画像提供:マイナビニュース

写真拡大

住宅ローンの借り入れに不安を持っている人もいれば、大丈夫と楽観している人もいると思います。いずれにしても何が起きるかわからないのが人生です。必ずしも一般的なノウハウや注意事項が当てはまるとは限りません。基本、予測がつかないのです。そんなときに最大限どのような事態にも対応できるベースとなるものはどのようなものでしょうか。

○住宅ローンで失敗しないためには想像力が大切!

住宅ローンで破綻するケースは、まったく想定外の時もあるかもしれませんが、ほとんどは想像力の不足ではないかと思います。先々への想像力が不足することによって、対応力をつけるための準備がおろそかになります。住宅ローンを借り入れるときは、返済が可能であると金融機関に判断されて借り入れているはずです。同じスタートラインに立って、同じような状況に陥ったとしても、上手に乗り切るケースと破綻するケースに分かれるのは、結局は将来への想像力の不足による準備不足ではないでしょうか。

若いときは年を取った時の状況は親や祖父母を見て想像はするものの、まだ他人事でしょう。しかし定年近くなると、体力ばかりでなく社会適応力が大幅に落ちるものです。それまでの経験を生かしてそれまで同様に仕事を続け、収入も同等に確保できる場合はごく恵まれたケースです。対応力が落ちる以上、若い間に万一の場合の余力をつけておく必要があります。その時期は教育費や老後の生活費の貯蓄などで家計も大変な時期です。それでも住宅ローンが破綻しないための対策が必要です。

金利が一定期間を過ぎると上昇することがあらかじめ決まっていることがあります。以前は住宅金融公庫(現在の「住宅金融支援機構」)の住宅ローンは11年目から金利が上昇しましたし、現在のフラット35Sで一定期間優遇金利を受ける場合は、その期間が過ぎれば返済額は上昇します。

また金融機関によっては一定期間金利を優遇するサービスがあるケースがあります。想像力不足のごく単純なケースとして、こんな当たり前のケースですら、金利が上昇したときに返済に窮するケースが多いと金融機関の担当者から聞いたことがあります。5年先、10年先、20年先はどんな状況になるか、その時に状況の変化でどのような困難が予測されるかへの想像力が、健全に返済していけるベースだと思います。

想像力があれば、その時のために貯蓄額を増やしたり、繰り上げ返済をしたり、さらにどんな対策がベストなのかを探るために生涯収支表(ライフプランニングシート)を作成し、必要に応じて修正し、早くから適正な対策を立てていけます。その手間を厭わないのも想像力のたまものです。

○住宅ローンを借りたら、問題を先送りしないことが肝要!

そもそもローンを借りたこと自体、問題を先送りしていることになります。資金がたまってから購入するのが本来ですが、住まいの場合は高額ですので、たまるまで待つと住まいが必要な時期が過ぎてしまい、現実的ではありません。住宅ローンを借り入れた段階で大きな先送りをしているわけですので、リスクを少なくするためにはこれ以上の先送りがないように、細心の注意が必要となります。節約するだけでなく、その他のローンや月賦購入を避けたり、生活を絞ったりすることが肝要です。

上記の図は住宅ローン借り入れ前と借り入れ後の収支を表したものです。住宅取得前は賃貸住宅に住んでいたとすると家賃を支払っていたと思います。場合によっては家賃と月々の住宅ローン返済額があまり変わらないケースもあると思います。しかし、月々の住宅ローンの背景には、その数100倍もの残債があり、家賃と同等視するのは危険です。残債リスクは大きいのです。その分生活費を節約し、貯蓄を増やさなければ、何かイレギュラーな事態が起きた時に対応できません。老後の生活費や教育資金、医療費、耐久消費財の購入等の一般的な貯蓄のほかにローンリスクのための貯蓄も必要となり、収入が増えない限り、今まで以上に支出を抑え、貯蓄額を増やす必要があります。

○60歳までに終了しておくべきこと

35歳程度で住宅を取得し、とりあえず35年ローンを組むとすると返済が終了するのは70歳です。35年よりも短い期間の借り入れが可能でも、何かあった時の対策として月々の返済額を少なくすることは意味があります。しかし、繰り上げ返済などで60歳の定年までには完済しておくことが肝要です。それ以後も働けても、収入は少なくなるケースがほとんどだと思います。

住宅ローンの完済だけでなく、老後の生活に必要な住まいの修繕やリフォームも60歳までに済ませておくことが大切です。その分預貯金として別にストックしておけば、と思われるかもしれませんが、大きな出費はいろいろトラブルの可能性もあります。

そうした出費の多くは、予算オーバーになりがちです。真剣にリフォームを考えたら、あれも必要これも必要と、初めてその時に気づくことも少なくありません。予算がオーバーというよりも、予算を立てるときの想像力不足です。リタイア前に済ませておけば、その時に気づくことができます。まだまだ節約したり、リタイア後の再就職先を吟味して収入を増やしたりすることは不可能ではありません。しかし年金生活になったら、そもそも節約を強いられますので、さらなる節約は簡単ではありません。リフォームを定年までに済ませておくためには、その前に断捨離も必要です。定年前は新しい人生のスタートのためにいろいろ準備することが多いのです。

想像力というと、簡単なようで意外に難しいのではないかと思います。建築士としてお客様と暮らしや間取りの話をしているとき、ファイナンシャルプランナーとして住まいの取得やライフプランについて相談を受けているとき、未来を創造することは意外に難しいものだと感じる場面が多々あります。日本人はそうした面での訓練があまりされていないのだと思います。

頭の体操というベストセラーがありました。その中のある問題の解説として「この問題は理系の学生にとってはとても簡単な問題なのですが、文系の学生にとっては、数時間かかっても解けない難問である」ような趣旨のことが書かれていたように記憶しています。私は問題を読み終わると同時に解けてしまったので、この問題が数時間どころか数十分もかかるのは全く想像できませんでした。立体図形の問題だったので、理系の中でも建築系の学生であった私には有利な問題だったことは確かでしょう。

つまりちょっとした訓練で想像力は飛躍的に伸びるというのが私の実感です。あらゆるケースをイメージするのは立体図形も人生も同じです。人生に関する諸問題への想像力不足を補うのが生涯収支表です。問題点が一目瞭然となるばかりでなく、相続力そのものも育成されます。住宅ローンを安心して借り入れるため、住まいを資産としてフル活用するために生涯収支表を作成して想像力を錬えてみませんか。

○■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。