インタビューに応じるガリレオ選手。『BLAZBLUE(ブレイブルー)』というタイトルで世界的トッププレイヤーとして活躍してる

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 慢性的な労働力人口の減少が続き、人材確保がこれからの企業の課題として浮上している。来るべき人材確保が困難となる時代を見据え、ダイバーシティやワークライフバランスを推進し、働きやすさを打ち出す企業も増えている。

 そんななか、「プロゲーマー正社員採用制度」という独自の取り組みでプロゲーマーを正社員として迎え入れているのが、スマートフォン向けゲームの開発を手がけるポノス株式会社(本社:京都府)だ。練習やゲーム大会への参加といったプロゲーマー活動を通常業務に含むユニークな制度について、同社の江戸オフィス(恵比寿)で話を聞いた。

◆工場の機械保守から転職してプロゲーマー正社員に

 プロゲーマー正社員採用制度第一号として2017年6月からポノスで活躍するガリレオ選手(プレイヤーネーム)。以前は大手繊維メーカーで工場機械を保守するサラリーマンだった。

「前職では仕事後にゲームセンターに通って練習をする生活を送ってました。自分にとってゲームは人生の一部。ゲーマー活動はプレイ料金以外に、遠征費用など何かと出費が伴います。だからこそ仕事にもしっかり取り組み、仕事とゲームのバランスは意識していました」

 ガリレオ選手は、世界的なゲーム大会「EVO2014」での優勝を皮切りに、数々の大会で好成績を収めているプレイヤー。しかし、当時は徐々に社会人ゲーマーとしての限界を感じていたと語る。

「年齢とともに仕事の責任が重くなることで、ゲームとの両立が厳しいと感じていました。管理業務が増え、後輩の育成もあって、ゲームの練習時間を確保しづらくなりました」

「引退」の2文字が頭をよぎるなかで知ったのが、ポノスの「プロゲーマー正社員採用制度」だった。制度を知ったキッカケは、たまたま参加したゲーム大会。会場でポノス社によるプロゲーマー正社員採用制度の発表が行われており、すぐに応募することを決意した。
◆収入だけじゃない、社会人プロゲーマーの悩み

 ガリレオ選手は、普段は他の社員と同様に出社し、通常業務として取材対応やイベント登壇といった広報活動のほか、来年リリース予定の自社タイトルのテストプレイを行っている。

 同社ではスマートフォン向け対戦格闘風ゲームの開発を進めており、プロゲーマーからのフィードバックがゲームのデバックやバランス調整に活かされている。早ければ15時には通常業務を終了し、以後は大会に向けたゲームの練習に専念する。

「ポノスに入社してから、1日6時間の練習時間を無理なく確保できるようになりました。これ以上練習時間を長くとっても集中力の問題もあるので、今の自分にとって6時間が理想的な練習環境です」

 社会人ゲーマーの海外遠征事情はかなり厳しいものがあると、ガリレオ選手は指摘する。

「海外大会へ参加するとなると、渡航と滞在でだいたい1週間のスケジュールを確保する必要があります。日本の一般企業に勤める正社員が、ゲーム大会への参加を理由に1週間の有給休暇を年に何度も取得できるかというと、多くの方が現実的ではないと感じると思います。

 それならば、時間の都合がつきやすい非正規雇用という選択肢もあるかもしれませんが、20万円はかかる遠征費用を非正規の給料から捻出するのはかなり大変です。しかも大会参加中は無収入となるので、やはり厳しい」

 こうした問題を、ガリレオ選手はポノスのプロゲーマー正社員になることで解決している。

 2017年10月にカナダで開催されたゲーム大会「Canada Cup 2017」でガリレオ選手は優勝を果たしているが、同大会への参加は業務の一環として出張扱いとなり、渡航滞在費用は会社が負担している。

