「Thinkstock」より

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 仮想通貨ビットコインは、バブルの狂乱となっている。ビットコインの国内取引所での価格が12月8日朝、1ビットコイン当たり200万円を突破した。7日朝は150万円前後だったが、1日で3割強も急騰した。11月26日に100万円を突破してから12日間で2倍になった。

 今年1月は10万円前後だったので、1年で20倍の暴騰ぶりだ。時価総額は28兆円を超え、日本企業の首位、トヨタ自動車の時価総額、22兆円を抜いた。

 2009年に誕生したビットコインには、政府や中央銀行の信用の裏付けはない。送金手数料の安さなどから欧米や中国で利用が拡大。日本でも4月に大手家電量販店のビックカメラが導入するなど、利用が広がってきた。

 ビットコインの相次ぐ分裂が価格の暴騰をもたらした。8月に最初の分裂が起こり、ビットコインキャッシュが誕生した。分裂してもビットコイン本体の価格は下がらず、むしろ上昇した。投資家は、「分裂を買い」と判断した。

 10月にはビットコインゴールドが分裂を始め、11月にビットコインダイヤモンドが生まれた。12月以降も、ビットコインプラチナ、スーパービットコイン、ビットコインウラン、ビットコインキャッシュプラス、ビットコインシルバーなど新たな分裂が控えている。

 個人投資家が「これは儲かる」と投機目当てで買っていたが、ここへきて機関投資家の投機マネーがどっと流れ込んできた。かくして、マネーゲームは狂乱に沸き立つことになった。ビットコインは、もはや通貨というより投機の対象と割り切ったほうがよさそうだ。天井をつける前に、高値で売り抜けることできるかが勝負どころだろう。

●ビットコインは詐欺の温床

 値動きの荒さに目を付け、投資名目で勧誘する詐欺など、犯罪に直結するケースが相次いでいる。

 仮想通貨「リップル」の取引で、客から預かった現金をだまし取ったとして警視庁は10月18日、取引所「リップルトレードジャパン(RTJ)」元代表の竹中(旧姓・伊藤)優樹容疑者を詐欺容疑で逮捕した。発表によると、竹中容疑者は15年3月3日、払い戻すつもりがないのに宮城県内の男性からリップルの取引のため1400万円を預かり、だまし取った疑いが持たれている。

 竹中容疑者は14年5月、浜松市でRTJを設立。客から金を預かり、リップルの取引に使う電子借用証書(IOU)を発行し、求めに応じて払い戻す取引仲介業務をしていた。15年3月に取引を停止するまで計約8億円を預かったが、約1億円が返金されていない。客から預かった金を投資やキャバクラ代に流用していたという。

 14年2月、当時ビットコインの世界最大級の取引所を運営していたマウント・ゴックス(MTGOX)が破産した。顧客2万4700人が届け出た債権は2兆6630億円に上った。翌年、MTGOXのフランス出身のマルク・カルプレスCEO(最高経営責任者)は、業務上横領などの疑いで逮捕・起訴され、東京地方裁判所で公判中だ。

 仮想通貨は匿名性が高く、麻薬の取引など犯罪の収益を隠す資金洗浄(マネー・ロンダリング)に使われる。15年4月、警視庁が摘発した麻薬密輸事件では、中国から密輸された麻薬がビットコインで取引されていた。逮捕された男はビットコインについて「送金手数料がかからず、匿名性が高い」と供述したという。

 仮想通貨の規制は、世界各国でバラバラだ。中国政府は今年9月、キャピタルフライト(資本逃避)や富裕層の脱税を防ぐため、ビットコインの取引を禁止した。

 他方、日本政府はビットコインを正式な通貨として認めた。金融庁は今年4月に施行された改正資金決済法で仮想通貨の取引所を登録制とし、口座を開設する顧客の本人確認を行うことなどを求めている。ビットコインが通貨として解禁されたことを受けて、家電量販店などではビットコインで支払いができるようになった。

●ビットコインバブルに警鐘を鳴らすJPモルガン・チェースのCEO

 ビットコイン価格のあまりの高騰ぶりに、“ビットコインバブル”だと警告を発したプロの金融マンがいる。

 9月12日付ブルームバーグ通信は、こう報じている

「投資銀行JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)はニューヨークの投資会議で、ビットコインは『良い終わり方はしないだろう』と述べ、バブルが弾けると予言。『これは詐欺』であり、最古のバブルと言われる17世紀のオランダの『チューリップ球根より悪い』と指摘した。同行のトレーダーが仮想通貨ビットコインの取引を行ったとしたら解雇すると言明した」

