強いチームは熱くて柔軟です(写真:kikuo / PIXTA)

「幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」

『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』などの名作を書いたロシアの作家、トルストイが残した言葉だ。

これは家族だけの話ではない。企業においても名言が当てはまる。最高のチームは似たような性質を備えているが、機能不全のチームは、それぞれ非効率の状況が異なっている。ダメなチームの行動や思考を検証する書籍は多いし、確かに失敗した理由を理解する意義も大きい。

だが、それだけで十分ではない。単によくある落とし穴に陥らないというだけで、真に高いパフォーマンスを発揮するチームになれるとは限らない。心理学の教科書に書いてある問題点を回避すれば優れた人間になれるわけではないのと同じだ。

拙著『EXTREME TEAMS(エクストリーム・チームズ) アップル、グーグルに続く次世代最先端企業の成功の秘訣』でも詳しく解説しているので、近年大きな成長と成功を収めている最先端企業の特徴を一部紹介しよう。

ホールフーズとピクサーの共通点

米国の優良企業、たとえばホールフーズ・マーケットとピクサー・アニーメーション・スタジオは、まったく異なる業界で運営するまったく異なる企業だ。歴史も、文化も、課題も異なっている。しかしチームの活用方法には共通点がある。両社は次に挙げる点で似通っている。

・一般的な企業以上に、チームとチームワークに価値を感じている。チームは自社の成功に不可欠だと見ている。会社は個人の集まりではなく、チームの集合体だと考えている。彼らがチーム制を重視する理由は、チーム制にすることで、競合他社が簡単に模倣できない競争優位が生まれるからだ

・チームの人選を慎重に行っている。有能であるだけでなく、自社のユニークな文化にフィットする人材を求める。仕事に対して強い情熱や執着と言えるほどのこだわりを持ちつつ、仲間と会社を大事にする人材を求める

・チーム内の相性の大切さを理解し、連帯感創出のために努力をしている。チーム内外の絆を強める取り組みを、公式または非公式な形で取り入れている

・能力を発揮するチームの構築には、規律あるアプローチが必要だと考えている。明確なパフォーマンス目標の設定や、厳格な業務プラクティスの徹底など。ホールフーズやピクサーは「ソフトな社風」と見られやすいが、実際にはどちらも状況に応じて厳格なプロセスや手法を設けている

・結果が出ないチームには容赦なくメスを入れる。チームにはつねにフィードバックを与え、パフォーマンスが目標に届かなかった場合は改善を求める。特にチームリーダーは、ハイレベルのパフォーマンスを実現する人材の確保と育成に努めなければならない。その目的を達せられなければポジションから外される

大胆かつ新しいアプローチを取り入れている

目覚ましい成功を収めている、このようなチームは、一般的な企業の先を行く大胆かつ新しいアプローチを果敢に取り入れている。

ホールフーズ、ピクサー、ザッポス・ドットコム、エアビーアンドビー、パタゴニア、ネットフリックス、アリババ。私はめざましい成功を収める7社に特に注目している。共通するのは、著しい成長と財務的な成長を示していることだ。たとえ逆境の中でも成長し繁栄していく能力を発揮し、自社よりも遥かに規模の大きい企業を打ち負かして、それぞれの業界のリーディングカンパニーとなっている。

ホールフーズはアメリカにおける天然食品ブームの牽引役だ。ピクサーはCG(コンピュータ・グラフィックス)映画という新しいカテゴリを生み出し、世界一流のアニメーション会社であったディズニーを飲み込んだ。

パタゴニアは高品質なアウトドア・アパレル・メーカーとして、世界で最も尊敬を集める企業の一社となり、L・L・ビーンのような従来のアパレル・ブランドから顧客を奪った。

ザッポスは、インターネットで靴を売るという、誰もが不可能だと思っていたビジネスを実現させたばかりか、その過程で規模も財力も上回るライバルを巧みに退けてきた。

エアビーアンドビーは、ホスピタリティ業界にまったく新しい分野を作り出し、現在ではアメリカの大手ホテルチェーンよりも多くの部屋を宿泊先として提供している。

ネットフリックスはレンタルビデオ会社ブロックバスターを倒産に追いやり、今はHBO局のようなメディア業界の大手と対決しながら、番組や映画の配信・制作を手がけている。

