2018年の「書を捨てよ、町へ出よう!」

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雑誌の特集で、反響が大きいテーマは「本」です。勉強熱心なことはすばらしいこと。でも、いまリスクをとって活躍している人たちは口を揃えます。「行動しない限り、何も変わらない」と。本を読んで人生が変わった人たちのエピソードとともに、「プレジデント ウーマン」(2018年1月号)の読みどころをご紹介します――。

■必ず上位に入るのが「勉強、学ぶこと」

「もっと時間があったらやりたいことは?」
「もっとお金があったらやりたいことは?」

プレジデントの姉妹誌として2年半前に創刊した「プレジデント ウーマン」の読者にアンケートをとると――。

旅行や趣味、買い物という答えも挙がりますが、必ず上位に入るのが「勉強、学ぶこと」です。ベストセラーになったリンダ・グラットンさんの『ライフ・シフト』で、これからは学び続ける、学び直す人生に変わっていくことが大きく取り上げられる前から、ウーマンの読者は学ぶことへの意欲が旺盛なのです。

年末年始を迎えるこの時期、1年半ぶりに「本と映画」の特集を組みました。仕事で力をつけるための本、プライベートの悩みに答える本、モチベーションを上げる映画。その分野のプロにお薦めを聞こうと、150冊以上の本を書いている小宮一慶さんを訪ねたときのこと。

「ウーマンの読者はとても勉強意欲が旺盛なんです」、アンケートの結果を伝えながらこう切り出すと、小宮さんはにこやかに、でもすぱっと言いました。

「自分で勉強したり、セミナーに行って感動したりするのもいいことだけど、アウトプットしなくちゃ。行動しない限り、何も変わらないんですよ」

はっとしました。働く女性を対象にした「プロジェクトWOMAN」のセミナーで、同じ話を聞いたばかりだったからです。森本千賀子さん、藤本あゆみさん、岩佐大輝さん、西村創一朗さん。それぞれの分野で活躍する4人の話に続いて、モデレーターを務める島田由香さんの言葉。

「刺激を受けたらそのままで終わるのではなく、気づきに変えて、いかに行動できるかなんです。行動すれば批判も受けるけれど、行動に人が集まるんですよ」

この10月から11月に「人生を変えた本、読み続けたい本」というテーマで11人の著名人に行ったインタビューは、まさにこの言葉を実感するものばかりでした。その一部をご紹介します。

2008年にリーマンショックが起きたとき、投資ファンドで働いていた白木夏子さん(HASUNA社長)。この先の進むべき道を考えるなかでジャック・アタリ『21世紀の歴史』を読み、起業への決意を固めたそうです。

――現時点では、未来はどうなるかわかりません。その不確実性のなかで自分はどのように生きていくのが理想なのかが定まると同時に、私は超民主主義のなかで社会に貢献できるようなビジネスがしたいと、目指すべき立ち位置が明確になりました。

NYに住んで30年、最新作『おクジラさま』を今年発表したドキュメンタリー映画監督の佐々木芽生さん。なぜそんなに長く海外に住み続けているのだろうと話をうかがっていると、20代前半で読んだ沢木耕太郎さんの『深夜特急』が原点に。3週間ほどの旅のつもりで向かったインドで、無一文になったときの思いを話してくれました。

――最初に「ゼロ」の概念を考えたのはインド人です。25歳のとき、そのインドでまさかの「ゼロ」の状態になった。人間ひとり生きていくために必要なものって、こんな最小限なんだと思いました。解放されましたね。私の本当の人生のスタート時点だったと思います。(中略)インドからロンドン、NYを経由して東京に帰る予定でしたが、NYに着いたとき、ポケットには20ドルしかなかった。しばらく滞在したくなり、仕事を探したらすぐに見つかって、就労ビザも出してもらえることになりました。それから30年。いまだにインドからの帰国の旅の途中なんですよ (笑)。

幸福学研究の第一人者・前野隆司を夫に持つ前野マドカさん。いまは幸福学の共同研究者として活躍しています。マドカさんは、出産後長く専業主婦を続けていました。ただ、前野隆司さんの著書『幸せのメカニズム』に書かれている「幸せになるための4つの因子」について、普段から聞いていたそうです。そんなとき舞い込んできたのが、小学校のPTA会長をやってくれないかという話でした。

――新しいことに挑戦しなければならないときは、どうしても不安な側面を考えてしまいます。ところが四因子を理解していると、とりあえずやってみようと思える。自分らしく取り組もうと前向きになれるんです。(中略)PTA会長職の依頼を受けたとき、当初は「そんな大役はできない」と断ったんです。その夜、夫にその出来事を伝えたところ「そんなすばらしいチャンスを受けないなんて。僕には断る理由がわからない」と言われました。そのとき、あらためて四因子について考え、やはり引き受けよう! と決断しました。

先進国と途上国の食の不均衡解消に取り組む「TABLA FOR TWO」。このNPOでマーケティングを担当する大宮千絵さんは、もともと大手自動車会社の正社員でした。育休中に読んだクレイトン・クリステンセンの『イノベーション・オブ・ライフ』が、人生を変えるひとつのきっかけになったといいます。

――著者いわく、労働の動機付けには収入や地位を目標にして働く“誘因理論”と、モチベーションを大事にする“内的動機付け理論”の2つがあると。人は誘因理論に従って働くと、目標が満たされたときに不満は持たないけれど、心から満足することもない。そして、「人生に心から満足したいなら、素晴らしいと信じる仕事をするしかない」と書かれていて。まさにそうだなと思い、その言葉が深く心に刺さりました。

自身もプロのPRとして、フリーランスで働く平田麻莉さん。今年、日本で初めてフリーランスのための協会「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」を立ち上げました。2児の母として育児もしながら、不安はないのか、そのエネルギーはどこから湧いてくるのか聞いていると、学生時代に読んだ本に当たりました。

――将来は、社会問題を解決する新しい手段を生み出したい。企業に就職して“○○会社の平田さん”になるよりも、自分の仕事で仕事をしたい。大学に入った当初からそう思っていました。(中略)ゼミで知って手に取ったのが『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ』。この本が書かれたのは1991年ですが、将来、テクノロジーの進歩とグローバル化で、なくなる仕事があることや、今後どんな人が活躍していくかが先取りして書かれていました。“一人一人が知的でクリエイティブなプロフェッショナルを目指さなきゃいけない”という点は「確かに」と思い、私も社会にどのような価値を提供し、貢献できるのかを自覚的に模索して、キャリアを築く必要があると感じました。

チャレンジをする勇気が湧いた、人生をかける仕事に出合った、何が起きても生き抜く覚悟ができた……。本についての特集ながら、読書体験だけではなくその人の生き方そのものが伝わるインタビューばかりでした。

同じ本を読んでも、人によって感じることはさまざま。そして同じ人が同じ本を、時を経て読んでも、感じることはさまざまです。自分のなかに気づきや行動を起こす“芽”があってこそ、本が人生を変えるのです。

「プレジデント ウーマン」(2018年1月号)でご紹介する218冊超の本のなかには、心のもやもやを整理してくれるもの、いま一歩踏みとどまっている決断を後押しするもの、あるいは思ってもみなかった新しい方向性を示してくれるものがあるかもしれません。その1冊をぜひ、この特集の中から見つけてください!

(プレジデントウーマン編集部 高阪 のぞみ)