E-1の中国戦で待望の日本代表デビューを果たしたDF植田直通【写真:Getty Images】

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日本代表へ初めて招集されてからまもなく3年

 初招集から3年近い歳月をへて、DF植田直通(鹿島アントラーズ)が待望のA代表デビューを果たした。味の素スタジアムで中国代表と対峙した、12日のEAFF E-1サッカー選手権2017決勝大会第2戦で、本職のセンターバックではなく右サイドバックとして先発フル出場。日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督から及第点を与えられた23歳は、さらに仕留めがいのある獲物を求めて、引き分け以上で2大会ぶり2度目の優勝が決まる12日の韓国代表との最終戦を見すえる。(取材・文:藤江直人)

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 7人に対して4人――何を表す数字かと言えば、中国代表とのEAFF E-1サッカー選手権2017決勝大会第2戦に先発した、日本代表メンバーにおけるユニフォームの長袖派と半袖派の人数だ。

 キックオフを迎えた12日19時19分、味の素スタジアムの気温はわずか7度と冷え込んでいた。FW倉田秋(ガンバ大阪)、A代表デビュー戦のMF土居聖真、キャプテンのDF昌子源(ともに鹿島アントラーズ)の半袖派も、ユニフォームの下に青色のインナーを着込んでいる。

 そのなかでただ一人、冷たい空気に素肌をさらしながらピッチに立ったのがDF植田直通(アントラーズ)だった。試合後の取材エリアで直撃してみた。寒くなかったのか、と。

「鹿島でも半袖しか着ていないので。僕はいつも半袖だと、みんなもうわかっているんですよ」

 熊本県の強豪・大津高校から加入して、5シーズンを終えたアントラーズでも。昨夏のリオデジャネイロ五輪を含めた年代別の日本代表の戦いでも。極寒の状況下で行われた試合で常に半袖を着用してきた理由を、植田は苦笑いしながら説明してくれた。

「きっかけは別にないですね。試合のときは、あまり長袖が好きじゃないので。実際に始まれば、すぐに暑くなりますから」

 もっとも、中国戦ではキックオフの前から、胸の高鳴りに導かれるかたちで、すでにヒートアップしていたかもしれない。ハビエル・アギーレ前監督時代に、日本代表へ初めて招集されてからまもなく3年。待って、待って、待ち焦がれたデビュー戦がついに訪れたからだ。

「チャンスが来たので、自分にできることを思い切りやろうという気持ちではいました。でも、まだまだというか、自分でも納得していない部分もあるし、それを次につなげていきたい」

「すべて弾き返してやろうと思っていた」

 アントラーズでは2つ年上の昌子と、2014シーズンからセンターバックを組んで常勝軍団を支えてきた。しかし、A代表における初陣を前に、日本代表を率いるヴァイッド・ハリルホジッチ監督から告げられたポジションは右サイドバックだった。

 試合終了間際に飛び出した、MF井手口陽介(ガンバ)の劇的な決勝ゴールで北朝鮮代表を下した第1戦から中2日で迎える中国戦へ。平均身長で約6センチも劣る大柄な相手に対抗するための答えを、指揮官は今大会に招集したフィールドプレーヤーで最長身となる186センチの植田に求めた。

「我々の前線と中盤の選手たちを中国と比べてみて、フリーキックの戦いをどうするべきかを考えた。植田とディスカッションしたところ、『行けます』と即答してくれた」

 相手のフリーキックやコーナーキックをはね返す、高さと力強さを日本に与えるミッションを託された。182センチの昌子と組むセンターバックには183センチの三浦弦太(ガンバ)が、左サイドバックにはアントラーズの先輩、180センチの山本脩人が配された。

「自分のところに飛んできたボールは、すべて弾き返してやろうと思っていた。監督に起用された意味は、そういうもの(相手の高さ)に対処するためだとわかっていたので」

 最終ラインを形成する4人のうち、昌子以外の3人がA代表デビュー戦だった。異例と言っていいメンバー選考となっても、全員が180センチ台をそろえた意図が明確に伝わってきた。

 同時に不思議な縁も感じた。2015年1月に南半球のオーストラリアで開催されたアジアカップ。故障離脱したDF内田篤人(当時シャルケ、現ウニオン・ベルリン)に代わり、A代表に初めて招集された植田は右サイドバックの控えだった。

「最初に呼ばれたときも右サイドバックなら、デビュー戦も右サイドバック。何か縁があるのかなと思いますけど、でも僕はセンターバックの選手なので。どこででも出られればいいけれども、やっぱりセンターバックで出たいという気持ちは忘れていないし、出られるように準備していきたい」

守備だけでなく攻撃でも躍動。絶妙クロスも供給

 センターバックへの矜持を抱きながら聞いた、キックオフを告げる主審のホイッスル。アントラーズでももうお馴染みの、のけ反らせた体勢から上半身を激しく、強く前へ振りながら頭でボールを弾き返す、正確に言えば弾き飛ばすプレーを何度も見せた。

 守るだけではない。22分に敵陣に侵入してこぼれ球を拾い、間髪入れずにファーサイドへ絶妙のクロスを放った。J1の得点王にしてMVPのFW小林悠(川崎フロンターレ)が必死に頭を合わせるも、シュートはゴールの枠をとらえられなかった。

