抗酸化作用で注目!次代の主役候補「オリーブハマチ」とは?

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香川は、うどんだけと思っていませんか? “オリーブ県”としての魅力だって想像以上。それも新漬けやオイルだけでなく、オリーブの飼料で育ったハマチに牛肉だってあるんです。その魅力をとくとご覧あれ。


【小豆島の美味しいところ丸かじり!】Vol.2  オリーブハマチ


香川県・小豆島に初めてオリーブが運ばれてきたのは、明治41年(1908年)。当時の農商務省が三重、鹿児島、香川の三県で、輸入した苗木を使って試作したところ、小豆島に植栽したオリーブだけが順調に育ったことが、現在のオリーブ大国・香川県を作り上げた原点となっている。

オリーブの栽培面積、収穫量ともに日本一を誇る香川県は、県花、県木がオリーブであることからも分かるように、“うどん県”だけの魅力にとどまらない、実は“オリーブ県”という側面も持つ。しかし、多彩なオリーブグルメを展開しているにもかかわらず、その驚きの美味しさはあまり知られていない。

Vol.2となる今回は、オリーブの葉の粉末を入れた餌で養殖した「オリーブハマチ」、オリーブ採油後の果実を飼料に混ぜて育てた「オリーブ牛」を紹介。

香川県はオリーブだけでなく、ハマチ養殖発祥の地でもある


香川県は、昭和3年(1928年)に世界で初めて養殖の事業化に成功した「ハマチ養殖発祥の地」であることはあまり知られていない。「オリーブ発祥の地」というイメージはなんとなくあるかもしれないが、実はハマチ養殖地としての歴史も深く、これまでにも「ひけた鰤」、「なおしまハマチ」といったブランドハマチの開発に成功している。

そして、平成19年、香川県を代表する県産品オリーブとのコラボレーションによって誕生したオリジナルブランドが「オリーブハマチ」である。先の2つのブランドハマチを加えて、香川県が誇る“ハマチ三兄弟”として人気を博しているというから、世の中にはいろいろな三兄弟がいると痛感させられる。

では、三兄弟の末っ子「オリーブハマチ」とは一体何なのか!?

その正体は、香川県産のオリーブの葉を主原料とした粉末を、2%以上添加したエサを20日間以上継続して与えて養殖したハマチ。オリーブの葉には、抗酸化作用の強いポリフェノールの一種「オレウロペイン」が大量に含まれているため、酸化・変色しにくい肉質に仕上がり、通常のハマチに比べて鮮度が落ちづらい養殖ハマチが誕生するというのだ。

シミの原因の一つである活性酸素を除去する力を持つ抗酸化作用の高い食品を食べると、「お肌に効果的」と言われて久しいが、たとえそれがハマチであっても同じ効果が表れるらしいというのは興味深い。

エサの中に、写真にあるオリーブの葉の粉末を混ぜるわけだが、剪定して無駄になるオリーブの葉をリユースし、ブランドハマチに活かそうとした“香川愛”と“知恵”がコラボしたハマチであることも見逃せない。

養殖を行う1ブロックに対して、3,000〜4,000匹のハマチが泳いでいるらしく、速射砲のように海に放たれる団子状のエサにハマチが一斉に群がる様子は大迫力だ。

なお現在、「オリーブハマチ」の養殖は、香川県内の6地区(庵治、引田、直島、小田、鴨庄、牟礼)で行われているが、筆者が訪れた庵治港(映画『世界の中心で、愛をさけぶ』のロケ地でもある)周辺は魚釣りスポットとしても◎。

ご覧の通り、養殖されているハマチはハマチとは思えないほど大きい。(地域によって呼称が異なるが)四国ではモジャコ→ツバス→ハマチ→メジロ→ブリと出世していくわけだが、さすがは発祥の地、ハマチの時点でブリかと見紛うほどに仕上がっている。驚きのスピード出世である。

多くの課題を乗り越え誕生したオリーブハマチは、平成28年度には香川県内全体で25万匹が生産されるまでになり、現在では県内のスーパーでもオリーブハマチの切り身などを気軽に購入できるまでに。お値段も、6切れで400円くらいとお手頃価格。スーパーとあなどるなかれ、新鮮かつ鮮度が落ちづらいので最高ですから。

