今年の2月、平昌オリンピック出場を第1号として決めたアイスホッケー女子日本代表の”スマイルジャパン”。その中でも、”スマイルジャパン”らしく、愛らしい笑顔のヒロインとして注目を集めてきた足立友里恵選手に、平昌オリンピックに向けてチームの調子や目標を聞いた。


チームの雰囲気を含め、いい状態だと語る足立友里絵選手

 今回、ソチ大会に続いて2大会連続出場となったスマイルジャパンだが、ここまで”挫折”を味わい、悔しさをバネにやってきたと語る。

「一番の挫折は世界最終予選の最終戦で中国に敗れ、2010年バンクーバーオリンピックに出場できなかったこと。もうひとつは、2014年ソチオリンピックで1勝もできなかったこと。ソチのときは、『世界とのレベルの差は、あと一歩。自分たちもいけるかも』と思っていましたが、差は大きかった。初めてのオリンピックで自分たちの力を出せませんでした」

 だが、足立の心は折れず、アイスホッケーにかける思いはしぼまなかった。

「世界との差を肌で感じましたが、逆に、自分たちはやればできる、追いつくと思えた。それがソチの後やめられなかった理由。そこから4年間、上を目指してやってきました」

 1970年代、試合会場にファンが殺到し、シーズン中は何試合もテレビ中継されるほど人気を集めたアイスホッケーも、80年代に入り男子代表がオリンピック出場を逃し続けると一気に低迷し今日に至る。ましてや後発の女子ともなれば選手たちはマイナー競技ゆえの厳しさも肌で感じてきた。

「私自身は恵まれていたと思いますが、バイトに追われ練習に集中できない選手、仕事とホッケーどちらを選ぶか悩んでやめていった選手が大勢いました。そうした苦労を自分は知っている世代だから、先輩たちの夢も一緒に背負って戦ってきました。

 ソチではつらい経験もしましたが、オリンピックに出場することができてからは、女子アイスホッケーの環境もガラリと変わりました。私たちはそれを身近で見てきたからこそ、次は絶対に結果を残さなければならないんです」

 2014年のソチ大会に続いて自身2度目、アイスホッケー人生の”集大成”と位置づける平昌オリンピックでの目標を足立は「メダル獲得」と宣言した。

「ソチは出ただけで終わってしまいましたが、それでも『オリンピックは輝ける場所』だと思います。目標はメダル獲得です。最低でも予選リーグを突破し、決勝トーナメントへ行きたい。メダルを狙えるところには確実に来ています」

 平昌オリンピックの世界最終予選でチームは実力を発揮。今年2月、北海道で行なわれた世界最終予選で3戦全勝をマークしている。その後のヨーロッパ遠征、国際試合などを通しても、平昌へ向けてしっかり手応えをつかんでいるようだ。

「スピード感も上がっていて、4年前と比べたら間違いなくレベルアップしています。チームの雰囲気もよく、キャプテンに任せるだけでなくて全員が積極的に考え、行動し、チーム・ビルディングを心掛けるようになりました。今は上の選手から若手までみんながドンドン意見を言っています」

 今、スマイルジャパンは新しい戦術にチャレンジしている。味方が相手を押さえている状況なのか、相手にキープされている状況なのか。しっかり判断して、味方が押さえたと思ったら、すぐに反応してパックを奪いにいき、攻撃につなげるシステムだ。

「これまでより、かなり上の判断力とスピードが要求され、間違えたり、速くサポートできないとゴール前で相手の選手をフリーにしてしまいますが、これを全員が身につけたら攻撃力がアップし、自分たちは1段上へいけると信じています」

 個人的な課題は、さらなるスピードアップ。32歳となった今シーズンも、「まだまだ自分は成長できる。伸びシロがある」と足立は言い切った。

「体が小さいので、もちろんパワーもつけないといけませんが、やっぱり自分は動いてなんぼの選手。コンディションを上げて、もっと動ける体になっていけば、自然と本番でもやっていけるはずです」

