プログラマティックをめぐる不透明な取引をめぐってパブリッシャーたちはテックベンダーを批判している。しかし以前、アドネットワークで勤務し、現在は中規模パブリッシャーで働くプラグラマティック担当者によると、パブリッシャー自体もアドリフレッシュ、ビッドプーリング、トラフィックアービトラージといったトリックを使って、システムを逆手に取ろうとしているという。

匿名を条件に業界の舞台裏について正直に語ってもらう「告白」シリーズ。本稿では、広告収益を増やすためにパブリッシャーたちがどのようなトリックを使って、プログラマティックを逆手にとっているか、パブリッシャーのエグゼクティブに語ってもらった。

以下、読みやすさのために若干の編集を加えてある。

――パブリッシャーたちが使っているトリックがあると言った。アドリフレッシュから説明してくれないか



(表示されているページ上の)広告の更新(リフレッシュ)を行うことで、彼らのページから収益を増やそうとしている。大きいパブリッシャーたちは閲覧されている広告だけ更新させることで、倫理的な問題を回避している。しかし、テック能力が無くて、長期的な在庫の価値というものを考えないパブリッシャーたちは、閲覧されていようがいまいが関係なく、ページ上のすべての広告を更新させてしまう。15秒や20秒の間隔をおいて広告を次々新しいものに切り替えていく、ということを1分ほどするのだ。それによって20%から30%の追加の広告収益となる。広告主たちが騙し取られることでパブリッシャーは収益を上げることができる。

――ビッドプーリングとは?



ビッドプーリングはアドリフレッシュと関連している。パブリッシャーがエクスチェンジAに対して広告リクエストを出すと、エクスチェンジAは入札を提示して来る。それから、パブリッシャーはエクスチェンジBにも同じリクエストを出す。そうするとエクスチェンジBも入札を提示してくる。これでパブリッシャーは2つ以上の入札をオプションとして得ることができる。もしもエクスチェンジBからの2番目に高値な入札が勝ち取らなかった場合でも、その入札をブラウザにキープして、決まった時間が経ったあとにそのページ上に表示させる。これによってリフレッシュするために、再度広告リクエストを出すということをせずに、代わりに(ひとつ前のラウンドにおけるエクスチェンジBからの)2番目に高値の入札を使うことができる。それが最初は勝ち取った入札ではなくてもだ。

――つまりオークションのルールをパブリッシャーたちが決めていると?



そうだ。ビッドプーリングは広告主にとっては非常にタチが悪い。というのも広告主はサイトを訪れたビューワーが最初に目にする広告として入札をしているわけで、ページが2回も3回も更新されたときに表示された広告として出しているわけではないからだ。

――サプライサイドやデマンドサイドのプラットフォームは、アドリフレッシュやビッドプーリングをトラッキングできないのか?



トラッキングは非常に難しい。あるパブリッシャーが数年間行った結果、見つかったのは1度だけ、というケースを知っている。

――それは技術的な難しさによるのか、それとも怠慢から来ているのか?



完全に怠慢が理由だ。サプライサイドプラットフォームはこういった行為を取り締まるモチベーションがない。パブリッシャーが使う広告の数が増えるほど、彼らも収益をあげるからだ。ログレベルのデータをより完全に検査すれば、見つけるのは難しいことではない。アップネクサス(AppNexus)のように、サプライサイドプラットフォームのなかにもこういった行為をちゃんと取り締まって、違反者をブラックリスト化している人はいる。アドテクはもっと人間によるチェックが必要だ。

――有料のトラフィックアービトラージは、アドリフレッシュやビッドプーリングのように悪質なものなのか?



そんなことはない。多くの人が行っている。パブリッシャーたちはコンテンツレコメンデーションのベンダーやFacebookに1クリックいくら、という契約で支払い、ユーザーたちをサイトへと誘導している。そこでディスプレイ広告を見せるというわけだ。パブリッシャーが支払う額とその効果を考えると、コンテンツレコメンデーションは小さいマージンにしかならない。けれども、それをアドリフレッシュやビッドプーリングと組み合わせることで、コンテンツを追加することなく、常にマージンを増やすことができる。

――それはズルい



また、オーガニックトラフィックに対しては隠しておいて、お金を支払って誘導したトラフィック経由のユーザーにだけ、広告がぎっしり詰まったレイアウトを表示するという手法も行われている。これによってマージンを増やしている。パブリッシャーがエクスチェンジやサプライサイドプラットフォームによるチェックを受けるときには、ベンダーたちがこういった広告ばかりで、コンテンツの無いレイアウトを見つけることは難しい。プラットフォームがこのレイアウトを発見したら、そのパブリッシャーを承認はしないかもしれない。

――こうした行為は、パブリッシャー業界では公然の秘密なのか?



だと思う。何年か関わった人であればクオリティの高いパブリッシングビジネスがどんなもので、トラフィックにおいて鞘取り(アービトラージ)のようなことをしているビジネスがどんなものか、見分けがつく。システムを悪用している人間にとっては、ひとつのサイトがダウンしても気にしない。ほかにたくさんのサイトがあるからだ。

――ほとんどのパブリッシャーがこういったトリックを、少なくともひとつは使っているものなのか? それとも悪質な、クオリティの低いパブリッシャーだけが行っているのか?



ほとんどがロングテールの、クオリティの低いパブリッシャーだ。しかし、彼らが悲しいことに非常に大きなボリュームを占めている。非倫理的なアドリフレッシュ行為は、大手パブリッシャーにおいても驚くくらいの規模で行われている。

――ads.txtはこれを軽減する助けになるのか?



一定の助けにはなるだろう。けれども、質の悪いパブリッシャーがads.txtをページに持っているのも見たことがある。

――業界としては何ができるのか?



最終的にはエクスチェンジとサプライサイドプラットフォームがちゃんと在庫のクオリティを保つことが重要だ。しかし、エクスチェンジのほとんどが量しか気にしないのが現状だ。広告クオリティにも真剣に取り組んでいるというところがあっても、それは大手パブリッシャーのクライアントの手前そう言っているだけだ。在庫が小さいロングテールのパブリッシャーに対しては、エクスチェンジは質の低い広告しか提供しないのが普通だ。

――バイサイドではどうなのか?



エージェンシーとデマンドサイドプラットフォームは、中規模のパブリッシャーにももっとチャンスを与えるべきだ。彼らのなかには広告主と直接ビジネスをやりたがっているところがある。そして彼らは質の高い在庫を持っている。でもスケールが大きくない、もしくは誰でも知っているようなブランド名がない、といった理由でバイヤーたちと直接のコネクションを築くのが難しい。

Yuyu Chen(原文 / 訳:塚本 紺)