 当然、かかるプレッシャーも相応のものとなるのだが、自腹で遠征費用を負担するプロゲーマーもいるなかで、ガリレオ選手の環境は恵まれていると言える。

 このほか、専業プロゲーマーと比べて、セカンドキャリアの見通しが立ちやすいのも正社員プロゲーマーの強みとなるだろう。

◆プロゲーマーを雇用する会社の意図

 一般的にスマホゲームといえば、ライトゲーマーがスキマ時間を使って楽しむカジュアルゲームの印象が強い。ポノスの代表タイトル『にゃんこ大戦争』もカジュアルゲームに分類される。

 一方、プロゲーマーの主戦場はPCゲームやアーケードゲームが中心である。彼らを雇うポノスの狙いはどこにあるのだろうか。同社でe-sports事業を統括する板垣護氏はこう語る。

「ひとつは、来年弊社からリリースされるゲームの完成度を高めるというのがあります。昨今はスマホ向けゲーム市場からも、e-sportsに対応したタイトルがリリースされています。

 弊社のタイトルも対戦格闘ゲームのようなゲーム性を持ち、競技性の高いものを目指しています。そのためにはガリレオのようなプロゲーマーのアドバイスは貴重なものとなります。また、リリース後にゲームが盛り上がるにはスター選手の存在は不可欠と考えます。

 もうひとつは、e-sportsを盛り上げることで、日本にある『ゲーム=子供向け』のイメージを払拭したいということでしょうか。スマホが普及した現代は、ゲーム専用ハードを持たない人でもゲームを楽しめる時代です。だからこそ、ゲーム人口を増やせる土壌があり、e-sports化しやすい市場が出来やすいと思います。

 そこにはビジネスとして大きなチャンスがあります。しかしそこで『いい歳してゲームなんて』といった風潮があると、ゲーム業界そのものがしぼむ要因となってしまいます。e-Sportsが他のスポーツ競技と同列になれば、ゲーム業界そのものが盛り上がりますし、当然これは当社にとってもプラスになります」
◆目標はラグビー!? e-sportsをメジャーにするには?

 そのうえで、e-sportsの目指すべき姿はラグビーにあると板垣氏は語る。

「例えばラグビーという競技は、かつてはマイナースポーツのひとつといった扱いだったと思います。それが今では国際試合の結果がスポーツニュースで大きく取り上げられていますよね。ラグビーが野球やサッカーに次ぐポジションにまで、注目度が上がっているのです。

 その要因のなかには、五郎丸歩選手の存在が挙げられると思います。やはり、多くの人からかっこいい、憧れとなるスタープレイヤーの存在が不可欠であり、そういった次代を担うスター選手をe-sportsの分野でも輩出することが、メジャーになるためには必要です」

 最後に、プロゲーマーを目指す人へのアドバイスを両氏からもらった。

ガリレオ選手:プロゲーマーになりたいと周囲に相談すると、まず間違いなく批判されると思います。その主な理由は安定性に欠けるからというものです。しかし、他人が思う正しいと自分の正しいは違うものなので、自分が進む道を信じて欲しいです。そのためのチャンスも以前より増えていると思います

板垣氏:「ゲーマー採用は非常に狭き門ではありますが、興味のある方はぜひチャレンジしてください。特に弊社で開発するゲームと親和性の高いプレイヤーを求めています。現在はスマホ向けカードゲームの開発も進めており、知見のある方のジョインを歓迎しております」

 ダイバーシティを企業が重要視するのは雇用面もさることながら、多様化するユーザーの嗜好や価値観に適応していく狙いもある。

 今後も「異質」を取り込む企業戦略の重要性は高まりそうだ。

<取材・文/栗林 篤>

【栗林篤】
元IT企業のサラリーマン。年収300万円以下生活の傍ら、株式投資と不動産投資をはじめて、セミリタイアしてフリーライターに。優待株100超を保有、区分1貸家5アパート1を運用。公式ブログ「節約×株主優待×不動産投資でセミリタイアしたブログ 」更新中。著書『サラリーマンのままで副業1000万円』発売中