がんばって書いても、「もう少しがんばれば」という、”残念な”エントリーシートを書く人が少なくありません (写真:sasaki106 / PIXTA)

もうすぐ2017年も終わり。“就職活動の解禁日”といわれる、企業の採用広報活動開始の2018年3月まで、あと3カ月を切りました。そろそろ「本格的に準備を始めないと」と考えている方もいらっしゃるでしょう。

つまずくエントリーシートには共通点がある

その一方で、ESにつまずき、なかなかその先に進めない、という学生も増えています。多くの採用選考において、最初の関門になるのが、エントリーシート(ES)です。『就職白書2017』(リクルートキャリア・就職みらい研究所)によると、書類選考を行っている企業のうち、ESを導入している企業は63.3%。業種や従業員規模に関係なく、今や多くの企業が取り入れています。


私たちキャリアアドバイザーは、学生のみなさんから就職に関する相談を受け、キャリアに関するアドバイスを行う立場にいます。年間約600人もの学生と個別に会話をし、履歴書作成や面接の応対方法の助言を行っています。

みなさんとお話しをすると、経験に大きな差があるとは思えないのに、企業が高く評価するESと、何度出しても興味を持ってもらえないESとに、ハッキリ分かれてしまうという事実を目の当たりにしました。

そこで、その原因を追究するため、たくさんの学生のESを集め、複数のキャリアアドバイザーと一緒に、「明暗を分けるポイントは何か」を考えるワークショップを行いました。すると、明暗の牋邸箸箸覆ESには、「3つの大きなつまずきがある!」という事実を突き止めました。それぞれ見て行きましょう。

1. 自分のことを客観視しすぎる「低温系ES」

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「ゼミでリーダーを任された際、コミュニケーションが必要だと感じていた。この経験で得たコミュニケーションスキルは、チームで共同する事が必須である社会人においても、非常に重要だと考えている。」

これは自分のことにもかかわらず、まるで他人事のように、自分の「状況説明」をしてしまっているパターン。もちろん自己分析において、客観的に自分の強み、持ち味を考えるのは大切なことですが、それだけでは書き手の想いや意志が伝わってきません。どうしてそう思うのか、どうしてその行動をとったのか、自身の想いや考えを記載しましょう。

上の例はこのように変えてみてはいかがでしょうか。

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「ゼミでリーダーを任された際、私は、チームをまとめるためにはコミュニケーションが必要だと考えた。メンバー1人ひとりのモチベーションを保ちながら雰囲気を良くしていきたい、という思いがあったからだ。また、教授とメンバー間の接点が少なく、もっとお互いの意見をスムーズに交換できるようにしたいと思い、自ら調整役を担った。チームで共同する事が必須である社会人においても、この経験を活かしていきたい。

華々しくても考えや努力が見えないとダメ

2. 具体性のない話が並ぶ「目次系ES」

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「私が部長になった時、部員が少なく廃部寸前だった。そこで私は新人勧誘に力を入れるため、勧誘期間に体験入部制度を作った。その結果、直近5年で最多の11人の新入生が入部し、部を存続させることに成功した。」

イベントの責任者やゼミのリーダーなど、重要なポジションについた学生に多いのがこのパターンです。「サークルで大きなイベントを成功させた」「ゼミのリーダーとして全体を取りまとめた」などの素晴らしい結果は書いてあるのですが、具体的に、書き手がどんな問題意識で、どんな行動をしたのかが分からないESになりがちです。

その結果を出すために、何を考えどう行動したのか、結果から何を学んだのか、エピソードを具体的に記すことが大切です。これらが書かれていて初めて、本人の強みや持ち味が伝わってくるのです。

先述の例は、私がかつて実際に目にしたESです。ここに書かれている結果は確かにすばらしいと思います。しかし、本人の考え、努力のほどが見えてきません。

このように変えてはいかがでしょう。

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「私が部長になった時、部員が少なく廃部寸前だった。私は3年間過ごした愛着のある部を存続させたいと思った。そこで私は新人勧誘に力を入れ、勧誘期間に体験入部制度を作った。体験を通して新入生と部員が仲良くなれば、新入生が部の雰囲気に惹かれて、入部してもらえるのではないかと考えたからだ。その結果、直近5年で最多の11名の新入生が入部し、部を存続させることに成功した。」

3. 強みとエピソードがズレ続ける「こじらせ系ES」

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「私は常に知的好奇心に満ちあふれています。そのため研究室では、教授が勧める研究テーマだけでなく、つねに新しいテーマに挑戦し続けてきました。講演会や学会資料、海外の文献まで見識を広げ全員に共有。その結果、ゼミ生全員の知識を深めることに成功し、学内の研究発表会で優勝しました。」

「リーダーシップ」や「行動力」「論理的思考力」など、「就活マニュアルに書かれているような強み」を自分の強みとしてアピールする学生が多いです。しかし、その強みを裏付けるエピソードが、強みの説明になっていないケースがあります。上記は、自分の強みとして「好奇心」を挙げている例です。

このエピソードならば、さまざまな文献を集めた「情報収集力」や、自ら新しいテーマを見つけて挑戦する「向上心」を、強みとして挙げたほうがいいと思います。強みを勘違いしていたり、エピソードとズレてしまったりするケースが多く見受けられます。

