北朝鮮戦は勝つには勝ったが、内容的に見るべきものがあまりなかったと釜本氏。「もっと貪欲なアピールが必要」とも。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

 12月9日に行なわれたE-1選手権の初戦、北朝鮮戦は後半アディショナルタイムに井手口陽介の決勝点が飛び出して、なんとか1-0で勝利を収めることができた。まあ、勝ったとはいえ本当にヒヤヒヤものの勝利だった。
 

 この大会は、国内組にとってロシア・ワールドカップの本大会メンバー入りを懸けた最後のテストの場になると言われてきた。そういう意味では、国内のトップレベルの選手たちが集まっているのだろうけど、北朝鮮戦に関しては内容的にそれほど見るべきものはなかった。
 
 急造チームだから致し方ない面はあるにせよ、連係面はギクシャクしているし、個々を見ても何にトライしようとしているのかが見えない選手が多かった。途中から入った伊東純也がドリブルで仕掛けたり、川又堅碁がヘディングで狙ったりと、単発的にはアピールした選手もいるけど、どこかチームになっていない印象を強く受けし、どうやってゴールに迫るかというチームとしての形も見えなかった。むしろ、日本より北朝鮮の方が、狙いははっきりしていたし、シュートはもちろん決定的なチャンスも多かった。
 
 ハリル監督は頻繁に「背後を狙え」と言うけど、北朝鮮は低い位置でブロックを作って、そこから一気にカウンターを仕掛けようとした。だから背後を狙おうにも、そのスペースがない。無理に狙ってもパスはゴールラインを割るか、相手のいるところへのロングボールになってしまうから、結局中盤でパスを回させられることになる。何度か裏へ抜けるパスも成功していたけど、パスを出す側と受ける側のタイミングがもっと成熟してこないと、何かが起こりそうな気配は生まれない。
 
 そういうなかで数少ない収穫のひとつがGKの中村航輔の活躍だったんじゃないかな。中村のビッグセーブがなかったら、大会の重要な初戦に確実に負けていたよ。残り2試合あるからまだ早いけど、仮に優勝でもしたら、この試合での中村のパフォーマンスはさらに価値あるものとしてクローズアップされる。それほど日本にとっても、またワールドカップ出場を狙う彼にとっても大きいものだったね。
 そういえば北朝鮮後から、テレビでは中村を取り上げるニュースを多く見るようになった。やっぱり今までGKの3番手に収まっていた22歳の若い選手が一躍チームを救うヒーローになったのだから、取り上げやすいのだろう。また決勝点を挙げた井手口も中村と同じくリオ五輪のメンバーだった。ふたりともチームでも今がもっとも勢いのある選手たちだ。
 
 ワールドカップにしても、少なくともあと2回は狙えるだろう。だから、自分のパフォーマンスを思いっきりぶつけるのみ。「失うものはない」という気持ちで臨むこともできると思う。
 
 他の中堅クラス以上の選手にそういう気持ちがないとは言わない。みんな一生懸命やっているのは分かるし、サッカー選手なら誰だってワールドカップという舞台には立ちたいはずだ。
 
 ただ、北朝鮮戦に出場した選手の多くは、まだまだ自分を十分にアピールできていなかった。北朝鮮が引いてきたからというのもあるけど、なぜそこで縦に入れない? またバックパス? というシーンがどれほど多かったか。連係のギクシャクと同時に、肝心なところで勝負に行かない、あるいは行けないようでは面白い試合になるはずがない。
 
 北朝鮮戦は「国内組の最後のテストの場」と前述したけど、それが選手たちの足かせになっている可能性はあると思うよ。失敗したらサバイバルレースから落とされてしまう――。そんな危機感というよりも焦りがプレーに、チームパフォーマンスに悪影響を及ぼしているのかもしれない。
 
 もちろん、そういうプレッシャーをもはねのけてワールドカップメンバーの座を掴み取る逞しさがなければ、大舞台で戦えるはずはない。今回E-1選手権を戦う選手たちが、難しい立場にあるのは分かるけど、もっと貪欲に自分に何ができるのかを示してほしい。