マハラジャ祇園

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 バブル期に全国展開し、社会現象を巻き起こしたディスコチェーン『MAHARAJA』(以下、マハラジャ)。バブル崩壊後は閉店が相次いだものの、2010年代に突入してからは運営会社を変え、六本木、大阪、名古屋と、各地で再オープンを遂げている。

 そして今年9月13日には、当時の旗艦店だった祇園店(京都市東山区)が、かつてと同じ場所で約20年ぶりに復活。舞妓、忍者、花魁など、京都という地域色を意識した演出を取り入れ、バブル世代のオトナのみならず、外国人観光客の来店も見込んでいるとのことだ。

 20代男性である筆者はバブルが弾けたあとに生まれてきた平成世代なのだが、マハラジャ祇園復活のニュースを小耳に挟み、その世界を無性に体験してみたくなった。ライヴハウスには人並みに通っていても、ディスコやクラブといった類の店には、一度も足を踏み入れたことがなかったからである。以前から“パリピ”の溜まり場という印象が拭えず、どうにも近寄りがたかったのだ。

 そこで今回、東京から関西旅行に来ていた大学時代の先輩2人組に付き添ってもらい、思い切ってマハラジャ祇園に潜入してみることにした。

●祇園の地下空間によみがえる、見事なバブルの世界

 マハラジャ祇園の最寄り駅は、京阪本線の祇園四条駅。駅の出口付近にはガールズバーなどの客引きが一定の間隔で立っていたが、新宿・歌舞伎町に比べれば勧誘の押しは弱く、安心してしまう。四条通のアーケードを5分ほど歩いて左折すると、すんなり店の前に到着。ハロウィンが近いこともあり、カボチャが縦に3つ並んだバルーンがまばゆい光を放っている。

 早速入場といきたいところだが、前もって予習していた公式サイトには、入場の際に写真付き身分証によるIDチェックが行われること、さらにドレスコードがあること(男女ともスマートフォーマルだが女性はドレス、着物、浴衣も可)が記載されていたため、身構える筆者。

 身分証はともかく、自分の服装がドレスコードをクリアしているかどうかは自信がない。普段、ライターとして取材に行くときよりもう一段階かしこまったファッションを選んだつもりなのだが、門前払いされはしないか。先輩Nに至っては、襟付きジャケットの下にThe Vamps(イギリス出身のバンド)のTシャツをのぞかせている。これもスマートフォーマル扱いになるのだろうか。

 入口のスタッフに接近し、やや緊張した面持ちで身分証を呈示した筆者一行は、無事にIDチェックを通過。服装に対する指摘も一切なく、そのまま店内に通される。受付で1人3000円(税込、女性は2500円)の入場料を支払い、紙幣風のデザインが施されたドリンクチケットを1枚受け取った。ここまでは、事前にあれこれ心配していたのが馬鹿らしくなるほどスムーズである。

 コインロッカーに荷物を預け、階段を下りると、そこはいよいよ未知なるディスコの世界。ほの暗い地下空間を大音量のダンスミュージックが支配し、青い光線がダンスフロアを照らしていた。

 23時過ぎの店内は満員とは言えない客入りだったが、30〜50代の男女たちが思い思いに身体を揺らしている光景は、まさに非日常。四隅にあるお立ち台の一角では、一般の女性客が気持ちよさそうにステップを踏んでいる。この時点で筆者は「ああ、場違いかもしれない」と悔やみかけたが、「これがバブルか」と妙な高揚感を覚えたのも事実だった。

●土曜の夜は新旧バランスの取れた選曲でおもてなし

 まずは飲み物をということで、フロア奥のドリンクカウンターへ。竹や“酒”と書かれた提灯が飾られており、祇園らしい和のテイストが漂っていたが、メニュー自体は特に目新しくない。先輩Nがスタッフにおすすめを尋ねるも、基本的に凝ったドリンクは用意しておらず、スタンダードなものを置いているとの返事だった。

 各自ドリンクチケットを引き換えたあとは、3人で座れる席を探す。しかし、どの席なら自由に利用していいのか、イマイチわかりにくい。白いソファーに赤いクッションが置かれたエリアでは人々がシャンパンを酌み交わしており、そこは明らかにVIP席(ボトル購入者専用)だと見て取れた。では、あちらのカウンター席のようになっているエリアはどうか、と向かってみるも、そこには関係者用という張り紙が。

