Amazonのメディア関連事業における野心は急速に拡大している。それを実現するためAmazonは、パートナーシップのあるパブリッシャーたちにも大きく働きかけているようだ。

パブリッシャーのなかにはAmazonの音声アシスタント、Echo(エコー)向けのコンテンツやAmazon Prime Now(プライム ナウ)などに提供するレシピといったコンテンツを制作するための専門チームを持っている。パブリッシャー企業メレディス(Meredith)のメディア、オールレシピス(AllRecipes)の5人編成プロダクト開発チームは、Alexa(アレクサ)搭載のビデオデバイス、Amazon Echo Show(エコーショー)に配信するコンテンツを制作する。シリアス・イーツ(Serious Eats)やシンプリー・レシピス(Simply Recipes)といったサイトの親会社であるフェクシー・メディア(Fexy Media)には16人のスタッフと4人の契約スタッフからなるチームがあり、Amazon Prime Nowへとレシピを配信している。

しかし、Amazonが出してくるリクエストのすべてにパブリッシャーたちが喜んで答えているわけではない。明確なインセンティブを提示せずに、パブリッシャーたちへコンテンツ制作を要求してくるという声もパブリッシャーからあがっている。Amazonという巨大なプラットフォームに食い込んでいきたいが、なかなか先に進めないという不透明な自体にストレスを抱えているようだ。

Amazonのメインの目標はeコマースビジネスとプライムメンバーシップを拡大することだ。一方でパブリッシャーの目標は、オーディエンスを拡大し、消費者からの収益を増やすことだ。このふたつのあいだに衝突が起きてしまっている。米DIGIDAYは、Amazonにコメントを求めたが返答は無かった。パブリッシャーたちがAmazonのために専門チームを編成したことは、これまでにもある。しかし、これまでは必ずしもそれが収益を生まずに、チーム閉鎖へとつながってきた。

「敵か味方かという疑問は、いろいろなプラットフォームに関して抱えている。もしも、Amazon、Apple、もしくはGoogleとパートナーシップを持つのであれば、それはウィンウィンの関係でないといけない」と語ったのは、メレディス・デジタルのプレジデントであるスタン・パブロフスキー氏だ。

メディアとしてのAmazon



パブリッシャーがコンテンツを掲載できる場所は、Amazonにはたくさんある。ビデオ配信プラットフォーム(Amazonプライム・ビデオ)もあれば、ソーシャルプラットフォーム(インスタグラム風プラットフォームのスパーク[Spark])、そして音声プラットフォーム(Alexa)などだ。さらにプロダクトのページには、パブリッシャーがプロダクトのビデオを載せることができる。

パブリッシャーを強くひきつけているプロダクトも存在している。Amazon Echo Showは、まだローンチしてから6カ月しか経っていないが、メレディスだけでなくCNBCや英テレグラフ(The Telegraph)といったパブリッシャーたちが集っている。テレグラフはエコーショーのためのコンテンツを作るため、6人の人材を新しく雇っている。パブリッシャーにとっては音声やコネクテッドテレビジョンといったまだ生まれて新しい分野のメディアを探求するためにエコーショーは、格好の実験場となっているようだ。将来的にはオーディエンスを生み出すための重要なソースになるとにらんでいる。

スマートTVにおいてエコーショーが成功すれば、我々のブランドに非常に大きな規模のオーディエンスを急速に獲得することが可能になる」とテレグラフの最高インフォメーション責任者であるクリス・テイラー氏は語った

パブリッシャーのメリット



しかし、それ以外のAmazonのエコシステムにおいて、パートナーシップがどうメリットがあるのかは、まだ不明瞭だ。匿名を条件に語ってくれたパブリッシャーの内部スタッフはスパークについて、Amazonから具体的なインセンティブは提供されていないという。スパークでは面白いプロダクトとして(パブリッシャーも含む)ユーザーがAmazonのプラットフォームを通じて売られるプロダクトを選ぶことができる。

「ただ人目に触れるという理由だけでパブリッシャーがやってくれるだろうと、Amazonは考えているのだと思う。しかし、我々にとっては、それだけならAmazonである必要はない」と、パブリッシャー内部のスタッフは語ってくれた。

複数の関係者によると、プロダクトのページ上で配信できるビデオを制作するように、Amazonはパブリッシャーに頼んでいるという。これによってプレロール広告を売る機会を得られる。もしくはそこでブランデッドコンテンツを配信することもできる。FacebookやYouTubeが提示しているマネタイズオプションと同等、もしくはそれ以上をAmazonは提示しているという。

シミラーウェブ(SimilarWeb)によると、Amazonはアメリカで四番目に多く訪問されているサイトであり巨大なユーザーベースを誇っている。しかしパブリッシャーたちによると、プロダクトページのビデオを閲覧している人の数は少ないという。

「一定のビュー数やインプレッション数が保証されているわけでもなく、リバースアフィリエイト手数料が提示されているわけでもない」と、パブリッシャーのひとりはAmazonからのオファーについて説明してくれた。

ためらうパブリッシャー



こうした状況で広告を売るのは難しい。しかも、これはデザイン上の問題でもある。Amazonのフォーカスは、コマースとプライムのビジネスを成長させること。メディアエージェンシーとのミーティングでAmazonは、その広告在庫に限りがあることについて強調している。

収益を生むようなコラボレーションのポテンシャルがあるような状況では、Amazonのためにリソースを割くことを厭わないパブリッシャーもいる。シリアスイーツやシンプリーレシピスがAmazon Prime Nowを通じてレシピを購入できるようにしたのはそれだ。フェクシーのチームはAmazonのコンテンツ、テスト、ビジネス・インテリジェンス、そしてマーケティング部門と協働し、レシピを組み入れていき、適切な分量のレシピ商品がユーザーに購入されるように努力したという。

しかし、経済的な面でのインセンティブが明確ではないパブリッシャーにとっては、リソースを割くのは困難だ。特に動画への転向、Facebook対応で、多くのパブリッシャーがすでに経済的な痛みを感じているいま、そのためらいは大きい。

「最初はパートナーシップに飛びついてしまうかもしれない。しかし、時間が経つにつれてパブリッシャーは、もっと慎重になるだろう」と、パブリッシャーのひとりは語った。

Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)