同一労働同一賃金の実現に向け、政府はガイドライン案を示して取り組んでいる。しかし、格差解消に向けて動いている企業は少ないようだ。

 日本の非正規雇用労働者の賃金水準は欧州諸国と比べて低く、不合理な待遇差の解消による非正規雇用労働者の待遇改善が大きな政策課題になっている。そこで政府は、同一労働同一賃金の実現に向けた検討を重ね、昨年12月には「同一労働同一賃金ガイドライン案」を提示し、課題解決を目指している。

 ガイドライン案では、正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正社員(有期雇用労働者・パートタイム労働者・派遣労働者)の間で賃金が異なるなどの待遇差がある場合に、どのような待遇差が不合理で、どのような待遇差が不合理でないか、事例を含めて示している。

 例えば基本給を職業経験や能力に応じて支給しようとする場合、同じ職業経験と能力がある正社員と非正社員について、就業時間帯や土日祝日の出勤などの違いで、時給・基本給に差を設けることは問題がない。しかし、正社員が非正社員に比べて多くの職業経験があることを理由に非正社員よりも多くの時給・基本給を支給している職場で、正社員の職業経験が現在の業務に関連性を持たない場合には問題があるとしている。

 また、基本給を労働者の勤続年数に応じて支給する場合、有期雇用労働者の勤続年数を当初の雇用契約開始時から通算し、勤続年数を評価して基本給を支給している場合は問題がない。しかし、有期雇用労働者の勤続年数について、当初の雇用契約開始時から通算せず、評価時の雇用契約期間のみで評価して支給している場合には問題がある。

 このように、ガイドラインが示される中、株式会社新経営サービス 人事戦略研究所は、運営する人事情報サイトの利用者248名を対象に、「同一労働同一賃金に関する企業の取り組み実態」について調査を実施し、その結果を10月19日に発表した。調査期間は8月から9月。

 同一労働同一賃金に関する自社の対応を聞くと、基本給について「既に改定済」との回答は2.1%で、「改定することが決定」が0.5%、「改定する方向で検討」が13.9%だった。「処遇差はあるが改定しない」は6.1%、「もともと処遇差はない」は13.1%、「まだわからない」は64.2%だった。

 賞与については「既に改定済」が0.4%、「改定することが決定」が0.2%、「改定する方向で検討」が13.5%で、「処遇差はあるが改定しない」は12.0%、「もともと処遇差はない」は6.3%、「まだわからない」は67.6%だった。

 同一労働同一賃金の実現は始まったばかりで、課題解決に向けて動き出している企業は少数にとどまっているようだ。

サイトウ イサム[著]、加藤 秀行[著]

【関連記事】
時給平均、派遣1,528円、バイト947円と上昇傾向も 企業は利益を圧迫し苦しい状況に
企業の派遣会社の利用率は48.2%、一方で ワークライフバランスの満足度は派遣社員がトップ
2016年度の賃金改善、高水準で推移も 非正社員の賃金は「見直す予定なし」30.1%
働き方の変革に取り組む企業、少数派 「時短」進める政府と労働現場に意識の隔たりも
企業の37.8%、正社員が不足と回答 特別時給でアルバイトを募集するケースも