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●渋谷ヒカリエで演奏会

渋谷ヒカリエ11Fのヒカリエホールに、美しくも力強い音色の管弦曲が鳴り響いた。国際的ロシア人指揮者、ワレリー・ゲルギエフの指揮のもと、演奏するのはロシアのマリンスキー歌劇場管弦楽団ストラディヴァリウス・アンサンブルだ。

管弦楽器の音合わせが始まると、多くの人たちが演奏を聴こうと集まってきた。というのも、ヒカリエホールはコンサートホールのように閉鎖された場所ではない。むしろオープンスペースのような空間で、11Fフロアをたまたま通りかかった人でも演奏を聴ける。もちろんチケットも不要だ。国際的な指揮者と国際的な管弦楽団の演奏を無料で、しかもすぐ間近で聴くことができる。多くの人が集まってこようというものだ。

○ロシアづくしの演奏会

演奏されたのは4曲。ソビエト連邦時代の作曲家、ドミートリイ・ショスターコーヴィチの1曲、そしてロシアの作曲家、ピョートル・チャイコフスキーの3曲だ。最初の1曲は日本のピアニスト・横山幸雄氏がピアノで、ロシアのティムール・マルティノフ氏がトランペットで参加した。2曲目、3曲目はロシアの国際的なヴァイオリニスト、ワディム・レーピン氏が演奏に参加した。4曲目はクラシックにうとい筆者でも曲名を知っていた「弦楽セレナーデ」。聴いたことのある曲調に、少しほっとした。

さて、なぜロシアで作曲された曲をロシアの方々が演奏したのか。それは、「ロシア・イン・ジャパン実行委員会」によるものだからだ。日露文化交流を促進するために、この取り組みは始められた。

●なぜ東急電鉄が参加するのか

この取り組みを後押しするのは、以下の4社。広告代理店の電通、東京急行電鉄、日本経済新聞社、ガスプロム・メディア・サブホールディングスだ。最後の1社は、なかなか聞きおよばないが、ロシア最大のメディア企業。ロシアでテレビ番組や映画などを手がけている。

こうした4社のなか、やはり異色に感じるのは東急電鉄だろう。東急電鉄は、関東、特に東京から南西部を拠点にする私鉄だ。ロシアとの関わりはあまり考えられない。その同社がなぜこの取り組みに参加しているのか。

○文化振興に力を入れる東急電鉄

実は東急電鉄は、鉄道事業の売り上げは20%を割っている。不動産やそのほかの事業での売り上げがほとんどだ。そのうちのひとつが、文化促進。たとえば渋谷駅から歩いて7・8分の距離にある東急文化村だ。ここでは、映画上映のほか、展覧会や美術館といった文化的な事業を手がけている。

そもそも、演奏会が開催された渋谷ヒカリエも、もとは東急文化会館の跡地に建てられたビルだ。東急文化会館にはプラネタリウムがあったり、映画館があったり、書店が入居したりと、文化的な彩りが濃かった。

つまりだ。東急はグループを通じて文化に対しての理解が深く、今回の日露文化交流に対しても、何かと協力していく考えだ。ちなみに、この文化交流は、5年という長いスパンで続けられる。

さて、冒頭の演奏会に戻ろう。素敵な楽曲が流れるなか、品のない考えが頭をよぎっていた。ストラディヴァリウス・アンサンブルと銘打ったこの楽団では、何挺のストラディヴァリウスが鳴らされているのか。1挺ウン億円とすれば、3・4挺もあれば二桁億円を超える。それが、7メートルほど先で演奏されているのだ。世界で約600挺しか残っていないストラディヴァリウスには、文化的な価値のほかに、こんな不遜な考えを生じさせる効果もあるのだなと思った。