専門誌や専門WEBの記者でさえまともにMTを操れない人が多い

 アメリカ人がMT車に乗れないという話は、本当だ。なぜなら、アメリカでは運転免許を取る際にMTの練習をまったくしないからだ。

 アメリカでは50州それぞれのDMV (運輸局)が道路交通法や道路車両運送法について独自の法案を持っている。そのため、州によって運転免許取得の年齢などの条件が大きく違う。ただし、免許の取得方法については筆記試験と実車による走行試験が行われ、その内容は50州でほぼ共通だ。

 この走行試験は、DMVの各支局に自らクルマを持ち込んで望む。DMVが準備する車両はなく、親や友達からクルマを借りてきて、それを使うというなんともアメリカンな発想だ。こうしたクルマはほぼ100%がATなのだ。

 また、ご存じの方も多いと思うが、アメリカには基本的に教習所はない。ドライビングレッスン業者はいるのだが、ほとんどの人は親が隣に乗って自習をする。日本では30万円近い授業料を支払って教習所に通うのは一般的で、運転免許試験場での”一発チャレンジ”で合格することは極めて難しいのは、皆さんご承知の通りだ。それと比べると、アメリカの運転免許は、なんとも”雑”だ。

 実際、筆者はこれまでカリフォルニア州とテキサス州で運転免許証を取得しているが、DMVでの走行試験の内容は、かなり甘い。

 さて、運転免許試験のために受験者が借りてくるクルマがATがほぼ100%なのは、アメリカで販売されているほとんどのクルマにMT設定がないからだ。

 まず、アメ車といえば、シボレー・タホなどのSUVや、乗用と商用の二刀流で重宝されているフルサイズピックアップトラックのフォードF150が代表例だ。そんなボディサイズのデッカイクルマではそもそもMT設定がない。

 また、乗用車ではトヨタ カムリ・カローラ、ホンダアコード・シビックなどC/Dセグメントでも基本的にMT設定はない。そして、アメリカ人が大好きなジャーマン高級車でも、ポルシェやAMGにMT設定がない。

 こうしたMT設定がないクルマが多いというのは、日本でも同じだが、田舎に行けば70代、80代、いや90代の高齢者が軽トラックのMTを巧みに操作している光景が見られる。

 一方で、アメリカでは高齢者は当然、運転の楽なATに乗るのが当たり前。さらに言えば、大手の自動車雑誌や自動車ウェブサイトの記者でも、”まともにMTに乗れない人”をよく見かける。広々した国土を、ゆったり気分でクルージングするのがアメリカンドライビング。そこにはMTで走るという発想が生まれないのだと思う。