タイヤチェーンには、金属製と樹脂製の2種類が主流です。効き目や価格のうえでは金属製が優れていますが、一部区間では使用できない場合も。両者にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

効き目で優れる金属製 着脱しやすい樹脂製

 乗用車の冬道対策は、いまやスタッドレスタイヤの装着が主流といえるかもしれませんが、積雪地域に行くことがまれなので、必要な場所でタイヤチェーンを使うことで済ませたい、という人もいるでしょう。


金属製チェーンのイメージ。写真のような「亀甲型」や、「ハシゴ型」などがある(画像:Anatoly Tiplyashin/123RF)。

 一方で、天候が急変しやすい場所などでは、スタッドレスタイヤをはいていても、チェーンの装着が必要な規制がかかることもあります。このため道路管理者などは、スタッドレスタイヤの装着とともに、タイヤチェーンの携行を呼び掛けています。

 いざというときのためにも備えておきたいタイヤチェーンには、どのようなものがあるのでしょうか。カー用品店「オートバックス」を展開するオートバックスセブン(東京都江東区)に話聞きました。

――タイヤチェーンにはどのようなものがあるのでしょうか?

 昔ながらの金属製チェーンと、ゴムなどの樹脂でできたものが主流です。ほかに「オートソック」といって布をタイヤにかぶせるタイプの簡易なものもありますが、これはチェーン規制に対応していないものも多く、あまり主流とはいえません。

――金属タイプと樹脂タイプのメリットとデメリットは、どのような点でしょうか。

 金属チェーンは、滑り止めの効き目としては申し分ありません。ただチェーンを地面に敷いて、クルマを動かしその上に乗り上げてタイヤへ取り付けたり、取り付けて100mほど走り、さらにきつく締める「増し締め」が必要になるものもあるなど、脱着に時間がかかることがデメリットといえます。とはいえ、近年ではクルマを停めたまま取り付けられるものや、自動で「増し締め」するものなども出てきています。

 一方、樹脂タイプは取り付けやすいのが大きなメリットです。クルマを停めたまま取り付けられるものも多く、装着ミスも少ないといえます。ただ、滑り止め性能としては金属よりも若干劣ります。

――価格面はいかがでしょうか?

 サイズにもよりますが、金属製がおおむね1万円台なのに対し、樹脂製は1万7、8000から、上は3万円、4万円のものもあります。

――売れ筋の傾向はいかがでしょうか?

 近年は金属チェーンを付けたことがない人が多くなっていることもあり、樹脂製のほうが幅広い世代に売れているとは思いますが、昔から金属製を愛用している方も少なくありません。

金属チェーン使用禁止区間がある?

 金属チェーンは、使用が禁止される区間もあります。そのひとつが、2017年11月4日(土)に開通したばかりの東北中央道「栗子トンネル」(福島市〜山形県米沢市)です。全長8972mで東北最長、無料の道路トンネルとしては日本一という長大トンネルですが、ここを管理する国道交通省 福島河川国道事務所は、次のように話します。


樹脂製チェーンのイメージ(画像:写真AC)。

「トンネルは約9kmあり、乾いた路面をこれだけ長く走れば、金属チェーンはたいてい切れます。それが落下物となり、事故を誘発する恐れがありますので、トンネル前後のチェーン脱着所でいったん外しての走行をお願いしています」(福島河川国道事務所)

 福島河川国道事務所によると、長大トンネルではこのようなお願いをしている区間がほかにもあるそうです(編集部注:全長約1万1000mの関越道 関越トンネルなど)。「トンネルでなくとも、また金属チェーンでなくとも、路面状況に応じて着脱してほしい」といいます。

 オートバックスセブンは、「チェーンを装着して乾いた路面を走った場合の『切れにくさ』といった点は、樹脂タイプのほうがやや優れていますが、いずれにしても金属、樹脂とも乾いた路面での使用は推奨されていません。また、チェーンが正しく取り付けられていなかった場合も、切れやすいといえます」と話します。

 タイヤチェーンを選ぶ際は、効き方や価格はもちろん、取り外しのしやすさも考慮すべきポイントといえるかもしれません。

【写真】布製滑り止め「オートソック」とは


タイヤにかぶせるタイプの滑り止め。ただしチェーン規制には対応していないこともある(画像:federicofoto/123RF)。