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既報のとおり、MicrosoftはQualcomm Snapdragon Tech Summitで、ARM版Windows 10搭載PCを発表した。ハードウェアスペックについては各記事をご覧頂くとして、本稿ではARM版Windows 10と搭載PCについて、いくつの疑問を紐解いてみたい。

最初の疑問はWindows 10 SをプリインストールOSとしている点だ。改めて述べるまでもなくWindows 10 SはUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリケーション(以下、アプリ)しか動作せず、Office Home & Business 2016もMicrosoft Storeからダウンロードしなければならない。

筆者も多くのアプリがMicrosoft Store経由で管理できれば便利であると考えているものの、デスクトップアプリの代替となるUWPアプリは数少なく、いまなおデスクトップアプリが稼働する環境は必要だ。

Windows 10 Sの理由はどこにあるのか。MicrosoftのEVP Windows and Devices Group, Terry Myerson氏は公式ブログで「『Always Connected PC』は低コストで新しい働き方を実現」する存在と定義しつつ、3つの特徴を挙げる。

「常にネットワークに接続したPCは、チームが社内や顧客訪問中を問わず、通勤中でも従業員の創造性を高める」と新しい働き方を可能にするという。また、セキュリティ面についても「社外でパブリックなWi-Fiスポットに接続すると、企業データの漏洩(ろうえい)につながるからこそ、安全なネットワーク接続が欠かせない」と、内蔵したLTEモデルをアピールした。

そして、「社内にある無線LAN環境の保守や更新に数百万ドルを費やしている。米国では98%が4Gネットワークでカバーされ、今後は5Gネットワークにシフトしていく」と社内のネットワーク環境を構築するよりも、モバイルネットワークやVPN接続を利用して社内ネットワークに接続した方がコストダウンにつながると説明する。

このようにARM版Windows 10と、モバイルネットワークで実現する常時接続環境を備えたAlways Connected PCは、対象が一般消費者ではなく法人ユーザーであることが見て取れるだろう。先頃発売した「Surface Pro Advanced」も法人チャネルに限定し、一般消費者による購入は手間がかかる。

つまりARM版Windows 10搭載PCは、法人をターゲットにしているからこそ、Windows 10 Sでよいという判断をMicrosoftは下したのだ。必要であれば、Windows 10 SからWindows 10 Proへの有料アップグレードパスを選択すればよい。

さて、もう1つの疑問は「これまでのx64 PCと同じようにARM版Windows 10搭載PCを使えるか」である。例えばASUS NovaGoは30日間のスタンバイと22時間(いずれも公表値)の稼働を実現し、利用スタイルはPCというよりもスマートフォンに近い。新たに加わったプロセス単位の電源管理機能も功を奏するだろう。

だが、ネイティブなWin32コードをARMに変換する処理は、いずれにせよボトルネックとなる。仮に業務で使うアプリが従来のデスクトップアプリのみといった場合、通所のWindows 10搭載PCと同等のパフォーマンスを期待するのは難しい。Desktop Bridgeを使ってデスクトップアプリをAppx化しても答えは同じだ。

この観点から見れば、ARM版Windows 10は、"稼働時間を優先し、ある程度パフォーマンスを犠牲にした存在"となる。日本国内での販売展開などはいまの時点で不明だが、Myerson氏が述べたように法人かつ外回りの多い営業職がターゲットであり、個人や学生が使う2-in-1 PCに変わる存在ではないのだ。

Microsoftが2-in-1 PC市場を開拓し始めから5年が経つ。同社はARM版Windows 10で新たなPC利用スタイルを提示したが、同時に我々利用者もこれまでとは違う利用スタイルの想定が求められているのだろう。

阿久津良和(Cactus)