【米ビルボード年間アルバム・チャート】驚異的ロングヒットとなったケンドリック・ラマー『DAMN.』首位、ブルーノ・マーズ自身最高位の2位

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 2017年の年間ビルボード・アルバム・チャートは、ケンドリック・ラマーの『DAMN.』がNo.1に輝いた。

 2016年の【第58回グラミー賞】で<最優秀アルバム賞>にノミネートされた3rdアルバム『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』から2年振り(2015年リリースのコンピレーション・アルバム『アンタイトルド・アンマスタード』を含めると1年振り)、通算4作目となるスタジオ・アルバム『DAMN.』は、2017年度では2番目となる初動603,000ユニットを獲得し、初登場から3週の首位をキープした後、およそ4か月間にわたりTOP3にランクインするという驚異的なロングヒットを記録した。これまでの年間チャート最高位は、2015年に『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』が獲得した16位で、TOP10入り、首位獲得は初の快挙。本作からは、年間ソング・チャートで4位をマークした初の全米No.1獲得曲「ハンブル.」や「DNA.」(年間62位)、リアーナとのデュエット曲「ロイヤルティ.」などのヒット曲が輩出された。集計期間終了の11月時点で、アルバムは84万枚を売り上げ、ストリーミング・ポイントを含むユニット数は200万を突破している。

 2位にランクインしたのは、ブルーノ・マーズの3rdアルバム『24K・マジック』。年間チャートの成績を振り返ると、デビュー・アルバムにしてブレイク作となった1st『ドゥー・ワップス&フーリガンズ』が、2011年の年間チャートで11位、「ロックド・アウト・オブ・ヘヴン」など2曲のNo.1ヒット含む2nd『アンオーソドックス・ジュークボックス』は、発売翌年の2013年に4位を記録したが、意外にも年間アルバムTOP3入りは本作が初となる。意外なのは、ウィークリー・チャートで1位を獲得していないことも、だ。初動ユニット数は231,000と悪い数字ではなかったが、同日に発売されたメタリカの『ハードワイアード...トゥ・セルフディストラクト』に阻まれ惜しくも初登場2位となり、首位には届かないままピークを終えた。しかし、年間ソング・チャート3位の「ザッツ・ホワット・アイ・ライク」やタイトル曲のヒットもあり、TOP10に30週以上ランクインし続け、アルバムの売上は100万枚を超える大ヒットを記録。また、本作の初動ユニット数がメタリカに及ばなかったのには、収録曲が9曲と他のアルバムより少なく、ストリーミング・ポイントが弱かったことも原因として挙げられる。逆に、9曲のストリーミング・ポイントで年間2位を獲得したことは快挙といえる。

 タイトル曲が年間ソング・チャート20位をマークした、ザ・ウィークエンドの『スターボーイ』は3位にランクインし、年間アルバムTOP3はブラック勢が独占した。本作『スターボーイ』は『24K・マジック』の翌週(2016年11月25日)にリリースされ、週間348,000ユニットを獲得して堂々のNo.1デビューを果たした後、6月までTOP10にランクインし続け、半年間で200万ユニットを突破した。ザ・ウィークエンドは、昨年の年間アルバム・チャートでも2ndアルバム『ビューティー・ビハインド・ザ・マッドネス』が9位にランクインし、2年連続のTOP10入りを果たしている。

 初動451,000ユニットを獲得したエド・シーランの大ヒットアルバム『÷(ディバイド)』は、4位にランクイン。本作からは、年間ソング・チャートで1位に輝いた「シェイプ・オブ・ユー」をはじめ、「キャッスル・オン・ザ・ヒル」や現在ヒット中の「パーフェクト」など、シングル曲が次々とヒットしていて、ストリーミング配信サービスSpotifyではトータル63億回視聴され、今年最もストリーミングされたアルバムと発表された。3月3日の発売以降、全米・全英チャートをはじめ、世界各国のアルバム・チャートで1位を獲得し、ワールド・セールスは700万枚を記録。アメリカでは年間首位を逃したが、200万枚を突破したイギリスなど1位を獲得する国も多いだろう。2014年リリースの前作『x(マルティプライ)』は、イギリスやオーストラリアで年間1位に輝き、アメリカでも2015年の年間チャートで2位にランクインした。

