小林悠は12日の中国戦で日本代表初ゴールを奪って勝利を大きく引き寄せた【写真:Getty Images】

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最後まで貫き通したゴールへの執念。ついに実った初得点

 今季のJリーグ年間MVPにしてJ1得点王という肩書きを提げ、日本代表の一員として戦うFW小林悠。EAFF E-1サッカー選手権2017決勝大会にロシアW杯出場の望みをかけて臨んだ30歳は、代表デビューから3年2ヶ月の時を経て、ついに初ゴールを決めた。これまでの成長と強い覚悟が結実した1点が持つ意味とは。(取材・文:元川悦子)

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 シュート数15対4と中国を圧倒しながら、ゴールをこじ開けられずに苦しんでいた12日のEAFF E-1サッカー選手権2017決勝大会(E-1)の第2戦・中国戦(東京・味の素)。その停滞を打破したのが、後半39分の先制弾だった。

 倉田秋(G大阪)のタテパスにペナルティエリア内で反応した小林悠(川崎F)がフリックし、ボールを受けた川又堅碁(磐田)がシュート。これが相手にブロックされ、ルーズボールを拾った背番号11は右足を振り抜こうとするもGK正面へ。それでも諦めずこぼれ球に食らいつき、反転しながら左足を一閃。ゴールへの執念が実った泥臭い1点がついに決まった。

「最初は堅碁とワンツーしようと思ったけど、堅碁がシュートを打って、こぼれてきたのを1本目が相手のGKに当たって、こぼれて、その後、うまく流し込めたのかなと思います。反転シュートはもう感覚ですね。自分の位置とボールの位置とゴールの位置の感覚で打ちました」と本人は冷静に振り返ったが、2014年10月のジャマイカ戦(新潟)の初キャップから3年2ヶ月がかりの代表初ゴールは感無量だったに違いない。

 拓殖大学から川崎フロンターレ入りして2年目の2011年にはいち早くレギュラーを勝ち取り、シーズン12得点をマークするなど、小林の傑出した得点感覚は日に日に評価が高まっていた。が、日本代表では右サイドで起用されることが多く、ゴールを奪うどころか、定着さえもままならなかった。

 ハビエル・アギーレ監督時代はネイマール(PSG)に4得点を奪われた2014年10月のブラジル戦(シンガポール)に先発しただけで、フル出場は皆無。2015年アジアカップ(オーストラリア)も帯同しながら出番なしに終わった。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督体制発足後も断続的に招集されたが、スタメン起用されたのは、2016年6月のブルガリア戦(豊田)と同10月の2018年ロシアW杯アジア最終予選・オーストラリア戦(メルボルン)の2試合だけ。

 オーストラリア戦では本田圭佑(パチューカ)、原口元気(ヘルタ)と3トップを形成し、守備面で奮闘するなど彼らしい献身性を遺憾なく発揮していたが、その後に台頭した久保裕也(ヘント)や浅野拓磨(シュツットガルト)によって、ポジションを追われる形になっていた。

ゴールで深まる自信。ロシアW杯へのスタートラインに立つ

 2017年に入ってからは、6大会連続W杯出場の切符を引き寄せた最終予選終盤も、11月のブラジル(リール)・ベルギー(ブルージュ)2連戦も招集見送り。彼自身のロシア行きに暗雲立ち込める状況になりつつあった。が、その風向きが変わったのが、川崎フロンターレのJ1逆転優勝と自身のMVP&得点王獲得だった。

 9月に3得点、10月に4得点、11月に1得点とゴールを積み重ねてきた男が最も輝いたのが12月2日のJ1最終節・大宮アルディージャ戦でのハットトリックだ。「クラブと代表は別なんで気持ちは切り替わっています」と今回のE-1の代表合宿入りした時、本人には浮かれた様子は全くなかったが、今大会に挑む小林悠には過去にないほどの自信が感じられた。

 9日のE-1初戦・北朝鮮戦では、金崎夢生(鹿島)が1トップ、自身が右FWに陣取った前半から後半頭にかけての時間帯は苦しんだものの、伊東純也(柏)が右サイドに入ったことで中央へポジションを変え、タテの2トップにシフトしてからはゴールへの迫力が出てきた。

 この経験値もプラスに働き、中国戦では1トップに君臨。ターゲットマンとしても堂々たる動きを見せ、前半から繰り返し決定機を迎えた。前半22分に植田直通(鹿島)の右クロスに頭で飛び込み、前半終了間際にも土居聖真(鹿島)の左からの折り返しに猛然と飛び込んでダイビングヘッドを放つも、ゴールだけが遠い。「今日は自分の日じゃないのかな」と小林の頭の中にも一抹の不安がよぎったという。

 それでも、最後の最後までゴールに突き進むに姿勢だけは捨てなかった。それが代表デビューから3年2ヶ月がかりの1点につながる。長い長い時間の積み重ねがようやくこの日、結実した。

「ボールを収めるところだったり、ヘディングの競り合い、つぶれるところではほとんど勝てていたと思うので、点が取れればアピールにつながると試合中にも思っていた。何とか1点ですけど決められらので、そこはアピールできたのかなと思います」と小林は安堵を口にする。ようやくロシアへのスタートラインに立てたという手ごたえも少なからずあったのではないだろうか。

ハリルも絶賛。小林悠は自らの価値を示し続けられるか

 ハリルホジッチ監督も「高いレベルで(代表)候補に入ると思う。以前は少し軽かったが、今はかなりアグレッシブに戦えるようになった」と絶賛したように、彼がロシアW杯での1トップ争いの一角に力強く名乗りを上げたのは間違いない。小林の得点をお膳立てした川又も今季のジュビロ磐田移籍で目覚ましい進化を遂げており、彼らの参戦でFWのポジション争いはさらに激しさを増しつつある。

 ここまでは大迫勇也(ケルン)が当確で、それ以外の岡崎慎司(レスター)、武藤嘉紀(マインツ)、杉本健勇(C大阪)らが横一線と見られていたが、大迫が肺炎を発症して1月中旬まで離脱を余儀なくされるという事実が判明。

 今季ケルンの低迷もあってエースFWの動向も不透明になってきた。武藤もケガで最近4試合は欠場中で、岡崎もクロード・ピュエル新監督就任後は大幅に出場時間を減らしている。一方で、FIFAクラブW杯(UAE)で奮闘中の本田が1トップ要員としてサバイバルに参戦しそうな雲行きもあって、半年後のメンバー構成は本当に分からなくなってきた。

 そういう中で、小林がようやく代表初ゴールという目に見える結果を残し、見る者に強烈なインパクトを与えたのは特筆に値する。コンディションを何よりも重視するハリルホジッチ監督にしてみれば、小林がこの好調を維持してくれれば、ロシアに連れて行きたいと本気で考えるはず。そういう機運をさらに強めるべく、背番号11はゴールを重ね続ける必要がある。

 さしあたって16日の最終戦・韓国戦だ。目下勝ち点6の日本と同4の韓国との激突はタイトルの懸かる大一番。「チーム一丸となって戦い、チームのために走り続けたい」と彼は語気を強めた。今の小林ならそれだけのタフな仕事が十分にできるはず。最終ラインの昌子源(鹿島)、ボランチの今野泰幸(G大阪)とともに力強く日本をけん引し、川崎Fでの3つのタイトルに続く成果を手にしてもらいたいものだ。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子