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●次世代型店舗は何を目指したのか

セブン-イレブン・ジャパンは新技術や設備を結集した次世代型店舗として「セブン-イレブン千代田二番町店」をこのほど再オープンした。新たなセブン-イレブン店舗はどのようなものなのだろうか。

○次世代型店舗の3つのテーマ

次世代型店舗として導入したのは、全58種の技術を活用した設備。直営店となる千代田区二番町店で試用、検証を行い、可能なものから順次、全国約19900店への展開を図っていく。

今回の取組みを開始したのは今年の6月から。次世代型店舗に活用可能な取組みを募り、約半年の期間を経て、実現させた。テーマとなったのは「環境負荷の低減」(22種)、「働きやすさの向上」(26種)、「快適な店内環境づくり」(10種)の3つ。代表的な取組みとして次のようなものが挙げられる。

○次世代型店舗は何が違う?

「環境負荷の低減」では、純水素燃料電池の発電利用、路面型太陽光発電設備、高効率太陽光発電システムの活用によって、店舗全体の外部調達電力を約28%削減することが可能となる。店舗の電気代は本部8割、加盟店2割の比率で負担しており、新技術をフル活用した場合、上記の外部調達電力分のコストを下げることができる。

このほかCO2冷媒を試用した冷凍・冷蔵設備の導入。自動調光機能付き店頭看板の導入で使用電力量を削減したり、デジタルサイネージの導入により、店頭横断幕の取替え負担をなくすなどの取組みもある。

「働きやすさの向上」につながる施策も多い。売り場では、商品陳列棚や冷凍・冷蔵ケースの陳列棚をスライド式にすることで作業効率の向上を図った。スライド式の陳列棚によって、商品補充の時間を削減することが可能になる。また、商品を取り出すごとに、棚奥の商品が自動で前に押し出される自動前出し仕切り板を設け、陳列商品を整える手間も省ける。こうした手間の削減によって、接客の向上につなげたいという思いがあるという。

カウンター周辺にもいくつかの取組みがある。レジ袋の取り出しを容易にする新機構を作ったり、食器洗浄機を導入し、店内調理の増加機会にも対応した。また、フライヤー設備に給気機能を追加して店内と外気圧の差を少なくし、店舗入り口からの外気の流入を減らした。これにより、店内に埃や花粉などの侵入を減らせるようになる。

●働きやすさがコンビニの課題に?

「快適な店内環境」では、パナソニックの「ナノイーX」を使用した空調機、空気清浄機を導入した。店舗スタッフのみならず、コンビニ利用者の買い物環境の改善にもつなげている。トイレには防臭・抗菌作用のある壁材、床材を用い、プレミスト機能・自動便器洗浄機能を装備した便器を採用したほか、脱臭機能付き空気清浄機の設置などを行なった。

このほか、細かいところでは、折り畳み傘も収納可能な傘立ての設置(快適な店内環境)、アイスクリームケースフィルターのフィルター部にスライド式ブラシを設けた清掃性の向上(働き安さの向上)、トイレの手洗いを泡沫型自動水栓による節水(環境負荷の低減)も可能にする。

○日販だけでは語りきれないステージに

今回の取組みを見ると、ひとつひとつはかなり地味だ。AIを活用したレジなど未来感に溢れたものはなく、店舗利用者には、あまり気づかれない取組みともいえる。しかし、加盟店側には大きな意味を持ちそうだ。電気代はコスト削減に直結し、アイデア豊かな一連の取組みによって、対象設備に関連する作業時間を1日あたり約5.5時間も削減できるという。

コンビニの求心力を示す指標として平均日販がよく持ち出されるが、今回はそうした面からではなく、店舗運営コストや働きやすさにクローズアップしたものとして興味深い。

今年6月、ファミリーマートでは新マーケティング戦略において、人手不足を背景に販促物の削減を打ち出しており、店舗での作業時間を削減する取組みを公表した。セブン-イレブンは今回の取組みと人手不足との関係性について広報部は否定したものの、日販だけでは語りきれないステージにコンビニ業界が来ているように思われる。様々な業界において人手不足が声高に叫ばれているのが現状であり、コンビニにおいても日販だけではなく

働きやすさも加盟店の求心力を高める大きな材料になってもおかしくはなさそうだ。