人によっては、ホリデーシーズンは誰かに感謝したり、この季節の恩恵を思い返したりする時期だろう。だがメディアの営業チームにとっては、12月31日までに最大限の成果を上げなければならない狂騒の時期だ。それによって、運が良ければ過去最高のボーナスを手に入れ、運が悪くても今年の収益低下分を補うことくらいはできる。

「気弱な人には厳しい時期だ」。エージェンシー、ノーブル・ピープル(Noble People)のプレジデントであるトム・モリッシー氏は、『OK!』や『エンターテインメントウィークリー(Entertainment Weekly)』といったセレブ情報を扱う週刊誌でパブリッシャーとして活躍していた当時を振り返ながら語った。

第4四半期の狂騒は、デジタルメディアの台頭によって一層激しさを増している。そもそも紙雑誌につきものの締め切りが、デジタルメディアにはない。新たなキャンペーンをローンチしたり、追加したりするのも、紙雑誌よりもデジタルメディアのほうが簡単だ。しかもデジタルパブリッシャーが軒並み今年の業績目標を達成できずにいる、または達成に苦戦していることを踏まえれば、このホリデーシーズンはとりわけ過酷になるはずだ。

既存クライアントを狙え



「悪い年だ」と語るのは、メディアの営業を長年にわたり担当し、現在は自身の会社であるコア6アドバイザーズ(Core 6 Advisors)でセールスマネジメントに関するコンサルティング事業を展開するマイケル・ヘス氏だ。「メディアのセールスマネージャーに会いに行くと、彼らが電卓で数字を叩きながら口にするのは『なんてこった』ばかりだ。11月30日の時点でそんなことを言うようではまずい。GoogleやFacebookが、いまの段階でそんなことを言っているとは思えない」。

確かにそうだろう。しかし、大部分のメディア企業が今年のデジタル広告の売上成長からほとんど恩恵を得られなかったのも事実だ。彼らがいまになって必死になっているのもそのためである。1年のこの時期、営業チームの常套手段となるのが、自社サイトにすでにキャンペーンを展開中のクライアントに頭を下げるという戦術だ。クライアントのマーケティング担当者に未消化の予算があり、使わなければ次年度の予算が減ることを知ったうえでの戦術である。つまり、広告枠を投げ売りするのだ。

「広告の買い手にすれば、すでに関係を結んでいるパブリッシャーに予算を投じる方が簡単に決まっている」と指摘するのは、テイキー(Taykey)やセイ・メディア(Say Media)の営業を担当するベテランエージェンシーのマット・ローゼンバーグ氏だ。「売り手は既存のバイヤーを懸命に探し、投げ売りを試みようとする。だがバイヤーの方から電話をしてきて、予算が余っているんだが『安くならない?』と持ちかけてくることは少なくない。商談成立だ」。

お付き合いが重要



とはいえ運がなければ、売り手は自ら積極的に動き、下調べも行わなければならない。まずは、どのクライアントが年末に投げ売りに応じているかを調べ、調査結果に基づいてクライアントをフォローするのだ。

クライアントとの関係はいつだって重要だが、この時期ほど重要度が高まることはない。1年のこの時期こそ、メディアはバイヤーやクライアントとランチや酒の席を設けなければならない。もちろん、休暇気分を一緒に味わうため、というフリも必要だ。気分がほぐれたところで、今年の予算は余っていないか、あるいは大切な第4四半期にずらして投じられる予算はないか、バイヤーに尋ねればよい。

「ランチが何かを生み出してくれると期待するしかない」と、ノーブル・ピープルのモリッシー氏も指摘する。

ギフトという飛び道具



ギフトが効果を生む時期でもある。経験豊富な売り手は、ホリデーシーズンのギフトを絶好の機会として利用するものだ。ここで大切なのは、予算を持っている人物に、ひときわ目立つギフトを贈ること。さらに効果を高めるために、賢い売り手はギフトを渡すついでにオフィスに立ち寄ったと言い訳し、この予算やあの予算はどうなっているかと聞き出す。

ローゼンバーグ氏は語る。「袋にいっぱいのギフトを持っていけば、ミーティングの時間は必要ない。 『ギフトをお持ちしたんです』と言われて、断れるバイヤーはいない」。

広告料の引き下げは、最後の手段として魅力的だ。しかし実際にやるなら、売り手は危険を覚悟しなければならない。いったん値下げに走ったら、戻るのは難しい。

あるパブリッシャーのCEOは匿名で、こうした戦術を「バカげている」と一蹴した。「第4四半期の業績がそれほど心配なら、すでにその四半期は失敗しているのだから、来年こそは失敗しないように努力するべきだ。つまり、クライアントと会い、優れたオファーを提示すればよい。そうしてこそ、長期的な効果が生み出せるというものだ」。

LUCIA MOSES(原文 / 訳:SI Japan)