2連勝に口も滑らかだったハリルホジッチ監督。果たして、気前のいいコメントの真意は? 写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 2試合を終えて最大の収穫は「なるべく多くの選手を見たい」指揮官が、その言葉通りの采配を実践したことだ。ただしロシア・ワールドカップを見据えた国内組の最終テストという観点からすれば、代表チームの編成上で際立った変化が生まれたとも思えない。
 
 おそらくこの大会に向けて最も万全な準備ができていたのは、代表チームが年間を通して1日2部練習の合宿生活をしているという北朝鮮だ。しかも「日本でも見られないレベルのテクニックを持つ選手もいた」と、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督を驚かせた。逆に2戦目で対戦した中国は「国内リーグが1か月以上前に終了して、選手たちが45日間もプレーしていない」(マルチェロ・リッピ監督)状態だった。こうした対戦相手の条件を考慮しても、2戦目で日本のパフォーマンスが著しく良化したとも言い切れない。
 
 極論すれば、現状でハリルホジッチ監督が手にした収穫は、GKの底上げと伊東純也の発掘に尽きる。まずGKは川島永嗣が出場機会を独占してきたが、中村航輔も東口順昭もJリーグでは出色のプレーを続けて来た。北朝鮮戦の勝利は、スーパーセーブ連発の中村がもたらしたのは誰の目にも明らかだが、東口も終盤すっかり精彩を欠いたG大阪の中でひとり充実のパフォーマンスを見せていたので、今回抜擢された2人とも“当たった”のではなく本来の力を証明した。
 
 一方2戦を通じて、ハリルホジッチ監督が繰り返し賞賛したのが伊東だった。
「とても面白い選手。ボールを持ったら仕掛けていける。日本には1対1で抜いていける選手が少ないので…。3〜4回もっといいプレーが出来る状況があったけれど、大腿部を打撲した影響があった」
 
 中国代表のリッピ監督は、日本の優位性をポゼッション能力だと指摘したが、むしろ日本代表の指揮官はそこを「Jリーグの持つ悪い習慣」だと捉え、縦に速いカウンターを徹底している。深い位置から細かく確実に繋ぐのではなく、確率は低くても裏を狙うターゲットへのロングフィードを優先するスタイルを求めているので、確かに伊東のように単独でも50m以上をドリブルで進みCKを獲得してくれる存在は貴重だ。
 
 ハリルホジッチ監督は「こうした選手たちがチームにプラスをもたらす」とご満悦だった。しかし川島に全幅の信頼を置く指揮官の心変わりを促せるのか。またお気に入りの浅野拓磨以外に「スピードスター枠」を設けるのか、と言えば、多少検討の余地が生まれたというあたりが現実的だろう。
 
 また会見中に監督自らが触れたのが、JリーグMVPの小林悠と今野泰幸についてだった。
「しばらく小林を招集しなかったのは代表のリズムについていけなかったからだが、アグレッシブに戦えるようになり、フィジカルコンタクトも強くなった。今野にはキャプテンを任せるつもりだったが、本当に素晴らしいプレーをしてくれた。UAE戦(最終予選アウェー戦)のプレーが戻って来た」
 
 小林には中央と右、今野にもボランチとCBというユーティリティ性があり、それは重要なポイントとなるかもしれない。特に吉田麻也のパートナーを昌子源と槙野智章が争うCBは、もうひとり候補が要る。一方小林は、さすがに川崎でプレーする時と比べれば、周囲との呼吸が合わず苦しんでいたが、それでも2戦を通じて90分間ピッチに残したところに指揮官の信頼が表われていた。
 
しかし「かなり高い確率で代表に入る」(ハリルホジッチ監督)というサービスコメントを、真に受けるのは危険だ。センターは大迫勇也が当確で杉本健勇が有力、サイドも原口元気が当確で、乾貴士、久保裕也、浅野、武藤嘉紀らが続き、そこに岡崎慎司、本田圭佑らが加わる可能性もある。
 
 もちろん代表経験が浅い選手たちが数日間の準備で取り組んだ大会なので、緊張と連係不足が重なり、それぞれの隔靴掻痒(かっかそうよう)感は避けられない。しかし内容に関わらず連勝に上機嫌な指揮官を見ていると、選手個々にとっても最大のアピールは優勝という贈り物なのかもしれない。
 
取材・文●加部 究(スポーツライター)