EAFF E-1選手権の第2戦で中国と対戦したなでしこジャパン。韓国戦の先制点に続き、2戦連続となる田中美南(日テレ・ベレーザ)のゴールによって1-0で勝利を手にした。


右に左にと走りまわって、懸命に食らいついていた隅田凜

 前途多難だ――。この日試した4-1-4-1システムは、これまでにもメンツは違えどトライをした経験がある。今のところ、うまくいったためしがないことを踏まえ、多少の混乱は計算のうちとしての起用だったはずだ。だがピッチ上の混乱は想像をはるかに超えていて、結果、中国に狙いどころをより明確にされてしまうことになった。

 最終ラインは初戦と同じで、中盤2枚は阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)と猶本光(浦和レッズL)、アンカーに隅田凛(日テレ・ベレーザ)が入った。1トップは調子を上げてきている田中だ。ヨルダン遠征でも組んできた阪口・猶本のボランチペアは、まだ完成形とまではいえないなか、どうアンカーとバランスを取って組み立てていくのかが最大のポイントだった。

 いつもは、引き気味なポジションで若手の攻撃力を支えている阪口が積極的にバイタルエリアに絡んでいく。田中があえてポジションを落とせば、代わりに左サイドから中島依美(INAC神戸)が最前線へ顔を出す。流れが日本に傾く20分、中央まで入り込んでいた中島が相手DFの間を抜けてきた田中の前へ絶妙なスルーパス。これをしっかりと田中がモノにした。この先制点を受けて、おのずと守備もハマっていくのではないかと期待したが甘かった。

 逆に「危ないエリアでプレーさせない」という中国の狙いが攻守にハマってしまった。その原因は皮肉にも4-1-4-1システムによるところが大きかったように思う。そもそも阪口、猶本、隅田の3人が中盤で揃う機会はこれまでなかった。コンビからトリオへの移行は簡単ではない。

「前の2人をうまく動かさないといけなかったけど、うまくいかなかった」とは隅田。彼女の左右のスペースは両サイドとボランチとの連係なくしては埋めることはできない。守備に大きな課題を抱えている、今大会の両サイドバックのスペースと合わせて考えれば、その危険エリアはさらに広がる。中国はそこを徹底的に突いてきた。それでも隅田は食らいついていた。右サイドにカバーに入ったかと思えば、次の瞬間には左サイドで事が起こっている。ど真ん中を切り裂かれることもあった。

「とっさに判断しなければならないことが本当に多かった」と反省しきりの隅田は、まだ身体も成長段階にある21歳。ユース世代からボランチでのプレーを目指し、そのために国際大会でも負けないコンタクトスキルを意識してきた隅田だったが、壁は高かった。けれど、中国選手に競り負けることがあっても最後まで足を伸ばして、少しでも相手の軸をブレさせて、ボールの軌道が逸れるよう最後の一瞬まで食らいついていた。この努力を怠らなければ、届く距離が数センチずつ必ず伸びてくる。隅田はここからが勝負どころだ。

 攻撃では、1トップの田中が格好の標的になっていた。ボールを持てばすぐさま複数人に囲まれる。それは、単純なサイド攻撃では打開できないことを意味していた。田中は幾度もアップダウンを繰り返し、ギャップを生み出そうとしていた。そこへ阪口や中島が絡み、なんとか左サイドは形になってきた。

 しかしその結果、居場所がなくなったのが猶本だった。阪口、隅田のポジションから見ても、1トップの田中をサポートするのは攻撃を得意とする猶本が適任だった。ところが、なんとか相手の間でボールを受けようと動くも、ボールが出てこない。左サイドが仕掛かれば仕掛けるほど、右サイドは動きを失っていった。前半の右サイドはほとんど機能しなかったと言っていい。もったいない45分になってしまった。

 前半の混乱は複数の要因によってもたらされたものだったが、通常通りの4-4-2に戻した後半が改善されたかといえばそうではない。無駄なバタつきがなくなった分、安定したように見えるが、今度は落ち着き過ぎた。中国が食いつく範囲を絞っているために、簡単に侵入を許してはもらえない。

 ようやく万屋美穂(ベガルタ仙台L)、大矢歩(愛媛FC)らのオーバーラップが見られるようになったが、日本のパターンを掴んできた中国守備陣はフィニッシャーを一気に潰してくる。日本は籾木結花(日テレ・ベレーザ)を投入するなど、さらなる機動力でゴールを狙うも最後の一手を欠いた。

 それでも終了間際には阪口が奪ったボールを前線へ出し、素早く反応した岩渕真奈(INAC神戸)がフリーで受けるチャンスを演出。しかし岩渕のシュートは枠を外れていった。これは決めなければいけないゴールだった。結局、このままホイッスルが鳴り、日本は田中の挙げた1ゴールを守って逃げ切った形になったが、選手たちの表情は一様に重かった。

 終わってみれば、よくぞ田中のゴールが実ってくれていたと思わずにはいられない。4-4-2に戻してからは何が何でも追加点を奪わなければならなかった。これまで重ねてきたことをここで出さなければならなかったはずだ。中国のプレスで潰されるようであれば、世界と肩を並べることなど到底かなわない。

 唯一の明るい材料は、無失点に抑えたことだろう。これまでのなでしこならば、得点後や終了間際という集中力を要するタイミングでゴールを許していたかもしれない。しかし、この日はボールホルダー複数人で囲い込む場面もしばしば目にした。もちろん、そこまでにボールを入れさせないことが望ましいが、それでも同じタイミングで複数人が反応を示し、結果防ぎ切ったことは、取り組み始めたばかりのラインコントロールなども含めて、この90分で形になったもののひとつだ。

 ただ、ピンチのほとんどが攻撃を仕掛ける際の不用意なパスミスなどに起因していることはいただけない。かねてよりの課題だが、未だ改善の兆しが見えないのは、指揮官としても頭が痛いところだ。「……我慢ですね」。試合後に高倉麻子監督が思わずもらした言葉に重みを感じる。

 中3日で迎えるのは無敗同士でのタイトル争いとなる北朝鮮との最終戦。どんな形でも無敗でここまで勝ち切っていることは紛れもない事実だ。美しいサッカーでなくていい。泥臭くても貪欲にゴールを奪う、これが”自分たちのサッカーだ”というものをそろそろ見せてくれてもいい時期だ。

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