インスタで一躍人気者になった動物もいる。写真は猫のメリッサ。(AFLO=写真)

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インターネットが一般に本格的に普及し始めてから約20年。この間、少しずつ、人々の意識は変わり続けている。そして、社会のあり方も。

一つひとつの事象を見ると小さなことのように思われるけれども、全体として見ると、かなり意識の変化が起こっているように思う。それを把握して初めて、よいビジネスもできるし、未来も見通すことができるのだろう。

先日、ある作家の方とお話ししていて、面白いことを質問された。

「なぜ、ネットでみんな、こんなもの食べたとか、ここに行ったとか、ああやって自分のプライバシーを公開しようとするのかしら」

好奇心にあふれていることで有名な方。でも、SNSなどはあまりおやりにならないとのこと。

確かに、フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどでプライベートな情報を発信することは、すっかり日常の光景になった。なぜ、そのようなことをやるようになったのかを考えると、ネットと私たちの関係の今と未来が見えてくる。

まずは、たくさんの人が個人情報を発することで、ネットが全体として「進化」するという点。時折、「グーグル先生を賢くするために私たちは書き込みをしている」という言い方がされる。確かに、多くの人がテクストや画像、動画を公開することで、検索エンジンなどの機能は高まっていく。

これから主流になるだろう人工知能を用いたネット上の様々なサービスも、ユーザー側が情報を発信し、「ビッグデータ」が蓄積されて初めて高度化できる。書き込みをすることで「グーグル先生」が賢くなる。そして、その便益は私たち全員が受け取る。

もう1つ見逃せないのが、個人情報を公開することで発信者の社会的な存在感が上がり、結果として「得をする」という点である。

タレントのような職業では、SNSなどで「プライベートを切り売りする」ことが仕事につながる、ということはいわば常識になった。しかし、一般の人でも似たような傾向がある。もしブロガーやユーチューバーとしての収入があれば、直接のメリットとなる。そこまでいかなくても、例えば友人とつながることで交友関係の輪が広がったり、素敵な出会いがあったり、場合によっては仕事をもらえるかもしれない。

何よりも、「ネット上の存在」がなければ社会的に存在しないのと同じ、とさえ言われかねない現代の風潮の中で、自分の存在を確認するために、積極的にプライバシーを発信することが増えている

脳の働きから見ると、「自己」はもともと社会的なつながりの中で形成されるものである。最近では、そのような傾向がより強まっているのかもしれない。

最近、「インスタ映え」という言葉をしばしば目にする。インスタグラムで写真をシェアしたときに高く評価され、拡散されるような素材、構図、写真の撮り方を指す。

飲食店などでも、「インスタ映え」を考えてメニューを開発する店も出てきた。SNSで拡散されることが、評判を高め、宣伝になるというわけである。

ビジネスでも、ネットでのインパクトを考えなければならない時代。SNSは日々、ネットリテラシーの練習のための「道場」になった。

(脳科学者 茂木 健一郎 写真=AFLO)