タイム社(Time Inc.)のコンテンツスタジオであるファウンドリー(Foundry)は日夜、広告主のためのキャンペーンを生み出しており、その数はこの2年で1000を超える。だが同スタジオは社内の仕事もこなしており、その内容も新しくペットを飼う人向けの登録サービスであるペットヒーロー(PetHero)の素材のデザインや、ピープル(People)の宣伝素材であるGIF動画の作成などさまざまだ。

同スタジオは、パブリッシャーのコンテンツスタジオがもともとの役割から大きな広がりを見せていることを示す一例だ。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のTブランドスタジオ(T Brand Studio)も、もともとは広告主のために同社のコンテンツを販売しているに過ぎなかった。それがいまや、動画やポッドキャストといった編集コンテンツに資金協力してくれるパートナー探しや、広告主の予算に見合った商品をタイム社が提供できるように、まるでエージェンシーのように営業するなど、メディアとしてのタイム社とはまったく無関係の活動にまで手を広げている。Tブランドスタジオのクリエイティブ関連の能力を伸ばすなか、タイム社の広告およびイノベーション部門でシニアバイスプレジデントを務めるセバスチャン・トミック氏は、Tブランドスタジオが外部クリエイティブエージェンシー向けにタイム社のブランドキャンペーンを展開するのは効果的だとし、次のように語った。

「Tブランドスタジオは、はじめは社内の極秘プロジェクトのようなものだったが、いまや毎日当社に売り上げをもたらす中核的な存在に成長した。ニューヨーク・タイムズの広告提供を主導しているのは、まぎれもなくこのコンテンツスタジオだ」。

影響力の広がりの表れ



ブランデッドコンテンツチームの拡大は、彼らの影響力の広がりの表れでもある。こうして、いままでにない仕事をこなしているのは、最適化の結果でもあるのだ。とはいえ、一般的にエージェンシーが拡大するときは契約社員を雇うのに対し、パブリッシャーのコンテンツスタジオは正社員を雇うことが多く、それが収益向上の障害のひとつとなっている。仕事が多いコンテンツスタジオほど、生産性が高いように見える。だから、肩書きどおりの仕事しかしないクリエイティブサービスチームは消えつつあるし、もしかしたら、すでに「過去の存在」なのかもしれない。

フード52(Food52)は家庭料理を紹介するWebサイトとして2009年に立ち上げられた。設立から間もないこのパブリッシャーでは、ブランデッドコンテンツが会社のその他機能から切り離されたことは一度もない。41人のチームメンバーが同社のサイトや料理本、オンラインショップ、広告主向けの全コンテンツを作成している。

同社でCRO(最高収益責任者)を務めるサム・スタール氏は、「フード52が小さかったころは、小規模で小回りがきくチームが会社のさまざまな事業のコンテンツを作成するのが理に適っていた」と説明。「そして事業と会社が大きくなるにつれて、広告主のためにより良いコンテンツを提供するためには、一貫性のある立場から発言できるクリエイティブチームが必要だとわかった。読者や買い物客が当社とどのように関わり合っているかを本当の意味で理解していているチームがね」。

さまざまな要求に対応



タイム社のファウンドリーで最高クリエイティブ責任者を務めるクリス・ヘーシック氏は、同部門は仕事には事欠かないが、クリエイティブの社員を多数抱えており(120人、さらに雇用予定)、サポートを求めれば同社は応じているとし、次のように述べた。「手の空いているメンバーがいればと思うんだが、誰も彼もが働き詰めだ」。

かつてTブランドスタジオに勤めており、現在はパブリッシャーのコンテンツスタジオのコンサルタントをしているメラニー・デジール氏は、コンテンツスタジオチームはいろいろなクライアントのさまざまな要求に応えてきたため、迅速に対応することに慣れており、同じように創造性や柔軟性が求められるパブリッシャーのほかのプロジェクトの手助けをするのに適していると指摘し、次のように語った。

「パブリッシャーは、社内プロジェクトにコンテンツスタジオのライターやデザイナー、プロデューサーを活用できるはずだ。たとえば会社のクリスマスカードのデザインやネイティブ広告ではない広告商品といったプロジェクトにね。社外プロジェクトについても同様で、印刷およびデジタルの自社広告キャンペーンや、看板やブースといったイベントマーケティングの舞台、カンファレンスや他業界イベントにおける幹部のプレゼン資料の作成で彼らの力を活用すると良いのではないか」。

一長一短という見方も



広告主向けにカスタマイズされたコンテンツとパブリッシャーのマーケティングにはもともと似通った部分があり、いくつかの企業でこうした機能統合が進んでいる背景となっている。ワシントン・ポストのコンテンツチームであるWPブランドスタジオ(WP BrandStudio)を率いるアニー・グラナットステイン氏は、ブランデッドコンテンツチームが役割を広げるのも一長一短だと指摘する(同社において、両者の機能は分けられている)。

「長所としては、よりまとまりのある提案ができる可能性があるだろう。RFP(提案依頼書)を受けるにしても、カスタマイズされたコンテンツをマーケティングやパブリッシャーについて詳しい人間から受けるわけだから」とする一方で、「短所は、いままでずっとパブリッシャーのマーケティングをしてきた人間が、必ずしもコンテンツのキャンペーンに向いているわけではないという点だ。専門性が失われるおそれがある」と語る。

また、コンテンツスタジオの役割が拡大すると、編集チームとのあいだに軋轢が生じる可能性もある。ある編集者は次のように漏らした。「そのぶん編集に予算を回してもらえればと思う。だけど、編集は自分たちがやりたいことができる。彼らみたいな、きつい仕事はせずに済むからね」。

LUCIA MOSES(原文 / 訳:SI Japan)