日本を苦しめた北朝鮮はしっかりと準備をしてE-1選手権に臨んでいた。Photo/Getty Images

写真拡大

終了間際の1点で面目を保ったが、日本は入念な準備の前に後手を踏んだ

E-1選手権(東アジア選手権)の男子が9日に開幕し、日本は初戦で北朝鮮と対戦し、終了間際に井手口陽介が決勝点を奪って1-0で勝利を収めた。ただ、試合内容では北朝鮮に押し込まれ、シュート数7対12、決定機の数でも後手を踏んだ。とはいえ、国外でプレイする選手を招集できず、国内組もシーズンが終わったばかりでケガ人も多い。はじめて代表に招集された選手が多く、チームの完成度では北朝鮮に劣っていた。むしろ、よく負けなかったという内容で、優勢だったほうが勝つわけではないサッカーの不条理さが日本にとって良いカタチで表われた一戦だった。

日本を苦しめた北朝鮮は2010年南アフリカW杯に出場したものの、その後は低迷し、14年ブラジルW杯、18年ロシアW杯はアジア最終予選にも進出できず、出場を逃している。こうした経緯もあり、世界舞台への復活を目指す北朝鮮サッカー界は昨年5月、1993〜94年をハンガリー人のチェルナイ・パール氏が率いて以来、25年ぶりに外国籍監督を招聘した。再生を託されたのは、元ノルウェー代表でドイツ国籍も持つヨルン・アンデルセン監督。当面の目標は2019AFCアジアカップ(開催地UAE)の出場権を得ることで、アンデルセン監督のもと精力的な強化を続けている。

同時に、数年前から欧州のクラブに優秀な若手を派遣し、より高いレベルで修行を積ませている。今大会に来日しているメンバーのなかでは、チョン・イルグァンがルツェルン(スイス)でプレイしている。その他にも昨年カリアリでセリエAにデビューしたハン・グァンソンは北朝鮮選手として同リーグで初得点を記録し、今季はレンタル移籍したペルージャ(セリエB)でゴールを量産している。

北朝鮮国内に目を向けると、アンデルセン監督によれば「1日に2回の練習ができる契約を結んでいる」という。その有意義な時間を使い、「平日は走り込み、フィジカル、戦術練習などを行なっている。週末になると選手たちはそれぞれの所属クラブに戻り、また練習に励む。非常に厳しく練習している」という環境のもと代表強化が続けられている。

さらに、日本戦に向けてかなりしっかりと準備してきたことも試合後に明かしている。

「対日本戦の戦術を作り、準備していた。実際、よく守り、チャンスを与えなかった。日本のチャンスは2回ぐらいで、われわれはそれよりも多くのチャンスを作った。戦術はうまくいき、選手たちは俊敏に動いていた。足りないのは最後のゴールだけだった」
「(日本が)Jリーグでプレイする選手だけというのは知っていた。それでも良い選手たちで、彼らにスペースを与えず、攻撃的にボールを奪うことを狙った。そして、コンビネーションを使って素早く前線にボールを入れることを目指していて、多くの時間をそうした流れで戦えていたが、(ゴールを)決めることかできなかった」

この日の日本は整備された北朝鮮の守備組織を崩せず、最後の最後まで苦しめられた。素早いカウンターから何度もピンチも迎えており、GK中村航輔の好セーブや相手のシュートミスによって失点しないで済んだが、2点、3点を奪われていてもおかしくなかった。そうした試合になった背景には、はじめて代表のユニホームを着た選手が複数いて、ハリルホジッチ監督が志向するサッカーを実行することに慣れていない選手が多かったという日本側の理由がまずはあった。さらには、世界舞台への復活を目指す北朝鮮サッカー界のモチベーションの高さ、しっかりとした準備がもたらした結果でもあった。

文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より5大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。Jリーグ登録フリーランスライター。2000年よりサンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載。美術検定3級。