 すると、居場所を見つけられずにうろうろしていた筆者一行に、お立ち台近くの丸テーブル席に座っていた男性が「俺たちもう帰るから、ここ使っていいよ」と話しかけてくれた。BGMにかき消されてしまい多くは聞き取れなかったものの、どうやら会社の仲間たちと大阪から来ていたらしく、「ここに来ればまた会える」と語っていた気がする。

 何はともあれ、筆者たちは3人分の席を確保。親切な男性のおかげで“ディスコ=怖い場所”という筆者の先入観は和らいでいったが、まだダンスフロアに飛び込む勇気は出ない。「全員参加でいきましょう!」というDJの呼びかけも無視し、先輩たちと、しばし様子見を決め込む。

 マハラジャ祇園では曜日ごとにDJの選曲テーマが異なり、水曜は「80’s NIGHT」、木曜は「HOT DISCO NIGHT」、金曜は「ALL NIGHT DANCE」、土曜は「WEEKEND FESTIVAL」となっている。知らない曲ばかりだと楽しめないのではないかと危惧していたが、筆者たちが訪れた土曜は“新旧All Mix!! 土曜だけのエンターテインメントパーティー”と謳われており、「名前は思い出せないが聞き覚えはある」という楽曲が数多く流れていた。

 筆者が確認できたタイトルを挙げるとマイケル・ジャクソンの「スリラー」、デッド・オア・アライヴの「サムシング・イン・マイ・ハウス」、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「リラックス」、アバの「ダンシング・クイーン」などなど。

 ほかにもブルーノ・マーズやジャスティン・ビーバーといった、近年の洋楽も混ざっている模様。これは後々スタッフに聞いた話なのだが、「昔のディスコでは当時の最先端の音楽を流していたから、今のディスコでもそうしている」とのことで、なるほど納得である。

●客の煽りとスタッフのアテンドで、筆者もついにダンスフロアへ…

 席に座って観察していると、ダンスフロアは人の入れ替わりが激しい。なんだか人が増えてきたなと思えば、いつの間にか盛り上がりのピークを迎えており、気づくと落ち着いている。その繰り返しのようだ。

 アッパーなチューンが連続し、「また店内のテンションが上がってきたぞ」と肌で感じていたのも束の間、目の前のお立ち台で踊っていた女性客が、挑発的な表情を浮かべながら筆者たちを手招きしているではないか。それに呼応するかのように、アフロのウィッグを被った男性スタッフが筆者の肩を掴む。

 かくして筆者たちはフロアへと誘われ、周りの客の見よう見まねでダンスに興じることとなった。三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「R.Y.U.S.E.I.」が流れると、DJが「1本指!」と煽ってきたので、筆者もそれっぽく腕を上げてランニングマンのポーズを取る。これが筆者にとって、人生初のランニングマンだったことは言うまでもない。

 その後も、筆者が小学生時代に踊ったことのある「ジンギスカン」や、どう控えめに形容しても“チャラい”ナンバーであるスパンカーズの「セックス・オン・ザ・ビーチ」など、いくつもの人気曲がフロアを沸かせていた。お立ち台はどこからか現れた外国人女性たちが占拠しているし、深夜を回って誰もがナチュラルハイになっているのか、性別も年齢も国籍も関係なく、笑顔で飛び跳ねながらハイタッチを交わす。

 筆者が席に戻って休憩している間も、先輩2人組はダンスを続行。80年代のものと思われる洋楽が流れるなか、なんと40代くらいの女性客に振り付けを教わっていた。

 東京でクラブに行った経験のある先輩Sもディスコに来るのは初めてだったらしく、「クラブで流れるような楽曲には下品に騒ぐものやカッコつけたものが多く、振り付けのある曲は少なかった。そこがディスコとクラブのノリの違いだろう」と冷静に分析。

 そう聞くとクラブにも行ってみたいような、行ってみたくないような……と考えてしまうが、少なくともここマハラジャ祇園は、筆者のような初心者にもやさしいディスコだと言えそうだ。フレンドリーな客が多く、スタッフも客同士の輪をつなげようと率先して動いてくれている。

 土曜はもっと早い時間に来れば忍者ショーや花魁ショーも楽しめたそうなので、そのために再訪してみてもいいかもしれない。
(文=A4studio)