小林の決勝点を演出した川又。敵陣ゴール前で力強いポストプレーを見せた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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[E-1選手権]日本 2-1 中国/12月12日/味スタ

 快勝というより辛勝に近いが、それでも3日前の北朝鮮戦に比べれば内容は上向いた。
 
 試合後のハリルホジッチ監督は、上機嫌で次の4人を褒め称えた。
 代表初ゴールの小林に2点目の超ロングシュートを決めた昌子、さらに初戦に続いて見せ場を作った伊東を称賛。中盤の至るところに顔を出し、流れを引き寄せた今野にいたっては大絶賛だ。
 
 この4人はたしかにいいプレーをした。だが、ここに私はもうひとり加えたい。残り15分、伊東に代わって投入された川又だ。
 
 指揮官は、絶好のタイミングで磐田のストライカーを送り出した。乱戦模様となった終盤、日本は運動量で中国を上回り始めていたからだ。
 流れが傾きかけたところに身体を張れる川又を投入したことで、日本は中国のペナルティエリアに強い圧力をかけられるようになった。
 
 川又はほとんどすべてのポストプレーを成功させたが、中でも82分、キーパーからのロングパスを胸で落としたプレーが印象に残った。
 
 ボールを受ける直前、背後には自分より大きなマーカーがついていたが、背中で強引に押し下げ、そこから前に出てフリーで胸トラップを成功させた。空中戦を挑むかと思ったが、屈強なマーカーに力比べを挑んでしっかりボールを収めてみせた。
 
 日本でポストプレーというと、受けて戻せばそれで合格点となる。だが味方に戻してばかりいては、敵はそれほど怖くない。守備を立て直す余裕を与えてしまうからだ。
 それよりもボールを足下に収める、そこからさらに反転してシュートを狙うと格段に脅威は増す。
 
 つまり川又は無難なプレーに走らず、より敵が嫌がるプレーを選択肢して成功させた。限られた出番の中で一発やってやろうという意欲が、このプレーからは感じられた。
 
 そして、この姿勢が2分後のゴールにつながる。
 倉田から小林とつながり、すぐさま川又へ。彼は強引に前を向き、小林にリターンパスを送る。そこから小林が難しい体勢でゴールネットを揺さぶった。
 決めた小林も見事だったが、チャンスを拡大した川又のプレーも素晴らしかった。
 
 国内組で挑む今大会の日本代表は、敵を攻めあぐねる場面が目立つ。それは敵が怖がるプレーが少ないからだ。そんな中で強さと泥臭さを備え、敵と力勝負ができる川又の存在は貴重だ。
 短いプレータイムの中で2試合続けてゴールに絡んだストライカーは、韓国戦でもキーマンになりそうだ。
 
取材・文●熊崎 敬(スポーツライター)

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