自慢は、肉と胡椒の壺炊き。クセになる辛さに“やみつき警報”発令の予感!

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かつては薬のように扱われ、金に肩を並べるほど珍重された胡椒。その魔味を主役にした店が麻布十番にオープンした。後引く辛さと美味しさで、何度も通いたくなってしまうこと必至!

【肉、最前線!】


数多のメディアで、肉を主戦場に執筆している“肉食フードライター”小寺慶子さん。「人生最後の日に食べたいのはもちろん肉」と豪語する彼女が、食べ方や調理法、酒との相性など、肉の新たな可能性を肉愛たっぷりに探っていく。奥深きNEW MEAT WORLDへ、いざ行かん!

今回登場するのは、胡椒がメインを張る店。他に類を見ないマニアックさで、クセになる人が続出してしまうはずだ。

Vol.12 “ペッパア”が主役!肉と胡椒編


徳川家康の側室であった英勝院が「この世で一番うまいものは?」と聞かれ「それは塩にございます」と答えたという逸話があるが、そこから遡ること約50年前の大航海時代、「黄金ひと粒と同様の価値を持つ」と言われ、主要交易品として高値で取引されたのが胡椒だ。

現在の日本でも、調味料の主役と言えば塩。最近は専門店もできるほどの人気ぶりだが、かつて西洋文化の発展を担った胡椒もまた、私たちの食生活には欠かせない調味料であることは間違いない。

今年の9月、麻布十番にオープンした「アパッペ マヤジフ」は「料理のすべてに胡椒を使用する」という少々マニアックなコンセプトを掲げる店だ。呪文のような店名を後ろから読めば“ペッパア”となるように、前菜のパテにはじまり、ムール貝蒸し、メインの胡椒壺炊きからご飯、デザートにも調味料の“主役”として、胡椒をたっぷりと用いる。

「胡椒が栽培され始めたのは18世紀後半と歴史が長く、スパイスの王様として西洋では圧倒的な人気を集めました。抗菌、防腐作用のあるピペリンという成分を多く含んでいるので、かつては食材の長期保存にも重用されたと言います。胡椒にスポットを当てた料理を出す店があったら面白いという発想からスタートしました」と、スパイスアドバイザーの小野大樹さん。

胡椒サワー700円

胡椒の生産は高温多湿の赤道地帯を中心に世界各地で行われているが、アパッペ マヤジフではスリランカ産のオーガニック生胡椒を使用している。味や香りもよい胡椒は塩漬けとフレッシュの2種を料理によって使いわけており、塩漬けは肉の煮込み料理にも負けないほど味に存在感があり、フレッシュは青々としたさわやかな辛みを持つ。

胡椒壺炊きは、羊肉か豚肉から選ぶことができる。蓋の上で焼かれたパンは、提供時に切り分けられる。ディナーコースの中の1品。

ディナーコース(3,800円〜)のメインに登場する「胡椒壺炊き」には塩漬け胡椒をふんだんに使用。ラム肉の出汁とトマトやクミン、じゃが芋、キャベツ、にんにくとともに羊肉をゆっくり煮込んだシンプルな料理だが、塩漬けの胡椒をそこに加えることで、味がぐっと引きしまる。生胡椒の効果で風味に奥行きが増した羊肉は、後を引く美味しさだ。

スリランカには「胡椒の辛さは、粒をかみ砕いてみてはじめてわかる」ということわざがあるという。これは「何事も実際に体験してみないとわからない」ということの例えだが、胡椒にスポットを当てたこの料理店もまた然り。とりわけ、胡椒と肉のコンビネーションは、想像以上にクセになる。

 

写真:富澤 元

取材・執筆:小寺慶子