富士ソフトの細胞培養センター

写真拡大

 富士ソフトが再生医療の事業化に取り組んでいる。開発中の「インプラント型自己細胞再生軟骨」の製造販売承認を2018年1月に申請するほか、大学の研究を後押しするサービスも打ち出す。今後の事業方針を富士ソフト常務執行役員で、富士ソフト・ティッシュエンジニアリング(東京都墨田区)社長の原井基博氏に聞いた。

 ―再生医療製品「インプラント型自己細胞再生軟骨」の進捗(しんちょく)は。
 「当社の再生軟骨は3次元の形状と強度を維持できるのが特徴だ。患者の耳からごく少量の軟骨を採取して培養し、5センチメートルほどの軟骨に再生して使用する。口唇口蓋(がい)裂の患者に適用を目指しており、鼻形状の改善や維持が期待できる」

 「企業治験を今年5月に終了し、9例の事例で不具合も出ていない。今月末に医薬品医療機器総合機構(PMDA)との対面助言を経て、2018年1月に製造販売承認を申請する計画だ。薬事承認や薬価収載を経て、半年後の同年7月の販売を目指している」

 ―再生軟骨の優位性は。
 「採取する軟骨が少なくて済むため痛みや体への侵襲が少ない。従来の治療法は腸骨や頭蓋骨、肋軟骨などを実際の移植するのに必要な量を採取する必要があった。だが、正常な組織であるため痛みや合併症などのリスクも指摘されている。再生軟骨は既存の治療法の代替になれる」

 ―事業の目標は。
 「日本では口唇口蓋裂患者の治療が年200例以上行われている。だが、既存の治療法は苦痛や正常組織を傷つけるため、治療に踏み切れない患者も多くいる。確かにコストは高いが、痛みも少なく、術後の回復も早い。正しく説明すれば100%置き換えることも可能だろう」

 「口唇口蓋裂だけでなく、他の疾患にも使える可能性もある。また国内だけでなく、口唇口蓋裂患者の多いベトナムなどにも将来的には展開できると思う。潜在的に飛躍できるチャンスはある」

 ―大学との連携も強化しています。
 「大学の再生医療研究向けに『再生医療アカデミアモデルサービス』を提案している。当社の細胞培養センター(CPC)を研修の場とし、研究者の教育・訓練や研究・開発支援などを包括的に提供する。大学では設備や人員の確保などが事業化の壁だ。同サービスで大学も研究に専念できる。15年にサービスを始め、4大学に広がった。再生医療の事業化を後押ししたい」
(聞き手=村上毅)