 65分には伊東純也(柏レイソル)とのワンツーで、右サイドをフリーで抜け出してから左へ急旋回。小林と土居には合わなかったものの、ペナルティーエリアのなかに入ったところで、グラウンダーの高速クロスを供給してスタンドをわかせた。

 ただ、画竜点睛を欠いてしまった。2点をリードして迎えた後半アディショナルタイムも、表示された3分台に差しかかろうとしたときだった。三浦を狙ったGK東口順昭(ガンバ)のパスが、わずかにずれる。相手に拾われそうになった刹那に、植田が思い切って蹴り出した。

 しかし、ボールは相手にわたってしまい、パスをつながれ、ペナルティーエリア内に侵入されたところで山本が倒してしまった。ファウルを犯したのは山本だが、PKを決められるまでの過程に対する責任を守備陣全体で背負った。

「最後の失点は本当に悔しい。最後までしっかり集中していかなきゃいけないと、あらためて思いました。パスミスもあったし、クロスの精度が高ければ得点につながる場面もあった。本職の右サイドバックの人たちにはまったく及ばないし、そういう小さなところをもっともっと詰めていかないと」

「ベンチですべてのポジションを見てきた」

 準々決勝でUAE(アラブ首長国連邦)代表に屈し、連覇を逃したアジアカップの4試合を含めて、3年弱の間にリザーブのまま試合を終えたのが14度。ベンチにすら入れず、スタンドで仲間たちの試合を見届けたことも3度ある。

 自身よりも遅れて招集された選手が、A代表デビューを果たしたケースも少なくない。今大会で言えば、北朝鮮戦でGK中村航輔(レイソル)、DF室屋成(FC東京)、伊東、FW阿部浩之(フロンターレ)がひとつ目のキャップを獲得した。

 6大会連続6度目のワールドカップ出場を決めた後の10月シリーズ。ニュージーランド、ハイチ両代表と対戦した国際親善試合でも、フィールドプレーヤーではただ一人、出場機会を得られなかった。練習の段階から予感めいたものがあったのだろう。ハイチ戦後にはこんな言葉を残している。

「ショック? いまですか? もちろんです。でも、僕はやり続けるしかないので」

 もっとも、ショックは受けても、下を向くことはなかった。アントラーズに戻り、何が理由なのかを自問自答しながら日々の練習に一心不乱に打ち込んだ。あきらめたら、その瞬間にロシアのピッチに立つための挑戦は終焉を迎える。

「何かが足りないからこそ、試合に出られなかったと僕は思っているので。(三浦)弦太もそうですけど、いままでも練習の段階から常に厳しく臨んで、今回は監督からも『すごく状態がいい』と言われていた。だからこそ今回は試合に出られたし、あらためて練習がすべてだと思いました。

 早く出たいという気持ちはありましたけど、ベンチですべてのポジションを見てきたからこそ、完璧とは言えないけど、今回の右サイドバックもできたと思う。無駄なことはひとつもなかったし、いまの自分に全部つながっているという意味で、今日も少しは生きたんじゃないかなと思う」

ハリルも及第点の評価。韓国戦でも出番があるか

 味の素スタジアムのピッチに入場する直前のひとコマ。ハリルホジッチ監督はメインスタンド下でスタンバイしていた植田に近寄り、両手で頬を包み込んでから初陣のピッチへ送り出した。

「最初は難しいかなと思ったが、私が見たいものを見せてくれた」

 試合後の公式会見で植田のパフォーマンスにギリギリながら及第点を与えた指揮官は、さらなる成長を促す思いを込めて、こんな注文をつけることも忘れなかった。

「ボールをもつ相手との距離が遠い時間帯もあったので、できるだけ相手をターンさせない術を身につけてほしい。それでも後半はよりよくなったし、しっかりとした仕事をしていた。オフェンス面でもいい突破があった」

 アントラーズへの入団発表の席で、植田は自らを獰猛なワニにたとえて、チーム関係者や同期入団の選手たちを驚かせた。

「ワニは獲物を水中に引きずり込んで仕留める。自分も得意とする空中戦や1対1にもち込んで、相手を仕留めたい」

 心技体で大きく成長を遂げたいま、ワールドカップに出場する屈強なストライカーたちを獲物として設定するのであれば、アジア最終予選で敗退している中国はやや物足りなく感じたかもしれない。リスペクトの思いを込めながらも、試合後にはこんな言葉も残している。

「今日の相手は来年のワールドカップにはいないし、実際、ワールドカップはもっともっとレベルが上がると思っている。自分たちもいまのレベルじゃ太刀打ちできないと思うので、もっと力をつけていかなきゃダメだと思います。

 次の相手の韓国には身長のある選手がいて、そこをターゲットにするサッカーを仕掛けてくる。自分が出ればしっかりと抑えられる、というところを見せたい。サイドバックでもセンターバックでも、僕がいまもっている力のすべてを出したい」

 ともにワールドカップ出場を決めている韓国代表だからこそ、骨のある相手だからこそ、仕留めがいがある獲物がいる。引き分け以上で、2大会ぶり2度目の優勝が決まる12日の大一番へ。植田は半袖のユニフォームを用意し、闘争心を静かにたぎらせながら出陣のときを待つ。

(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人