日本カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたボルボ「XC60」と、自動車ジャーナリストの小沢コージ。ちなみに小沢コージはXC60に1点入れている。

写真拡大

日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会は12月11日、「2017―2018日本カー・オブ・ザ・イヤー」にスウェーデンのボルボ・カー日本法人のSUV(多目的スポーツ車)「XC60」を選んだ。

輸入車の受賞は独フォルクスワーゲンのゴルフ以来、4年ぶり2度目。ボルボの受賞は史上初となった。この受賞を日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員でもある自動車ジャーナリストの小沢コージがぶった斬る!

* * *

「大波乱!」ってか正直、違和感ありまくりだった。今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーのイヤーカーに輝いたボルボXC60のことだ。「別にカー・オブ・ザ・イヤー日本に輸入車、それも北欧車が選ばれたっていいじゃん? いいクルマだったらさ」と思う人もいるだろう。ましてやボルボは今、ブランディングをやり直してる最中で、見事にイメージアップしているし販売台数も増えている。そういう意味では順当かもしれない。実際、いいクルマだし。

だが、小沢の考え方はちと違う。基本、車両価格で500万円以上するクルマに最高点の10点はまず入れない。よっぽどのスーパースポーツや革新カーで日本の自動車の価値を変えたならともかく、その値段で本当に今年の日本を代表するクルマなの?と疑問に思うからだ。

そもそも、輸入車は長らくこの日本の世知辛いマーケットにあって新車販売台数は10%を超えていないのだ。最近伸びているといわれているが、2016年の新車販売台数だけで見ると9.1%。軽自動車を含めると6%に落ち込む。ましてやボルボはブランドとしてはドイツ御三家(メルセデスベンツ、BMW、アウディ)より下がる。当のXC60は今年売れた数が日本で約1700台。トヨタのクラウンが毎月に売る数の約半分にしか過ぎない。そりゃそうだ。なんせ事実上、600万円から始まるクルマなんだから。

正直、小沢の考え方は古いのかもしれない。だが、価格がなんでもいいんだったら、それこそ約1億4千万円の「ラ・フェラーリ」も日本カー・オブ・ザ・イヤーでアリになっちゃう気がする。フェラーリが今年の日本カー・オブ・ザ・イヤー!?って、なんか違くない? 「リッチマンカー・オブ・ザ・イヤー」とか「イタリア版カー・オブ・ザ・イヤー」ならいいけどさ。

ちなみに、2013年の日本カー・オブ・ザ・イヤーに輸入車初となるVWゴルフが選ばれた時は違和感がなかった。なんせ250万円台から始まるクルマだったので。もちろん、いくらからカー・オブ・ザ・イヤーに相応(ふさわ)しい?って線引きはスゴく難しい。今回、小沢が推したトヨタ・カムリも329万円からと決して安くはない。昔のカムリは安かったけど。そもそも大衆車を選べばいいんだったら軽の中で決めれば?となるのかも。

それと、これは大きな問題を含んでいる。1990年〜2000年代ぐらいまでは国産車で300万円ぐらいまでで面白いクルマがたくさんあった。高級セダンもあったしスポーツカーもあったし、4WDもあった。だが、今はほとんどなく、日本車はもっぱらエコカーメーカーになってしまい、軽かハイブリッドコンパクトかミニバンしか作ってない。だから今年はレクサスLCに期待だったけど、それ以外はぶっちゃけほぼ輸入車と言っていい。

つまり、今の二極化時代にあって貧乏系大衆車=日本ブランド、お金持ち高級車=輸入ブランドという線が明確に引かれつつあるのだ。実はこっちのほうが由々しき問題なのだ。よって、そもそもクルマ好きから始まった自動車ジャーナリストが輸入車に傾くのもわからなくはない。実際、世界的に面白い自動車分野はもしや400万円以上にあるのかもしれないし…。

とはいえ、それが本当に今の日本を代表するクルマなのか?ってなると、小沢的には疑問です、マジで!

(取材・文/小沢コージ 撮影/本田雄士)