牲が出る。“ペダルの踏み間違え”などが起きてはならない。

 国交省は60歳以上のパイロットを“加齢乗員”と定め〈より厳しい身体検査〉や〈60歳未満のパイロットの同乗〉といった条件を課しているが、認知機能の衰えはどうチェックするのか。

 国交省航空局は「認知症に特化した審査はありませんが、必要な身体検査や実技試験に合格したパイロットは“健康な能力”があると判断できます」と答えた。

 パイロットの高齢化が避けられないのなら、十全のチェック体制が必要だ。

※週刊ポスト2017年12月22日号