 スタジオ・アルバムでもミックステープでもない、“プレイリスト”として発売したドレイクの『モア・ライフ』は5位にランクインし、昨年の年間アルバム・チャート2位に輝いた『ヴューズ』に続き、2年連続のTOP10入りとなった。プレイリストと命名しただけあり、発売初日で6000万回を超える再生回数を記録し、初動505,000ユニットのうち257,000がストリーミングによるポイントと、セールスをストリーミングが上回る結果となった。集計期間までに180万ユニットを獲得しているが、その内アルバムの売上はわずか35万枚程度で、ほとんどがストリーミングによる売上(ポイント)だった。前作『ヴューズ』は2017年に入ってからも上位にチャートインし続け、年間チャートでは13位にランクインした。ドレイクの他にも、2016年の年間チャート首位に輝いたアデルの『25』は今年26位、5位にランクインしたリアーナの『アンチ』は23位、前年6位のトゥエンティ・ワン・パイロッツ『ブラーリーフェイス』は17位に、それぞれ2年連続で上位にランクインしている。

 今年の年間チャート7位にランクインした、ポスト・マローンのデビュー作『ストーニー』や、8位に続いたミーゴズの『カルチャー』も、ドレイクと同じようにストリーミング・ポイントを稼いで上位にランクインしたアルバム。TOP10以下でも、15位のフューチャーや18位のトラヴィス・スコット、20位のビッグ・ショーンなどヒップホップ勢のアルバムは、ストリーミングがユニットの大半を占めている。フューチャーは、15位のアルバム『フューチャー』と、37位の『HNDRXX』の2作がランクインしているが、この2枚は今年2月に2週連続でリリースされ、同じアーティストによる別のアルバムがそれぞれ初登場1位を獲得するという、ビルボード史上初の快挙を成し遂げた。これも、ストリーミング(視聴回数)によるポイントがアルバムの売上に加算されるようになった、集計方法の変更によって実現されたこと。

 一方、ストリーミングによるポイントは少なく、アルバムの純粋な売上で年間チャート上位にランクインしたアルバムもある。それが、6位の『モアナと伝説の海』や、9位のブロードウェイ・オリジナル・キャスト盤『ハミルトン』、11位にランクインしたドリームワークス・アニメーション『トロールズ』など、映画のサウンドトラックだ。また、ブルーノ・マーズから首位を勝ち取ったメタリカの『ハードワイアード...トゥ・セルフディストラクト』(12位)や、最新チャート(2017年12月16日付)で2位まで再浮上した、ペンタトニックスの『ペンタトニックス・クリスマス』(16位)、2016年の【グラミー賞】で<最優秀カントリー・アルバム>を受賞した、クリス・ステイプルトンの『トラベラー』(19位)など、ロックやカントリー系のアーティストも、セールスがストリーミングを圧倒的に上回っている。主に若者が聴くブラック・ミュージックはストリーミングが強く、年配層が購入するロックやカントリー、ベテラン・シンガーのアルバムは、セールスがメインとなる。しかし、ストリーミングの弱いアーティストは上位にランクインし辛い傾向にあり、この集計方法に異論を唱えるチャート・マニアも多い。

 前述の『ハミルトン』は【第71回トニー賞】にノミネートされたことで、『トロールズ』は 【第89回アカデミー賞】でジャスティン・ティンバーレイクが主題歌「キャント・ストップ・ザ・フィーリング!」を披露したことで、アルバムのヒットに繋がった。注目度の高いアワード(グラミー賞など)でノミネートや受賞、もしくはパフォーマンスしたアーティストの作品が、再び売上を伸ばすのも毎年の傾向といえる。ただ、ノミネート作品などが必ず大ヒットするという確約もなく、【アカデミー賞】で最多6部門を受賞した『ラ・ラ・ランド』のサウンドトラックは、年間53位と大ヒットには至らなかった。先日、2018年1月28日(現地時間)に開催される、【第60回グラミー賞】のノミネート作品が発表されたばかりだが、<最優秀アルバム賞>にノミネートされた、チャイルディッシュ・ガンビーノの『アウェイクン、マイ・ラブ!』(年間32位)や、ジェイ・Zの新作『4:44』(年間36位)などは、再ヒットする可能性が高い。

 シングル同様、ヒップホップ/R&B系のアーティストが上位を独占した、2017年の年間アルバム・チャート。2018年も引き続きブラック・ミュージックがチャートを支配するのか。2018年の集計は、テイラー・スウィフトの新作『レピュテーション』が2017年最高となる初動1,238,000ユニットを獲得し、3週連続のNo.1を獲得したところからスタートしている。


Text:本家一成

※関連リンク先の米ビルボード・チャートの掲載は、12月12日15時以降予定となります。

◎【Billboard 200】2017年年間チャートTOP10
1位『DAMN.』ケンドリック・ラマー
2位『24K・マジック』ブルーノ・マーズ
3位『スターボーイ』ザ・ウィークエンド
4位『÷(ディバイド)』エド・シーラン
5位『モア・ライフ』ドレイク
6位『モアナと伝説の海』サウンドトラック
7位『ストーニー』ポスト・マローン
8位『カルチャー』ミーゴズ
9位『ハミルトン』サウンドトラック
10位『4・ユア・アイズ・オンリー』J.コール