攻めてはいるものの、チャンスを作り切れず、焦って前がかりになったところでカウンターから失点――。想定しうる敗戦のシナリオとしては、かなり”ベタ”なものだったが、それにまんまとハマってしまったのだから、悔しさは倍増だ。

 FIFAクラブW杯準々決勝。10年ぶりにAFCチャンピオンズリーグを制し、アジア王者として出場している浦和レッズは、UAE王者のアルジャジーラ(開催国枠で出場)に0-1で敗れた。

 浦和はこの試合に勝っていれば、次の準決勝ではヨーロッパ王者にして、前回大会王者でもあるレアル・マドリードとの対戦が待っていたのだが、そんな”ビッグマッチ”も夢と消えた。

 結果論を承知で言えば、試合開始直後から浦和には危うい雰囲気が漂っていた。ボールは保持しているのだが、有効な攻撃を繰り出せない。相手の強固な守備ブロックによって中央のパスコースを切られ、外へ外へと追い出されてしまうばかりで、手詰まりになることが多かった。

 浦和の堀孝史監督は、MF矢島慎也の起用理由について触れた際、「攻撃の最後の部分のバリエーションを増やしたかった。今日の相手に対してサイドから攻撃するという意図」があったことを明かしたが、結果としてサイド攻撃が効果を発揮したとは言い難い。

 確かに、堀監督が「前半に1点でも取れていれば……」と悔やんだように、浦和が攻勢に試合を進めるなかで先制できていれば、試合展開はまったく違うものになっていただろう。FWラファエル・シルバもまた、「前半に多くのチャンスがあり、試合を決めることができたはずだった。前半に得点していれば、こういう試合にはならなかった」と敗戦を振り返った。



終始攻撃を仕掛けていたのはレッズだったが...

 だが、ボールを保持しているという意味では浦和が攻勢だったのかもしれないが、正真正銘の決定機と呼べるのは、31分にFW武藤雄樹の右からのクロスをFW興梠慎三がフリーで合わせたシーンくらい。90分を通してシュートは10本、うち枠内シュートが2本では、逸機を悔やむほどのチャンスはなかったというのが現実である。

 攻撃が止められたときにしても、高い位置からボールを奪い返そうとするものの、プレスをうまく外され、縦にパスを入れられてしまう。こうなると、FWアリ・マブフート、ロマリーニョの2トップでチャンスを作れてしまう、アルジャジーラの思うツボである。

 それ以前にも何度かDFとDFの間に走り込まれる危ない場面はあったが、後半52分、ついにロマリーニョのスルーパスからマブフートに抜け出され、先制点を与えてしまった。

 ここまでの試合展開を考えれば、もはや勝負あった、である。「先制点を取られ、焦った部分があった。疲れも出て、ミスが出た」とは堀監督の弁だが、浦和の攻撃は時間の経過とともに、むしろ粗さばかりが目立つようになり、同点ゴールの可能性は感じられなかった。この内容では敗戦もやむを得まい。

 浦和の敗戦は、自らの拙攻によるものではあるが、言い換えれば、アルジャジーラの術中にハマった結果と言ってもいい。

 アルジャジーラのヘンク・テンカテ監督は試合後、記者会見場に現れるなり、「Best ever!(今までで最高)」と一言。バルセロナのアシスタントコーチや、アヤックスの監督を務めた経験を持つオランダ人指揮官は、「浦和はよくオーガナイズされ、うまくボールを動かすことができるいいチームだ」と、まずは相手チームを称えたうえで、こう語った。

「UAEリーグでは、我々も今日の浦和と同じ問題に直面する。すなわち、ボールを保持していてもアンラッキーな形でゴールを譲ってしまうということだ。そうなると、ゴールして追いつくのはもっと難しくなってしまう」

 アルジャジーラも、国内リーグでは自らがボールを保持して試合を進めるチームである。だが、相手の特長や互いの力関係を考えたとき、何が最善策なのか。

 浦和は粘り強い守備を武器に、ACLを勝ち抜いてきた。その一方で、J1に目を向ければ、ある程度パスはつながるものの、効果的な攻撃ができずに敗れる試合が続いていた。浦和の”表”が出たのがACLだとするなら、”裏”が出たのがJ1。ならば、ここでも裏を出させる試合に持ち込めばいい。堅守からのカウンター狙いに徹することは、戦術家として知られる知将らしい選択だった。テンカテ監督が続ける。

「浦和の弱点を話すことはできないが、我々の強みを挙げるなら、優れたストライカーを擁していること。相手選手は常に注意を払わなければいけない。だが、高い質とスピードを備えている彼らは、”その瞬間”を見つけることができた」

 ヨーロッパでその名を知られる戦術のエキスパートにとって、浦和対策を講じることは、さほど難しいことではなかったに違いない。

 MF遠藤航も「(J1終盤の)横浜F・マリノス戦や、川崎フロンターレ戦もそうだったと思うが、先制されたときに、どうやって前にパワーをかけるかというところは課題かもしれない」と語っていたが、アジア制覇という快挙の陰で、浦和の課題はすでに浮き彫りになっていた。事前にこれだけはっきりと、長所と短所を明かしてしまっていたのでは、してやられるのも当然だった。

 浦和はアルジャジーラが用意したシナリオに沿って敵役を演じ、シナリオに沿って敗れた。残念だが、それなりの確率で起こりうる、想定内の結果だったと認めざるを得ない。

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