 王子製紙で全日本選手権5連覇に貢献、日本代表としても1998年長野オリンピックで活躍した元王子イーグルス監督の山中武司が昨年7月、アイスホッケー女子日本代表監督に就任した。山中監督への選手たちからの信頼は厚い。

「監督は寝る間も惜しんで、全員の1プレー1プレーを切り取ったビデオを作り、それをもとに細かく指導してくれます。自分でも気になっていたプレーを指摘されるのでわかりやすいし、修正しやすい。アイスホッケーが今おもしろくなってきました」

 足立はゲン担ぎを一切しない。もし忘れてしまい、そのまま試合となったら気になって仕方ないからだ。心がけているのは、練習でも試合でも同じ気持ちでやること。誰かが見ていようといまいと、ダッシュ1本でも自分のチェックポイントを細かく意識してやる。そして、試合では、先発でもベンチスタートでも同じように集中して試合に入る。

「ベンチにいるときこそ指示の声、チームを盛り上げる声を出して、常にいっしょに戦っています。そうすると、いざ氷上に出ても、焦らずにプレーできますから。私の場合、思い切り声を出しているつもりなんですが、まわりからは『小さくて聞こえない』と時々言われてしまいますが……(笑)。

 それと試合前は、しっかりご飯を食べることも大切にしています。コンディションがよくないとご飯をおいしく、いっぱい食べられない。海外でもご飯がなかったらパンとかパスタとか炭水化物をしっかり食べて、元気に試合に臨まないとダメですからね」

 どれも基本的なことばかりだが、国内最高峰のリーグや、国際試合で数々の経験をしてきた足立が言うと重みがある。そんなベテランの頭には、平昌オリンピックのメダルへの道が既に鮮明に描かれているようだ。

「ライバルは予選ラウンドで戦うスウェーデン、スイス、韓国。初戦のスウェーデン戦、緊張するでしょうね。でも、それは相手も同じこと。監督を信じ、自分たちが今やっていることを信じて、オリンピックの環境を楽しんで100%力を出し切る。緊張していて力が出せなかったなんて、もうイヤ。一番悔しいですから。このチームは初戦乗り切れば、必ず上にいけます。そうすれば、メダルは自ずと見えてくる。まずは初戦の入り方です」

 最後に、アイスホッケーに魅せられ、夢中になり、20年以上続けてきた足立が、女子アイスホッケーを楽しむための観戦法をアドバイスしてくれた。

「アイスホッケーを見たことがある人、やったことがある人は必ずスピードと迫力が魅力と言いますが、私もそれにやられてしまってここまで来ました。攻守の展開の速さ、パックがゴールに飛び込む瞬間もワクワクしますが、ゴール裏の展開、攻めも守りも楽しいですよ。他の競技にはありませんから。女子は男子に比べてスピードが落ちますが、その分見やすく、パックを目で追うことができると思います。セットプレーも女子のほうがわかりやすいと思います。私はセンターフォワードなので、試合開始・再開のときに相手の選手と向かい合ってパックを取り合うフェイスオフをしますが、いまはそのプレーでのパック獲得率を高めることを一番に練習していますのでぜひ、お見逃しなく!

 平昌ではメダルが獲れるようにがんばりますので、応援よろしくお願いします」

【プロフィール】
足立友里恵(あだち・ゆりえ)/1985年4月26日、北海道札幌市生まれ。立命館慶祥高、早稲田大卒。SEIBUプリンセスラビッツ所属。
2014年ソチオリンピック出場(8位)。世界選手権トップディビィジョン2008、2009年出場、ディビジョン12003、2007、2012、2013年出場。アジア冬季大会2007、2011銀メダル獲得。2008〜10年全日本選手権3連覇。2012年最優秀選手賞受賞。



週刊ヤングジャンプ×Sportiva共同編集
「東京2020 パラリンピックジャンプ vol.1」
パラリンピアンへエールを送る足立選手も掲載!好評発売中!

詳しくはこちら>>

■冬季競技 記事一覧>>