社内でのリーダーシップを発揮する前に…(写真:Choreograph / PIXTA)

かつて中間管理職・マネジャー職の悩みといえば、純粋に「仕事」にかかわるものがほとんどでしたが、今はダイバーシティ(多様性)が進展しています。自分より年齢や経験が上の人間をマネジメントしたり、海外からの人材を活用する必要に迫られたりするケースや、育児や親の介護などを行う社員のために、部署全体でプライベート上の配慮をしなければならない状況も増えています。

ところが、日本ではきちんと正しいリーダーシップを学ばないまま、リーダーの地位に就いてしまっている人が少なくありません。

日本では多くの場合、部下やスタッフの育成を行いつつ、「プレイングマネジャー」として結果も求められます。そのため、自身のストレスのはけ口として部下やスタッフにつらくあたったり、結果だけを求めたりして過程を重視しない「鬼リーダー」を正解と考える人も少なくありませんが、職場では総スカンをくらっています。現状維持をよしとする「ダメリーダー」もいますが、部下には見下されています。

周囲から慕われている「神リーダー」

一方で、拙著『「神」リーダーシップ』で解説しているように、世の中には、非常に高い生産性で経営トップからも信頼が厚いリーダーが存在します。1人で何百人もの部下を統率し、会社のあらゆる部署の問題に精通し、問題に対し的確な解決策を提示し続ける、超人的なリーダーがいます。それゆえに、会社の中であらゆる社員から支持を集め、周囲から神のように慕われている。そんなリーダーを、私は「神リーダー」と呼んでいます。

鬼リーダーとダメリーダー、そして神リーダー。もともと入社当時は同じ一社員だったのに、なぜ、こうも大きな差がついてしまうのでしょうか。ポイントは、実はシンプル。それは、「仕事の見方・考え方・捉え方」の差にほかなりません。

ポイントはいくつかありますが、1部上場企業含め約2000社、1万人以上の役員・部課長と出会い、中でも特に優秀な約1000人の神リーダーと話した私から見たうちの1つが、日本とアメリカの違いにあります。

1991年、33歳でアメリカにエンジニアリング・マネジャーとして赴任して数カ月が経った頃、1歳下で、有能な現地アメリカ人の経理マネジャーBさんに、唐突に次のように言われました。

「ミキさんがアメリカに来て2カ月ほど経ちますが、今後、会社の経営をどのようにしていきたいと考えていますか?」

中間管理職であり、今まで会社の「経営」そのものについてあまり深く考えていなかった私にとって、目がさめるようなショッキングな質問で、明確に答えることができませんでした。

日本では、一般的に会社の経営について考えるのは社長になってから、早くても取締役になってからというのが常識だったこともあり、この質問はその後の私の人生を一変させるものでした。

今も日本の中間管理職、特に課長クラスでは、社長目線で考えることは少ないのではないでしょうか。日本の管理職は自分の目の前のことで手いっぱいになってしまう人が多いのですが、アメリカの優秀なリーダーはつねに会社全体のことを考えていました。

彼らは会社全体のことを考えながら仕事をしているので、優先順位のつけ方がうまく、何をするにも決断が速いのです。俯瞰力によりゴールまでの課題が見えるので早く結論を出すことができ、結果的にミーティングも早く終えることができていました。

家族を大事にする

もう1つは、家族ぐるみで会社全体のことを考えているということです。

アメリカでは家族と比べ仕事の優先順位は高くありませんが、これは決して仕事をおろそかにしているという意味ではありません。

特に、管理職クラスは、日本と同じかそれ以上に働きます。彼らが日本のビジネスマンと異なるのは、管理職クラスであっても家族を大事にするということなのです。なぜ家族を大事にするのか? それは、仕事でリーダーシップを発揮するために、家族が非常に重要な存在になってくれるからです。

よく考えてみると、家庭というのはチームそのもの。もともと生まれた環境も、育った環境も違う赤の他人と共同生活をすることは、チーム運営の基本です。つまり、家庭はリーダーの力を養うためのトレーニング場でもあるのです。家庭において、家族一人ひとりの長所を発揮できる役割分担ができていれば、自然と協力体制が出来上がります。

そして、仕事の話だけでなく、学校生活や恋愛、進路など何でも話せる雰囲気の家族であれば、会社と同じように、いざというときに一丸となって問題に対処することができます。そういう家庭を築いている人は、家族を路頭に迷わせないように導けていると感じました。

ですから、家庭内がメチャクチャになっていたり、家族の役割分担ができていなかったり、家族とのコミュニケーションが断絶したりしている人は、人生で最も重要なチームである家庭のリーダーシップが取れていない人です。

こういう人は、会社においてもリーダーシップを発揮できていない傾向があります。家庭は最小の社会。そこでのふるまいが会社でも再現されやすいというわけです。

家庭内でのリーダーシップを意識する

アメリカではどの家庭でも子どもは何らかの役割を与えられており、家庭内で決められたルールに従って行動することが求められます。

知り合いを家に招いて行うホームパーティでは、その家の奥さんがホステスとなり、パーティを切り盛りします。子どもたちにも料理や配膳をするなどの役割が与えられ、家族全員で招待客をもてなすのです。


日本もだいぶ変わりましたが、まだまだ、男性は外で仕事、女性は家事育児をするという考え方が根強くあります。だからお互いに大変さがわからず、お互いがお互いの悩みを抱え、うまくいかなくなってしまう。そんなケースも多いようです。

私もアメリカに赴任するまで、残業をいとわない仕事人間でしたが、現地の社員に忠告されてからは、家族をチームとして考え、それまで以上に家庭内でのリーダーシップを意識するようにしました。

残業せずに、定時で仕事を終えるように意識し、今まで以上に子どもたちの世話や、家の用事をするように心掛けました。そうすることで、逆に仕事が忙しいときに私が家で仕事をすることを、家族全員で協力してくれるようになったのです。

社内でのリーダーシップを発揮したければ、その前に家庭でのリーダーシップを養う。私がアメリカ人から学んだ心得の1つです。