梅毒は点滴で治療する場合もある(写真と本文は関係ありません)

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性感染症の梅毒の発生報告数が、年々増えている。2017年は12月上旬で5200人を突破し、5年間で4倍を超えた。

厚生労働省によると、日本国内では1967年に年間で約1万1000人が報告された後、減少傾向にあった。半世紀を経て、なぜ梅毒が再流行しているのか。J-CASTヘルスケアが国立感染症研究所に取材した。

過去から定期的に流行を繰り返してきた

過去5年間の梅毒の感染者報告数は、2013年1228人、14年1671人、15年2697人、16年4518人、そして17年は12月6日時点で5279人と「右肩上がり」で増加している。

「梅毒トレポネーマ」という病原菌による感染症で、性的な接触によりうつる。具体的には陰部や口、肛門の感染部位と粘膜や皮膚の直接接触による。治療しないままだと感染箇所にしこりができ、3か月ほどで手のひらや足の裏、全身に「バラ疹」と呼ばれる赤い発疹が現れる。さらに進むと皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍ができ、複数の臓器に病変が生じて場合によっては死に至る。予防法は、感染部位の接触を避けるうえでコンドームが効果的だが、覆いきれない皮膚の部分からうつる恐れもあり「絶対」ではない。皮膚や粘膜に異常がある場合は、性的接触をしないことだ。

国立感染症研究所によると、梅毒は世界的に見られるが、1943年にペニシリンによる治療が成功して以降、発生は激減した。1960年代半ばに一度世界的に流行し、また日本では1987年の報告数2928人をピークとする再流行があったが、その後は減少に転じた。

「過去の歴史を見ると、梅毒は、過去から定期的に流行を繰り返し起こしてきたことが、諸外国を含めて知られています」

J-CASTヘルスケアの取材にこう説明するのは、国立感染症研究所感染症疫学センター第二室長の砂川富正氏だ。ただ、なぜ定期的な流行が起きるかは不明だという。厚労省によると、50年前の1967年に約1万1000人の感染報告があった。当時の統計は性病予防法によるもので、今日の感染症発生動向調査とは異なり単純に比較はできない。だが、当時と比べて病原体の感染性が大幅に変化したという情報は、同研究所では確認されていないと砂川氏。インフルエンザに「新型」が現れたようなことは、起きていないというのだ。

アジアやアフリカで日本を上回るとみられる報告

ではなぜ、梅毒の感染報告数が急増しているのか。砂川氏は「『近年になって』増加した理由および原因は不明です」と説明する。一方で現在世界の多くの地域、特にアジアやアフリカで日本を上回ると考えられる梅毒の患者発生が報告されている事実がある。可能性として、何らかの形で海外から日本へ梅毒が「持ち込まれる」ことはあるかもしれない。感染研でもこの点は重要と認識はしているが、現在の感染症発生動向調査では梅毒患者の国籍や職業に関する質問項目がなく、「直接的な理由を見つけることは困難です」。

日本国内における感染者について、感染症発生動向調査から、男性は20〜50代と幅広い年代で、また女性は20代が、それぞれ多く報告されていると分かる。患者を届け出た医療機関の都道府県別で見ると、2017年第3四半期は東京都、大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県と、大都市とその周辺自治体に報告が多い傾向がある。