うま味&甘み抜群、でも、さっぱり。リピートしたくなる味


さりとて、思う存分オリーブハマチの魅力を楽しみたい人も多いはず。そんな人にオススメしたいのが庵治港の近くに位置する「さざなみ亭」だ。事前予約必須だが、さざなみ亭では「オリーブハマチ尽くし」(3,500円〜 税・サービス別)と題したスペシャルワンが堪能できる。オリーブハマチがあるときだけしか味わえないものの、オリーブハマチに特化した料理の数々をお目にかかることができるのは香川県の中でもここだけだろう。

丼、揚げ物、焼き物、ハマチ大根などなど、創意工夫のハマチ料理が集う中で、ひときわ輝きを放っているのが刺身。オリーブハマチは、「臭みが少ない」「脂がのっているのにさっぱりした味わい」「長時間鮮度を維持できる」という主だった3点の特徴を持つが、実際に刺身を食べると、その特徴を瞬時に理解できる。脂ののり方に比例しないさっぱりした口当たりは衝撃的だ。

醤油につけると油膜がじわっと表面にできる姿はまるで旬の季節にいただくブリのようだが、口の中で噛めば噛むほど広がる味わいはカンパチのような甘さとさっぱり感。オリーブハマチはジューシーなのに何切れでも食べることができるから不思議だ。

「オリーブハマチしゃぶしゃぶ」に到っては、ここがうどん県であることを忘れさせてくれる。もう、ハマチ県。いや、オリーブ県でもあるわけで、要するに「香川県、うどん以外にも美味すぎる食べ物ありすぎだろ!」と笑うほかない。なんでこんなに美味いものが知れ渡っていないのか疑問に思いつつ、しゃぶしゃぶさせること数秒、「まぁ時間の問題だな」と一人納得してハマチを食らう……その繰り返しである。

鮮度が長持ちするオリーブハマチは、新鮮がゆえにとにかく身が詰まっている。弾力があるため、普通のハマチとは比べ物にならないくらい噛み応えがある。もちろん、それはそれで美味しいのだが、しゃぶしゃぶとはとりわけ相性が抜群。半生にすると、上質な甘みが強まり、幸せな気持ちになってくる。

ハマチはいずれブリになる。出世魚は縁起がいい魚とされ、門出やおめでたい席に好まれるわけだが、同じ出世魚でもどうせなら極上の出世魚を食べた方がご利益がありそうだろう。さざなみ亭で、「オリーブハマチ尽くし」を食べれば、その味はもちろん、多幸感に包まれるはずだ。

 

同様に、「オリーブ牛」も立派なブランドとして確立されており、今後は我々の食卓を彩る主役候補の一つと言えるだろう。オリーブ採油後の果実は、そのままだと渋みがあるため牛は食べてくれない。乾燥させることでオリーブの糖分がカラメル風の香りを生み、牛の飼料へと改良することに成功したというから、生産者の努力なくして、食の豊かさはないことを再確認する。

オレイン酸を豊富に含むオリーブ採油後の果実を与えられたオリーブ牛は、オレイン酸、カルノシン(抗酸化成分)、グルタミン酸(うま味成分)などが多く含まれ、美味しいだけでなく栄養価も高い。当然、栄養価の高い飼料を食べているため、たい肥(フン)も栄養素を含み、畑に還元されることでより良質な土壌を作ることにつながる。循環型の畜産としても、小豆島のオリーブ牛は嘱目に値するのである。

Vol.1で紹介した「島宿 真里」のオリーブ牛の炙り焼き(要問合せ)

オリーブによってさまざまなオリジナルブランドが誕生している背景には、オリーブ樹が「太陽の樹」と呼ばれるように恵みそのものと言うことに尽きるのではないか。オリーブは、オリーブオイルや新漬けだけではなく、採油した後の果実や果汁、葉や枝まですべて有効活用できる万能の樹であることが、香川県とその生産者の取り組みを見ていると分かる。今や同県のオリーブ加工技術は、世界随一の水準と言われている。

裏を返せば、知恵が無ければオリーブを使いこなすことはできない。情熱と知恵をフルスロットルにして、オリーブブランドを展開している香川県。行けば、新たな発見に出会え、未知の驚きに出会えることは言わずもがなだろう。

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取材・文・写真:我妻弘崇(アジョンス・ドゥ・原生林)