 最初の近代的な株式市場は、1600年代(日本の江戸時代初期)にアムステルダムに開設された。この株式市場を舞台に「チューリップ・バブル」が起きた。

 オスマン帝国から輸入されたチューリップの球根がオランダで人気を集め、球根の価格が上がっていき、やがてチューリップ投機に熱狂するようになった。チューリップの価格は暴騰。それまで大した価値がなかった球根1個で、たとえば馬車24台分の小麦、豚8頭、牛4頭、あるいはビール大樽4樽、数トンのチーズ、バター2トンが、それぞれ買える程の高値がついた。

 1637年2月3日、チューリップ・バブルは崩壊。突然、球根の価格は100分の1以下にまで大暴落。球根に投機した人々は無一文になり、オランダは長期の不況に突入した。

 ビットコインも、このチューリップ・バブルと同じ陶酔的熱狂が起きている。10月20日付AFP通信は、「オランダのとある一家が会社や自宅、車2台、バイク1台などほぼ全ての財産を売り払い、そのお金をビットコインに投資した」と伝えた。

 野口悠紀雄・早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問は、ビットコインを推奨したオピニオンリーダーだ。『仮想通貨革命』(ダイヤモンド社)を著わし、中央銀行なしで機能する通貨、国家の枠を超えた通貨としてビットコインは極めて斬新な仕組みだと絶賛した。

 その野口教授が11月2日付ダイヤモンドオンラインで、『ビットコインに「欠陥商品」の恐れ 異常な値上がりは不健全だ』と警鐘を鳴らした。「さっそく、逃げ支度か」(金融アナリスト)と皮肉られた。

 チューリップ・バブルは、チューリップをオランダの国花にした。実物(実体)のないビットコインは何を残すのだろうか。ただ、泡となって消え行く運命をたどるのだろうか。

●ビットコインの先物取引開始、投機色一段と強まる

 ビットコインの先物が米取引所で相次ぎ上場する。

 米シカゴ・オプション取引所(CBOE)が仮想通貨ビットコインの先物を12月10日に上場したほか、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)や米ナスダックも近くビットコインの先物の上場を予定している。CBOEのビットコイン先物は、米中部時間10日の午後5時(日本時間11日午前8時)に上場された。

 CBOEは2度、一時取引を停止するサーキットブレーカーを発動させた。米仮想通貨取引所ジェミニ・トラスト・カンパニーが実施するオークションで決まるビットコイン価格(ドル建て)に基づき現金決済される。世界最大のデリバティブ(金融派生商品)取引所であるCME取引所は、ビットコイン先物を12月18日に上場すると発表。CBOEはCMEより先に取引を開始して顧客を囲い込むのが狙いだ。

 米国時間の7日昼、1ビットコインのドル建て価格が一時、1万6600万ドル台に乗せた。10日のビットコイン先物の上場を控え、資金流入を期待した買いが膨らんだ。8日はジェットコースターのようだった。前場中に1万7000ドルに到達したかと思えば、夜にかけて急落。1万4000ドルを割り込む場面もあった。

 デリバティブ業務を手掛ける国際的な業界団体、先物取引業協会(FIA)は12月6日付で「裏付けとなる商品の透明性と規制が欠如している」と批判する書簡を米国商品先物取引委員会(CFTC)に送付した。書簡は「ビットコイン先物の決済や精算をめぐる議論が不十分だ」として懸念を示した。

 CBOEは、当初発表した証拠金の割合(33%)を44%にまで引き上げるなど、対応が二転三転している。

 CFTCはビットコイン先物の上場申請を受理した際、ビットコインをめぐる規制の欠如などの問題点を指摘していた。さらに12月7日までに、金融機関へ先物取引に慎重になるよう注意を喚起した。

 これまではビットコインは現物を買うだけの取引だったが、先物ができれば空売りがしやすくなるため、価格の乱高下に拍車がかかるとみられる。

 1日で時価総額が日本円換算で5兆円も動く。もし、このまま上昇を続ければ、銀行で最大の時価総額を誇るJPモルガン・チェース(41兆円)を超えかねないという指摘もある。1日に2割も上下するビットコインが“通貨”といい難いのは事実だ。

●取引の4割は日本人の投機家(ギャンブラー)

 今年10〜11月の取引で、世界のビットコイン取引の4割を日本(円建て取引)が占めた。米ドルを上回り、世界最大のシェアになったようだ。

 2016年は中国元が世界の9割を占めていたが、中国当局が今年9月に取引所を強制的に閉鎖させたためシェアは急低下し、10〜11月にはほぼゼロとなった。

 国税庁はビットコイン投機によるあぶく銭(利益)に目を光らせている。ビットコインの利益は「雑所得」なので、最高税率は45%だ。「2兆円を超える税収増になる」との試算もあるようだ。

 ビットコインバブルの先にあるのはバラ色の桃源郷なのか。はたまた地獄の一丁目なのか。
(文=編集部)