ミランの調子も芳しくなく、イタリア代表もW杯出場を逃した現状で、ドンナルンマの価値を高める手段として、ビッグタイトルが狙えるクラブへの移籍を彼自身や代理人が急ぐようになったということもあるのだろうか……。 (C) Getty Images

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 騒動の末の契約延長で、全ては解決したと思われていた。だが、ミランとジャンルイジ・ドンナルンマの“結婚生活”に再び暗雲が立ち込めている。選手サイドがクラブに新契約の破棄を求めていると、イタリア紙『コッリエレ・デッラ・セーラ』が現地時間12月12日に報じたのだ。

 ミランの生え抜きであるドンナルンマはこの夏、一度は契約の延長を拒んだ。すると、直後のU-21欧州選手権で偽ドル札が投げつけられ、「Dollarumma」と揶揄するハッシュタグがSNSを賑わせたのは記憶に新しい。
 
 その後、家族の介入もあり、ドンナルンマは年俸550万ユーロ(約7億2000万円)にボーナス、さらに兄アントニオとの契約という新たな条件でミランと合意。7月11日に2021年までの新たな契約を結んだことで、ミランのサポーターは胸を撫で下ろした。
 
 この時、新契約にはミランがチャンピオンズ・リーグ出場権を得た場合は7000万ユーロ(約91億円)、得られなければ4000万ユーロ(約52億円)という条件の契約解除金が設定されたと見られていた。だが、実はこれが成立していなかったという。
 
 コッリエレ・デッラ・セーラ紙によると、選手サイドが契約解除金の設定に署名しておらず、ミランはリーグにこの条項を登録していないというのだ。これが事実であれば、規則の上で、ミランはドンナルンマを売りたくない場合、どれだけの移籍金を積まれても選手を引き留めることができる。
 
 しかし同紙によると、問題は契約解除金の有無だけではない。直近になり、ミーノ・ライオラ代理人の弁護士からミランの弁護士に対し、契約締結時に選手が心理的な圧力を受けていたとして、契約の破棄を求めるメールが届けられたというのだ。
 
 報道によると、新契約にドンナルンマが署名した際、ライオラ代理人はクラブオフィスにおらず、弁護士はミランに対する抗議から部屋を退室していたとのこと。契約解除金への署名がなかったのも、ミラン側との食い違いがあったと見られる。
 
 そして今回、ドンナルンマ本人もミランに対し、契約時は冷静でなく、心理的圧力があったとする旨の書類を提出したという。これらの事実が証明された場合、民法によって契約の取り消しが認められる可能性もあるとのことだ。
 
 その場合、ドンナルンマの契約期間は延長する前、すなわち今シーズンいっぱいまでとなる。シーズンが終われば、ドンナルンマはフリーで自由に希望するクラブへ移籍することが可能だ。
 コッリエレ・デッラ・セーラ紙は、ライオラ代理人の狙いはドンナルンマをフリーで移籍させ、新クラブと好条件の契約を結び、多額の手数料を手にすることだと報道。パリ・サンジェルマンとレアル・マドリーに獲得の用意があるとした。
 
 イタリア『ANSA通信』は、ミランがドンナルンマを不動の守護神とし、全面的に信頼して売りに出さないという前提で選手と直接対話し、意向を聞く姿勢だと報じている。一方、イタリア『メディアセット』は、ライオラ代理人サイドがこのANSAの報道に対して「ノーコメント」を貫いたと伝えた。
 
 イタリア紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、13日のコッパ・イタリアでヴェローナと対戦するミランのジェンナーロ・ガットゥーゾ監督は、『Milan tv』で「ドンナルンマとのあいだには全く問題はない」と強調している。
 
「問題があるなら、(CEOのマルコ・)ファッソーネと(SDのマッシミリアーノ・)ミラベッリが対応する。私は、ドンナルンマは落ち着いていると見ているよ」
 
 ただ、再び契約を巡ってクラブとの確執が騒がれたことで、ミランのサポーターがドンナルンマに冷たい視線を浴びせることは想像に難くない。ヴェローナ戦で一部のファンが反発を表明する可能性があることも、すでに伝えられている。
 
 実際、メディアセットのアンケートでは、1万人を超えるユーザーのうち、65パーセントがシーズン後のドンナルンマ退団を予想。1月の退団を予想するサポーターも21パーセントと、「ミラン残留」の14パーセントを上回っている。多くのファンが、ドンナルンマとミランの蜜月関係は終わると考えているのだ。
 
 ジャンルイジ・ブッフォンの後継者として、イタリア・サッカー界の未来を背負うと期待されている稀代のタレントは、これまで強い愛情を強調してきたクラブに別れを告げることになるのだろうか。