10月24日に開かれた臨時株主総会

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 東芝の半導体メモリー子会社「東芝メモリ」の売却で、係争状態にあった東芝と米ウエスタンデジタル(WD)が和解した。WDが矛を収めたことで、売却手続きが滞る大きなリスクが解消された。ただ“隠れハードル”とも言える障害は残る。巨額増資に伴って東芝の株主になったアクティビスト(物言う株主)が、売買契約の解除権行使を迫る可能性があるのだ。
 
 東芝は東芝メモリを米ファンドのベインキャピタルが主導する「日米韓連合」に売却する。両社の契約には、2018年3月末までに手続きが完了しない場合、東芝に「契約解除権」が発生するとの規定がある。

 「東芝経営陣は東芝メモリ売却を止めるべきだ。その方が我々にはアップサイド(利益余地が大きい)」―。東芝の株主となったファンド関係者は解除権を念頭にこう言う。どういうことか。

 そもそも東芝は上場廃止となる2期連続の債務超過を避けるため、東芝メモリ売却を決めた。しかし12月には6000億円の増資を実行。これにより上場を維持できるめどがついた。

 ファンド関係者は「東芝メモリを上場させれば3兆円規模の値が付く」とそろばんを弾く。

 日米韓連合に2兆円で売却するより、今のまま100%子会社として上場させた方が、東芝にとっても株主にとってもうま味が大きいとの主張だ。

 ロイター通信の報道でも、東芝株主である香港のアーガイル・ストリート・マネジメント(ASM)が売却を見送るよう提言する書簡を東芝に送ったことが明らかになった。

 現時点では買収見送りの具体的な動きは顕在化していない。杉本勇次ベイン日本代表は「東芝メモリの上場には一定の時間がかかる。その間に半導体市況が悪化すれば、2兆円の値に届かない可能性もある。予定通り日米韓連合に売却するのがベストだ」と説明する。主力取引行首脳も「増資したが、メモリー事業は売るべきだ。それにより財務が安定化する」と語る。

 東芝メモリの売却完了には各国の独占禁止法審査にクリアする必要がある。東芝関係者は「(日米韓連合と契約した9月下旬から)半年でパスするのは簡単ではない」と明かし、業界では「18年6月末頃になるのではないか」との声も上がる。

 東芝は計画通り手続きを進める方針だ。ただ、「解除権が発生すれば、経営陣はそれを行使するかどうか株主の声に耳を傾けざるを得ない」(ファンド関係者)との声もある。

 東芝の増資引受先にはASMのほか、米エリオット・マネジメント、米サード・ポイントなど著名なアクティビストが顔をそろえる。解除権発生をトリガーに歩調を合わせ、売却中止を迫る可能性はゼロではない。

 杉本ベイン日本代表は「売却が頓挫するリスクは少ないに越したことはない。(解除権が発生しないよう)18年3月末までに手続きを完了させたい」と話す。