ハウステンボスはさまざまなイベントを実施し、集客を強化している。2018年1月からは花火師世界一を決める大会を実施する(写真:ハウステンボス)

「あくまでわれわれの目標で、絶対できるという約束はないが。ただ、世界的なプレイヤーになるために、2020年には売上高1兆円、利益1000億円を目指したい」――。

旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)の澤田秀雄会長兼社長は記者の質問にそう答えた。

期初目標に対し、利益は大幅な未達に

HISが12月8日に公表した2017年10月期決算は売上高6060億円(前期比15.7%増)、営業利益は159億円(同11.5%増)。前期比では増収増益となったものの、期初に目指していた営業利益200億円という目標に対しては未達となった。

一方、為替差益や買収に伴う段階取得差益を計上したこともあり、純利益は132億円(前期比約50倍)と過去最高を記録した。

HISにとっては内憂外患に悩んだ1年だったかもしれない。年度後半は盛り返したものの、高単価で利幅がもっとも厚い欧州方面の旅行が、2016年から相次ぐテロの影響で低迷。稼ぎ頭のハウステンボスも2016年4月の熊本地震の影響が想定以上に長引いたことで、収益は伸び悩んだ。

社内も揺れた。2016年11月には40代の平林朗氏が社長から副会長に”昇格”し、会長だった澤田氏が社長も兼務する体制に移行。平林氏はその後M&Aやホテル事業を担当していたが、この10月27日に辞任し、アコーディア・ゴルフの社長に転身した。

6月には厚生労働省東京労働局から労働基準法違反の疑いで、澤田会長ほか2人が書類送検されるなど、内部体制にも悩まされた1年となった。

決算と同時に公表した今2018年10月期の見通しは売上高7350億円(前期比21.3%増)、営業利益は180億円(同13.1%増)。

詳細な業績の見通しは公表されていないが、会社側によると旅行事業の部門利益は110億円(前期比25%増)、ハウステンボス単体については79億円(同5%増)の見通しだという。

ハウステンボスはHISグループの利益の半分近くを稼ぎ出すが、ここ数年は足踏みが続いている。「僕は2ケタ成長できると思うが、あえて抑えた予想を公表している」(澤田氏)。

旅行事業のテコ入れが最大の課題に


2016年11月、澤田秀雄氏は会長兼社長というトップに返り咲いた(記者撮影)

澤田氏は着々と手を打っている。

ハウステンボスについては2018年のゴールデンウィークに、一昨年買収した無人島でテーマパークを開業するほか、水上ホテルの開業も予定する。無人島ではAR(拡張現実)技術を用いて、恐竜を登場させるという。

さらに「変なホテル」などを展開する期待のホテル事業では2019年までに10棟の建設を決定。台湾や上海への進出も計画し、現30軒程度のホテルを2021年までに70〜100軒体制へ拡充する。

あまり話題になっていないが、熊本県を地盤とする九州産業交通グループが2019年夏の竣工に向け、熊本市内の中心部で大規模な再開発を実施中だ。

こうした先に澤田氏が見据えるのは成長軌道への復帰だ。あくまで社内的な目標としながらも、冒頭のように2020年に売上高1兆円、営業利益1000億円という数字を掲げている。

実際、2017年10月期は欧州の旅行手配会社ミキトラベルやカナダの旅行会社といったM&Aの上乗せ効果もあり、売上高は大幅な増加を達成。今後もM&Aや新規事業の上積みで毎期20%ずつの成長を続ければ、1兆円という売上高の達成を射程圏に捉えることになる。

ただ最大の課題は低収益にあえぐ旅行事業をどうテコ入れしていくか、ということだ。2020年までに今期見通しの5倍となる利益を叩き出すためには、旅行事業のテコ入れが欠かせない。

現在、旅行業界ではネット予約化が急速に進展。オランダのブッキングドットコムや米エクスペディアなど、オンライン旅行会社(OTA)が急激に台頭。両者の取扱高はそれぞれ約8兆円に達し、5000億円程度のHISを突き放している。

店舗は専門店に特化、ネットシフトを加速

そこで澤田氏は「店舗はハワイなど特定の目的地、シニア、ビジネスクラスなど、(対象を絞った)専門店に特化していく」という方針を掲げる。旅行予約は一層のネットシフトを進め、AI(人工知能)を使ったチャットも導入する。そのうえで既存店舗要員の団体営業への配置転換や、現在売上高500億円強にとどまる国内旅行事業の強化なども打ち出した。

ただ、団体旅行や国内旅行はJTBや近畿日本ツーリストなど競合が強みを持つ分野だ。簡単にシェアを奪還できるかは未知数だ。

変なホテルやハウステンボスの陰に隠れがちだった旅行事業の収益構造に手をつけることができるのか。澤田氏の手腕に期待と不安が錯綜している。