すき家値上げしたのは、なぜなのか。その理由を小川賢太郎会長に聞いた(編集部撮影)

牛丼チェーン「すき家」が11月29日、牛丼を値上げした。並盛は従来通りの350円(税込、以下同)だが、同価格の中盛、大盛は10円値上げの480円とし、特盛、メガ盛はそれぞれ50円値上げし、630円、780円に引き上げた。同時に、トッピング各種も10円値上げ、セットも20〜40円値上げした。
今回の値上げは牛肉とコメの価格と人件費の上昇が理由という。なぜこのタイミングで値上げを決断したのか。値上げから1週間が経過した12月6日、同社の持ち株会社、ゼンショーホールディングスの小川賢太郎会長に聞いた。

牛肉の値段は当面高止まりする

--牛丼値上げで「すき家の成長にブレーキがかかるのでは」との報道もある。


(出所)ゼンショーのHPより

メディアはいつも好きなことを言う。「アルバイトなど非正規社員の賃金を上げろ」と言っておいて、「でも値上げはけしからん」では、論理が崩壊している。しかし今回の値上げの主な理由は人件費ではなく原材料の値上がりだ。

牛丼の2大食材の1つである牛肉は価格上昇が続いている。中国や東南アジアにおける牛肉消費の拡大が原因だ。中国・アジアに店舗を展開している我々にとっては追い風でもあるが、米国産牛肉の牛丼用部位の価格は前年同期比で42%上昇した。

資本主義は需要と供給のバランスで成り立っている。需要が増えれば供給が増える。現に米国の畜産農家では生産量を増やす動きが出てきている。しかしそれを上回る勢いで消費が増えているので中長期で需給タイトが続く。つまり牛肉の値段は当面高止まりすると見ておいたほうがいい。


小川賢太郎(おがわ けんたろう)/ゼンショーホールディングス会長兼社長。1948年7月29日生まれ、石川県出身。都立新宿高等学校卒業。1971年、東京大学中退。1982年、横浜市にゼンショーを設立、牛丼チェーン「すき家」を展開。2000年、ココスジャパン会長(現任)。2007年、サンデーサン(現ジョリーパスタ)会長(現任)。2011年からゼンショーホールディングス会長兼社長(筆者撮影)

--コメの価格も上がっている。

コメの価格は前年同期比で9%上昇した。こちらは、日本人のコメ消費の減少を受け、過去30年間、ほぼ一貫して値下がりが続いてきた。我々が「すき家」を始めた頃は1俵2万円が相場だったが、今は1俵1万2000円だ。需要が減っているのに供給が同じだと価格は暴落する。そこで政府は長年、減反政策をとってきた。

先進的な農家は「1俵1万円時代」を睨んで生産効率を上げることに取り組んでいる。それでも国際的には割高だが、品質を考えれば1キログラム200円なら国際的にも何とか戦えるレベルだろう。

需要減に減反が追いつかず、価格が下がるというのがコメ市場の構造だったが、この数年で状況が変わった。コメを作らない農家に金をバラまく減反政策は国民に評判が悪かったので、政府は3年前「飼料米奨励制度」を作った。人間が食べるコメから家畜が食べるコメに切り替えた農家に補助金を出す制度だ。

人間が食べるコメの供給量が減った

多くの農家が飼料米に切り替えたため、人間が食べるコメの供給量が減った。これによりコメの価格が上昇に転じた。すき家が牛丼に使うコメの価格は前年同期比で9%値上がりしている。政府は飼料米奨励制度を続けるようなので、コメ価格もしばらくは高止まりすると見ている。2大食材の牛肉とコメの値段の高止まりが続くため、値上げをお願いせざるをえないと判断した。

--パート・アルバイトの募集時平均時給も前年同期比で2.2%上昇している。

それは事実だが、あらゆる企業にとって同じことだから、値上げの理由にカウントしたくない。売り上げに対する比率で見れば、先の2大原材料が圧倒的要因だ。


牛丼並盛の価格は据え置いた

--「牛丼並盛」(税込350円)だけ価格を据え置いた。

すき家の牛丼並盛は「国民食」で、その値段は「衆知の価格」といえる。これまで説明したように牛肉とコメの値上がりで事業環境は厳しくなっているものの、牛丼並盛だけはギリギリの企業努力で350円を維持した。

「値上げ後も売れ行きに変化は出ていない」

--日本の個人消費が回復したと判断しての値上げか。

消費はすべての部門がよくなっているわけではなく、まさに「まだら模様」だ。一部、高級品の売れ行きがよくなったりしているが、牛丼のようなベーシックな商材では依然、お客様は価格に敏感だろう。

一方で人件費の上昇などもあり「このくらいの値上げは理解してもらえるのではないか」という判断もある。まだ値上げから1週間(注:取材日は12月6日)と日が浅いので注視していかなければいけないが、今のところ入客数や(値上げをした)「大盛」「特盛」の売れ行きに変化はない。

--すき家、吉野家、松屋は牛丼価格の駆け引きを繰り返してきた。2014年4月の消費増税のとき、吉野家と松屋は値上げをしたがすき家は値下げした。今回、吉野家と松屋に値上げの気配はないが、すき家から客が離れる心配はないか。

品質とメニューの豊富さには自信があり、現在もすき家は牛丼市場でプライスリーダーのポジションにあると考えている。日本の外食市場は多様性を増し、お客様は高級レストランからベーシックなお店までをTPOに合わせてうまく使い分けている。

国内5000店舗を展開するゼンショーグループはさまざまな業態で、お客様に外食の多様性を提供している。高品質の多様性を維持することが真の豊かさにつながると思う。