「強み」の列挙だけでは説得力に欠ける

また、こうしたクセのある人は、1枚のESの中に、こうした「ズレ」を連発しまう傾向もあります。特徴と、その根拠になった“つもりのエピソード”が次々と繰り出されているけれど、複数の強みと複数のエピソードがもつれにもつれて重症化してしまう……。こうなってしまうと、修正もかなり難しくなってしまいます。

せっかく興味を持って物事に取り組んだ経験があるならば、その中で自分が何を発揮したのかを掘り下げていくと、より具体的な「強み」が表現できると思います。

<after>
「私には能力や意欲を高めるために挑戦し続けたいという「向上心」があります。そのため研究室では、教授が勧める研究テーマだけでなく、つねに新しいテーマに挑戦し続けてきました。講演会や学会資料、海外の文献まで見識を広げ全員に共有。その結果、ゼミ生全員の知識を深めることに成功し、学内の研究発表会で優勝しました。」

また、最近、自分をよく知る友人、知人に自分の強みを聞く、「他己分析」が推奨されていますが、それが「強み」と「エピソード」のズレにつながっている場合もあります。

他己分析をより有益なものにするには、「なぜ、そう思うのか」まで具体的に教えてもらうことが大切です。もし、「あなたはリーダーシップがある」と言われたら、「リーダーシップがあると思ったシーンは具体的にいつのどんなエピソードだったか?」まで掘り下げて聞くといいでしょう。また、できれば複数の人に聞いてみて、最も多かった意見を取り入れると、よりあなたらしいリアルな自己アピールにつながります。

ES改善の過程で自己分析が深まり、内定につながった事例を1つ、ご紹介しましょう。

Aさんは、大学入学以来ずっと学業に打ち込んできた、成績優秀な女子学生です。しかし、人と関わるのが苦手で自分に自信がなく、「自分の取り柄は勉強だけ」と思い込んでいました。

彼女のESを見ると、すべての項目のエピソードが「勉強」にまつわるものでした。「どれだけ勉強に打ち込んできたのか」「論文を完成させるためにどうがんばったのか」が書かれていました。もちろん、勉強に打ち込むのはすばらしいことで、強みやエピソードにしていいのですが、念のため、他に打ち込んだもの、積極的に取り組んだものはないかと詳しく聞いてみると、「文房具店でのアルバイト経験」を話してくれました。

エピソードを掘り下げ具体的な話にする

その文房具店では、アルバイトが集客イベントを企画・運営していて、Aさんもイベントを自ら企画し、十数人の新規集客につなげていました。

予算内に収めるため、安い材料を探して仕入れたり、他のスタッフと一緒にPOPを作って告知したり、自分が仕切り役になって当日参加者をサポートしたりする、などといった経験をしていました。

このエピソードからは、「予算内で集客を増やす」という課題を乗り越える「課題解決力」、周りと協働する「巻き込み力」がリアルに伝わります。また「十数人の新規集客」という結果も出しています。「勉強だけでなく、この経験もアピールしては?」と勧めました。

始めは「小さなお店だし、新規集客といっても十数人だし…こんなエピソードでいいんでしょうか?」という反応でしたが、このアルバイト経験を軸にESを書き換えたところ、Aさんの強みがより的確に伝わるようになり、その結果、書類選考通過率も上がっていきました。

それまでは「人と接するのが苦手」という意識で、「内勤の事務」を志望していましたが、ESを書き換える過程で「課題を見つけ、解決策を考えるのが得意」「チームで1つのものを作り上げるのが好き」という、自身の志向も発見することもできたのです。志望職種をシステムエンジニアに切り替え、見事志望企業の内定を獲得しました。

Aさんのように、「こんなささいなこと」と思い込んでいることでも、アピール材料になるケースはあります。どんなに小さなことでもいいから、他人と比べず、今までがんばってきたこと、力を注ぎやり切ったことを思い出してみてください。そして、なぜそれに打ち込んだのか、どんな努力や工夫をしたのか、そしてそこから何を得たのかという「プロセス」を整理してみましょう。

「勉強に打ち込んだ」ことをアピールする際にも、プロセスを伝えるのは重要です。なぜ、勉強に打ち込もうと考えたのか。どのように計画を立てて取り組んだのか。壁にぶつかったときにどう乗り越え、そこから何を学んだのか。アルバイトでも勉強でも、サークル活動でもボランティアでも、基本的な考え方は同じなのです。

ESでつまずかないためには、前述の3パターンに注意することに加え、「でき上がったESを複数の人に見てもらうこと」をお勧めします。

ESを社会人に見せるのは効果的だ

私が見たESの中で、「完成度が高い」と感じたものの多くは、「ゼミの先生や友達に見てもらった」というものでした。第三者におかしい、足りないと感じたところを指摘してもらい、内容を見直してブラッシュアップすることで、より強みや持ち味が伝わるESになるのです。

そして第三者に見てもらう際には、できれば「社会人」に見てもらうようにしましょう。学生よりも、実際に働いている人の視点のほうが「企業の採用選考担当者」に近いため、彼らの助言を踏まえて内容を吟味すれば、より企業に伝わるESにつながるはずです。

ESは自分の魅力を伝えるプレゼンテーション資料。ぜひ、これらのポイントを念頭に置き、企業にあなた自身をイキイキとイメージさせるESを作成しましょう。