ハリルホジッチ体制下でアンカーを任されたのは2回目。今野は随所に好プレーを見せた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 アンカー。中盤の底に錨(いかり)を下ろし、全体のバランスを安定させるポジション。
 
「とにかく、あのポジションにいろと言われました。バイタルエリアの辺り。そこを相手に渡さないように。攻撃になっても、前に行かないように、あまりサイドに流れないように、意識しました。運動量もそんなに多くなかったですね。そこまでポジションを広く取らず、常に崩さなかったから。だいぶ長い時間、(バイタルエリアに)居られたとは思うんですけど」
 
 E-1サッカー選手権、中国を2-1で下した試合の後、今野泰幸はハリルホジッチに任されたアンカーの役割を説明した。
 
「(ハリルジャパンで)アンカーで試合に出たのは初めてかもしれないですね」
 
 そのように語った今野だが、筆者は覚えている。ハリルホジッチ就任直後の2015年3月、ウズベキスタン戦でも試合中にアンカーに移されたことがあった。ただし、当時は中盤のバランスが悪かったため、相手に中盤をフリーで使われないように、「行けるときは前に行こうと思いました」と、今野はアンカーのスペースを捨て、前にプレスに出る場面が多かった。その結果、前半のみでハリルホジッチから交代を命じられている。
 
 アンカーとは、うかつに前へ出ず、サイドにも流れず、中央に安定をもたらすポジション。当時の試合に比べると、中国戦の今野は、よりアンカーらしく、様になっていた。
 
 インターセプト、こぼれ球の回収、センターバックが空けた最終ラインのカバー、サイドへの散らし、落ち着きのあるボールキープ、そして後半に小林悠の先制ゴールを生むきっかけにもなった川又堅碁へのロングパス。どれも良かった。長谷部誠、山口蛍に続く第3のアンカー候補として、充分に計算できる。
 
 ただし、気になる場面はいくつかあった。
 
 たとえば、27分のカウンターを食らいかけた場面。20番のFWウェイ・シーハオに対し、下がった倉田秋が1対1を迎えたとき、今野は中央を捨ててサイドへ行き、2対1でウェイ・シーハオに立ち向かった。ところが、中央にパスを通され、さらにピンチは広がっている。植田直通のプレスバックを待ち、中央で慎重に対応しても良かった。
 あるいは57分。サイドチェンジから11番のMFジャン・ウェンジャオと14番DFフー・フアンの連係でスルーパスを通され、中央の22番FWユー・ダーバオが最大の決定機を迎えた場面。今野はスライドが遅れている。センターバックの前のスペースを埋めることができていない。たとえば、FWユー・ダーバオの眼前に立ち、足下のパスに対して今野が対応できるポジションを取っていれば、昌子源と三浦弦太は裏のスペースに警戒を強められる。スルーパスを防げたはずだ。
 
 また、その直後に右サイドを崩され、マイナスへの折り返しからウェイ・シーハオにシュートを打たれた場面でも、今野のプレスバックは間に合っていない。スプリントして間に合わなかったのなら仕方がないが、その危機センサーが働かなかった。細かい部分では、ポジショニングミスが目につく。
 
 ある意味、アジアだから許される対応だ。しかし、これをワールドカップでやれば間違いなく失点する。
 
 全般的にはうまくアンカーを務めた今野だが、たとえばカウンターを仕掛けられた場面、サイドチェンジを通された場面など、日本の守備が不利になる難局面の対応については、今後の改善点があると感じた。
 
 もっとも、課題はあるが、それでも今野はワールドカップに向けて貴重な戦力になるはず。最大の理由は、彼が戦況を自ら判断し、時に監督に言われたことをブレークしてでも、試合に勝つ気概にあふれていることだ。