日本代表から遠ざかっていたMF大島僚太【写真:Getty Images】

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ピッチに立てば、あのUAE戦以来の出場に

 9日のE-1選手権初戦・北朝鮮戦では井手口陽介のアディショナルタイム弾で辛くも勝利した日本代表。中2日で迎える12日の中国戦では、大幅に出場メンバーが入れ替わる見込みだ。そのなかで注目したいのがMF大島僚太。ほろ苦い代表デビューとなったロシアW杯最終予選UAE戦以来となるAマッチ出場へ。川崎Fと同様日本代表でも背番号10を背負うことになったMFが、成長したその姿を示すべきときがやってきた。(取材・文:元川悦子)

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 シュート数7対12と相手に上回られながら、後半アディショナルタイムの井手口陽介(G大阪)の決勝弾で辛くも1-0で白星発進した9日のE-1選手権初戦・北朝鮮戦(味スタ)。劇的勝利から一夜明けた日本代表は中2日で迎える次戦・中国戦(12日)に向けて、東京都内でトレーニングを行った。

 この日は北朝鮮戦に先発した車屋紳太郎(川崎)が太もも打撲のために別メニュー。中国戦はおそらく回避すると見られる。それ以外の北朝鮮戦スタメン組も強行日程になるため、大半が入れ替わる見通し。

 北朝鮮戦で途中出場して流れを変えた伊東純也(柏)、阿部浩之(川崎)、川又堅碁(磐田)の3人が先発に繰り上がる可能性が高く、左サイドバックの山本脩斗(鹿島)、センターバックの三浦弦太(G大阪)らが初キャップを踏むことになりそうだ。

 こうした中、今大会の背番号10・大島僚太(川崎)もスタメン入りが有力視される。今野泰幸(G大阪)、あるいは井手口の一方とコンビを組んでボランチを務めるか、あるいは高萩洋次郎(FC東京)が陣取っていたトップ下に入るかはハッキリしないところもあるが、「(ポジションによって)多少の違いはあるかもしれないですけど、それぞれの準備はしっかりしないといけない」と本人もそれぞれのイメージを頭の中で思い描いているようだ。

 代表戦のピッチに立つことになれば、2016年9月の2018年ロシアワールドカップアジア最終予選初戦・UAE戦(埼玉)以来、1年3ヶ月ぶり。ご存知の通り、このゲームで日本は1-2の苦杯を喫し、最終予選突破に暗雲が立ち込めた。

 大島は長谷部誠(フランクフルト)とダブルボランチを組んで初キャップを飾ったが、2人が揃って前へ前へと行き過ぎた結果、守備のリスクマネージメントが疎かになり、UAEにスキを与えてしまった。

 日本は本田圭佑(パチューカ)の先制点で1点をリードしていたが、大島の横パスをカットされたところから吉田麻也(サウサンプトン)がアリ・マブフートを倒してFKを献上。それをアハメド・ハリルに直接決められ、同点に追いつかれた。さらに1-1の状況で迎えた後半、今度は大島自身がアルハマディに自らPKを与え、致命的な逆転ゴールを許す悪夢のような展開を経験した。

目に見える飛躍を遂げ、ハリルにも再評価されるように

 ハリルホジッチ監督は「このようなチョイスをしたのは私の責任だ」と采配ミスを認めたが、2失点に絡んだ事実は大島に重くのしかかった。翌10月のイラク(埼玉)・オーストラリア(メルボルン)2連戦こそ呼ばれたものの、出番がないまま終わり、以降は長期間、代表から離れることになってしまう。

 2017年に入ってからは所属の川崎フロンターレでかつてないほど攻守両面でのアグレッシブさを示し、川崎のJ1初制覇にも大きく貢献。目に見える飛躍を遂げ、ハリルホジッチ監督にも再評価されるようになった。代表復帰も何度かささやかれたが、そのたびにケガを繰り返す悪循環に陥り、日の丸をつけることが叶わないまま、ここまで来てしまった。

 そんな大島を横目に、同じリオデジャネイロ五輪世代の井手口が急成長。瞬く間に代表ボランチの一角を占めるようになった。現時点でキャプテン・長谷部、2014年ブラジルワールドカップ経験者の山口蛍(C大阪)、井手口の中盤3人は「ロシア当確」と言われており、残されたボランチ枠は1枚。その競争に遠藤航や長澤和輝(ともに浦和)、小林祐希(ヘーレンフェーン)らが参戦していて、大島も滑り込めるかどうかは微妙な情勢と言っていい。

「残りの2試合で勝たないと、チームとしても、個人の評価にもつながらないと僕は思っているので、チームとして勝てるようにしたい」と本人はフォア・ザ・チーム精神を前面に押し出している。そういう中でも持ち味であるパスセンスやボールコントロール力を発揮して、攻めのアクセントを加えることが、今回の大島には強く求められる。

ハリルJに攻撃のバリエーションをもたらせるか

 E-1選手権の強化合宿に入ってからも、彼はハリルホジッチ監督から「ボールをタテに速く出せ」と口を酸っぱくして言われている。長短のパスを回しながらリズムを作る川崎のスタイルとは異なり、今の日本代表はタテへタテへと急ぐ形が多い。それだけに頭の切り替えが難しいだろうが、それをやらなければ生き残れないのは確かだ。

「このチームで求められているのは守備と背後へのパスだと思うので、そこは出たら意識しないといけない。川崎のサッカーを出すところは出さないといけないし、いい意味で忘れないといけないところは忘れないといけない。使い分けをしっかりしたい」と彼自身もやるべきことを脳裏に刻み込んでいる。

 対戦相手の中国は9日の韓国戦を見る限りだと、北朝鮮ほど引いてくることはない。中盤もボールを回す意識が強いため、大島が球際の強さを生かしてボールを奪い、一気にタテヘ展開したり、自ら前線へ飛び出してシュートに持ち込むようなプレーも出せるだろう。

「ACL(AFCチャンピオンズリーグ)で対戦した時の中国勢は力強さがすごくあった。ボールを持っている時はいいポジションを取って相手に捕まらないことが1つのポイントだと思います」と大島は相手との駆け引きをしながら、優位にゲームを運びたい考えだ。

 そういった頭脳的なプレーで中国を凌駕できれば、北朝鮮戦であまり見せられなかった攻撃のバリエーションを出せるはず。その担い手は間違いなく背番号10をつけるこの男である。

 ロシア行きのラストチャンスと言っても過言ではないこの大一番は絶対に失敗が許されない。UAE戦の屈辱を完全に払しょくするためにも、次なるチャンスでは「以前とは違う自分」を見せること。彼には高いクオリティのパフォーマンスと日本を勝利へと導く明確な仕事を強く求めたい。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子