そしてアリババは、台頭しつつあった中国のEコマース市場でイーベイを打ち負かし、市場価値において世界最大の企業の仲間入りをしている。

7社は、チームとチームワークに対する新しいアプローチを積極的に実験していく企業でもある。業務管理の一般的な手法には固執せず、つねに運営方法の改善に努めている。

たとえば一般の企業では給与情報は秘密にするものだが、ホールフーズはその逆で、全社員の給料額を社内でオープンにしている。透明性こそが大切だと確信し、従来ながらの発想に背いているのだ。

ホールフーズに限らず、7社はつねにベストプラクティスを模索している。他社が導入した手法を単純に模倣するわけではない。彼らは、一般の企業にはあまり見られないレベルのパワフルさと創造性を備えた、興味深い企業だと言うことができる。

成功しているチームには共通点がある。たとえば次に述べる5つの点を重視していることだ。一般的なチームとの対比で見ていこう。

成功しているチームが重視する5つの点

(1)執着心を共有する

成功しているチームのメンバーは、自分が手がけている仕事と、自分が加わっている企業に対し、強いこだわりを抱いている。カルト的と言えるほどの熱の入れようで、自分たちの力で世界を変革するのだと考えている。逆境も克服できると心の底から信じている。

一般的なチームでは、社員は自分の仕事を「こなすべき作業」――プロとしてしっかりやり遂げるとしても――ととらえており、仕事やチームの存在意義に対する熱い思いを共有することはない。

(2)採用は能力よりも適性

優れたチームは、メンバー個々人の資質を重視している。チームの目標達成に寄与する意欲、価値観、気質を兼ね備えたメンバーが適切にミックスされるよう、独自の手法を導入している。企業やチームの文化にフィットする人材を採用し昇進させる。そうした人材にチームへの参加を求め、そうでなければ去ってもらうことも辞さない。

一般的なチームでは、過去のキャリアや業務能力にもとづいてメンバーを選ぶことが多い。

(3)ビジネスの焦点を絞ると同時に広げる

強いチームは、目標達成につながる限られた領域を猛烈に追求していく。優先事項に最大限の時間を注ぎ、余計な気を散らせることは徹底的に排除する(不必要な手続きや管理も含む)。その一方で、現状の製品やサービスの先を行く成長をつかむべく、新たな機会を発掘するための時間、リソース、自由裁量権を広く確保している。

一般的なチームには優先事項が多々あって、重要でないことに気が散りやすい。

ハードでもあり、ソフトでもある

(4)ハードかつソフトな企業文化の追求

目覚ましい成果を出すチームは、一般的なチームよりハードでもあり、ソフトでもある。はっきり定められた目標に向かって目に見える結果を何が何でも出していくという点では、こうしたチームの文化はきわめて厳しい。自分たちの弱点にはオープンに対峙するし、パフォーマンスを発揮していない者を見逃さない。一方で、協力、信頼、忠誠心が自然と育つような環境作りへの協力も惜しまない。

一般的なチームでは、もっと「グレー」であることが多く、結果的にチームの力をハード面でもソフト面でも支えられていない。

(5)気まずさを恐れない

成功しているチームは衝突を恐れない。むしろメンバー間の衝突を推奨することもある。たとえ気まずい事態になるとしても、話し合うべき問題に対してぶつかり合うことで、より良い結果につながると信じている。イノベーションのために大きなチャレンジやリスクに挑む力も重視する。


一般的なチームでは、衝突は避けるべきもの、破綻の兆候を示すものと考える。

このように強いチームには共通点はあるものの、もちろん各社には明確な違いがある。

たとえばネットフリックスとザッポスは、似ているようで大きく異なる。ネットフリックスでは、社員は家族ではなくチームの一員だ。試合に挑むチームの一員として、何らかの貢献をすることができないなら、その選手は交代させる。一方ザッポスは対照的で、むしろ家族的な精神を生み出すことに心を砕いている。

優れた企業は、それぞれ独自の制度や文化を持っているものだが、いずれも共通するのは、圧倒的な成果を生み出すところに注力している点である。