木村尚敬(きむら・なおのり)経営共創基盤パートナー・取締役マネージングディレクター。慶應義塾大学経済学部在学中に起業。日本NCR等を経て現職。レスター大学・ランカスター大学修士(MBA、MSc in Finance)、ハーバードビジネススクールAMP修了。

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■「大企業病」には"改善"ではなく"改革"が必要

大企業病とはどういうものかが、本書で実によくわかる。著者は、投資から製品づくりまで広範な経営支援を行う経営共創基盤の幹部。変わりたくてもうまく変われずにいる「大きくて古い会社」を担当する。

「『ウチのことを書いたでしょ』とよく言われる」と苦笑する著者。「日本の企業は今、岐路に立たされています。必要なのは経営の『改善』ではなく『改革』。それには部課長クラス、つまりミドルの働きがとても重要になります」。

しかし、ミドルはとかく所属部署や事業の保持にとらわれがち。そのため「正確な情報がトップに伝わらず、小さな怪我が全社的な打撃になることもある」という。

「採算性の低い事業を大胆に見直し、自社の強みに変える。IoTを活用して、顧客囲い込み型の新しい事業モデルをつくり出す。今は、そのような課題に、短い時間軸の中で対応しなければならない時代」と著者。「それがうまくいっているのは、ミドルがよく機能している会社です」。

では、ミドルがどう動けば、硬直化した組織を変えていけるのか。本書では「思うように上司を操れ」「KYな(空気を読めない)奴を優先しろ」「堂々と嫌われろ」など、人心収攬の裏技の数々が、具体例も織り交ぜて記されている。

「社内の人材の多様性、社の内外を問わない人材のネットワーク、上下の立場にかかわらず、自由にものが言える環境、リスクを恐れず、失敗を許容する気風。そういった下地づくりが、組織の改革には大切」なのだという。

■大企業病は「企業の規模にかかわらず起きる」

聞けばうなずけるものの、行うはやすくない。しかし、本書ではミドルがどこに軸足を置き、行動すればよいかがわかりやすく説かれている。

「中間管理職というと聞こえはよくないけれど、本来ミドルはリーダーです。そこに気づいてほしい」

著者は、ミドルに向けた講演会などで、著名な経営者を講師に招くことがよくある。

「話してもらう内容は、講師の経営論や経営哲学などではありません。その経営者が、ミドル時代に何をしてきたかを語ってもらうのです」

リーダーとしての自覚や行動の指針が、そこからミドルに芽生えてくると考えているからだ。講演の手ごたえは良好だという。

大企業病は「企業の規模にかかわらず起きる」と著者。進取を怠れば、組織はすぐに劣化してしまうものだ。

(ライター 高橋 盛男 撮影=的野弘路)