火曜日のE-1選手権・中国戦でも前半途中から出場した井手口。いまやJリーグを代表するダイナモだ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 ガンバ大阪の日本代表MF、井手口陽介の周辺が騒がしくなっている。かねてから噂されてきたイングランドのフットボール・チャンピオンシップ(実質2部)、リーズ・ユナイテッドへの移籍が、いよいよ現実味を帯びてきたのだ。
 
 12月11日には『ESPN』英国版も一報を流した。「ヨウスケ・イデグチが日本を離れてリーズへ旅立ち、ワールドカップの(日本代表)選出にリスクを負う覚悟を固める」と題して、以下のように状況を説明している。
 
「土曜日の東アジア選手権・北朝鮮戦で日本の決勝ゴールを挙げたイデグチは、1月のリーズ移籍に向けて前進した。ただし、ワークパーミット(労働許可証)を得るための条件は満たしておらず、他クラブにレンタルで出される可能性が高い。2016年のJリーグ・ベストルーキーはそのリスクを承知の上だ。もしヨーロッパで出場機会に恵まれなければ、ロシア・ワールドカップのピッチに立つチャンスを失なうかもしれない」
 
 同局は、「あと半年、ワールドカップが終わるまで待ったほうがいいと言う人もいるけど、自分の思ったことに真っすぐに行きたい。少しでも早くです」という井手口自身のコメントも紹介。さらにリーズは夏にも獲得を模索していたと明かし、今回の移籍には元日本代表で、現在クラブのアジア地域・強化スカウトを担当する藤田俊哉氏の存在が関係しているのではないか、とも記している。
 
 G大阪もリーズ側も正式な声明を発表していないだけに、現状は憶測の域を脱しないが、もし移籍が実現するとなれば、やはり気になるのが労働許可証の問題だ。
 
 EU外選手の取得基準はこうだ。過去2年のFIFAランキング平均が31〜50位である日本の場合、代表選手は同じく過去2年における公式戦の75%以上に出場していなければならない。仮に2016年1月から2017年12月の代表戦を対象とし、井手口が現在開催中のE-1選手権全試合に出場したとする。該当試合は23試合で、今年6月のシリア戦でA代表デビューしたばかりの井手口はそのうち11試合に出場する計算となる。およそ48%だ。仮に移籍がワールドカップ本大会後で、さらに10試合程度が消化され、すべて出場したとしよう。合計29試合で21試合に出場。それでも約72%とわずかに及ばないのである。
 
 あとは高額移籍金が基準額(1000万ポンド=約13億円)を超えるケースや、高額年俸で高額納税が見込める選手などにも発給され、クラブがその価値を英国政府に対して保証すれば、特例が下る場合もある。かならずしもひとつのルールに縛られてはいないが、まだ21歳と若い井手口にとって、イングランドという入り口はなかなかの鬼門なのだ。
 
 そこで起こりそうなのが、リーズに完全移籍したうえで、他国のクラブへ期限付き移籍するケースだ。『ESPN』やリーズの地元紙『Yorkshire Evening Post』、さらには英国営放送『BBC』などもその可能性が高いと見ている。
 では、どんなクラブが候補に挙がるだろうか。この半年でリーズを取り巻く環境は激変しており、実にさまざまなアプローチが想定できる。
 
 筆頭候補と言えるのが、リーガ・エスパニョーラ2部のクルトゥラル・レオネサだ。日本では馴染みの薄い名だが、今シーズンに3部から昇格した創立1923年のクラブ。今年7月、若手育成の場確保とスペイン・サッカー界とのパイプ作りを意図するリーズと、パートナーシップ契約を結んだ。さっそく今年の夏に獲得した世代別オランダ代表の経験を持つMFワシム・ブーイを、同クラブに貸し出している。
 
 イタリアも有力な武者修行の場だろう。今年5月にリーズを買収したのが、大手投資ファンドを展開するイタリア人実業家のアンドレア・ラドリッツァーニ現会長。かつてインテルを傘下に収める中国・蘇寧グループのアドバイザーを務めるなど、カルチョとの結びつきは当然深い。セリエAまたはBのクラブに半年間レンタル移籍しても不思議ではない。
 
 先述の藤田氏がトップチームのコーチを務めていたVVVフェンロをはじめとするオランダ・クラブ、あるいは、ガンバ大阪にレンタルで貸し戻しというシナリオも十分あり得る。
 
 瞬く間にハリルジャパンに欠かせないキーマンへと台頭し、一躍時の人となった井手口陽介。E-1選手権終了後に下されるだろう若武者の決断に、注目が集まる。