東京都立公園「井の頭恩賜公園」の池にアメリカザリガニが大量に繁殖し、絶滅危惧種の水草「イノカシラフラスコモ」を食い荒らす被害が続いている。

公園では、2017年12月下旬から水抜きの「かいぼり」を行うが、それでも生き残ってしまうというのだ。

400匹以上のアメリカザリガニが捕れた日も

ザリガニは、水草などを食い荒らすため、生態系に悪影響を与えることが分かってきている。環境省からは、緊急対策外来種に指定され、駆除対象になっている。井の頭公園でも、定期的に駆除が行われており、2017年は園内の池の1つで、なんと400匹以上のアメリカザリガニが捕れた日もあったという。


井の頭池にも繁殖するアメリカザリガニ(以下、井の頭自然文化園水生物館提供)

井の頭池の「かいぼり」は、外来種の駆除などを目的に、2013年度と15年度に行われ、外来魚など3万匹近くを捕獲した。17年度は、3回目となる。

井の頭自然文化園水生物館の担当者にJタウンネットが12月12日に話を聞いたところによると、井の頭池の外来種としては、ブルーギルとアメリカザリガニで多くを占めるという。かいぼりでは、18年1月下旬から3月上旬まで、池底に天日に晒す「池干し」を行うが、それでもザリガニを駆除するのは難しいそうだ。

「ザリガニは、冬の間は穴に入って冬眠状態になります。十数センチも掘って湿り気のあるところにおり、池は湧水もあるため、池干ししても生き残ってしまいます。自然度の高い池で、地下のたまり水などもあり、外来種を完全に駆除するのは難しいですね」

過去2回の「かいぼり」で、藻の一種の「イノカシラフラスコモ」が約60年ぶりに復活しているのが井の頭池で確認された。しかし、ザリガニなどが食い荒らすため、再び姿を消す心配もされている。

捕食するブラックバスの根絶でまた増える

井の頭自然文化園水生物館では、「かいぼり」を前にザリガニによる悪影響を知ってもらおうと、11月30日から特別展「私たちにできること アメリカザリガニは放さない」を開いている。


11月30日から始まった特別展

そこでは、池で捕れたザリガニを実際に展示しているほか、水槽内の水草を食べたり、メスが数百個の卵を抱えたりしている様子を紹介している。ザリガニは、90年前にアメリカから日本に持ち込まれてから、確かに子供たちに親しまれてはいる。しかし、池の間を歩いて移動できるため、広がりやすく生態系へのインパクトも大きいという。

外来種のうち、釣りの対象として人気のあるブラックバスについては、過去2回の「かいぼり」で根絶状態になった。ただ、ブラックバスは、ザリガニを捕食しているため、逆にそれで一時的にザリガニが増える事態になっており、外来種の駆除はなかなか難しい作業のようだ。