そのパッティング、まさにナンバーワン!(撮影:村上航)

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上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が、女子プロの中でも特に“上手い!”と思う選手のプレーをピックアップし解説する「女子プロの匠」。今回は賞金女王に輝いた鈴木愛の誰もが認める最大の武器・パッティングをチョイス。
【パッティング連続写真】鈴木愛の匠のパッティング
2014年のフル参戦初年度から、一度も平均パット数トップ10を割ったことのない鈴木。今年は惜しくも2位となったが2016年は1位。この数字が平均バーディ数4位、パーセーブ率4位、そして年間トップ10回数1位という群を抜いた安定感を生み出しているということは想像に難くない。
「しっかりとヒットしてカップを越えるスピードで打てる。これが彼女のスタイルであり強さです」と解説を始めた辻村氏。「パッティングが入る秘訣は“良いスピード”と“打ちだしのライン”と“ボールの回転”の3つ。この全ての条件を満たして、ボールが一番入りやすい50cmオーバーの球を打てる。だから入るし、外してもタップインパーを獲れる圏内に収まる」。では、そのパッティングをアドレスから紐解いてもらおう。
まずはグリップに注目。「右手のグリップが上から持てています。多くの選手がフックグリップっぽくなってしまうところを、ちゃんとスクエアで、手の甲がフェースと並行になっている。手のひらが綺麗に合掌できている。これは意外とできそうでできないこと。手のひらがあちこち向いてるとストロークにも色々な癖が出てしまうが鈴木さんはそうならない。これはイ・ボミさんと共通する良いところです」。アドレスの時点ですでに“入りやすい”かたちが出来上がっている。
そこからテークバックに入っていくわけだが、またしても手元に着眼する。「あんまり手元に意識行ってない。これも魅力。体の軸の中にある感じ。小手先感がまったくないので手の強弱でタッチが狂わない」。棒を両脇に挟んで手を使わない練習で身に付けた、体で打てつことができるのも鈴木の強さ。
そしていよいよ核心へ。ヒットしてからの動きに、他の選手とは違う鈴木のパッティングの肝が。「鈴木さんのストロークはヒットしてから、想像とは違うところにいく」。この動きに辻村氏は“匠”を見た。
「本人、そしてジュニア時代から鈴木さんを見ている南秀樹コーチが言うように、鈴木さんはパッティング時にオーバースピンをかけて綺麗な転がりの球を打っていると思いますが、それなのにアッパーブローではないのが凄いところ。スピンをかけることでボールの回転軸が安定するわけですが、無理にかけようとすれば普通は本来捉えなきゃいけないところから打点がズレる。でも、鈴木さんはダウンブローでちゃんとボールを捉えられている。ショットと同じですね。パターにもロフト角はあるわけで、ダウンブローの方がスピンが入りやすい。また、スピンをかけるタイミングはボールにしっかりとヒットしてからで、決してインパクトと同時ではない。まさにヒットアンドリリースの動き。だから出球は強い球でスーッと転がっていくし、カップを過ぎればピタッと止まる」
軌道の話はまだ続く。「ボールにヒットした後、フォロースルーで外に出て行きます。一見インサイドアウトの軌道に見せますがラインは崩れません。それはスクエアにヒットしているということ。それだけボールがフェース面に乗っている時間が長いのです。当たる瞬間の強さ加減とフェースアングル。これだけは絶対に揺るがない」。一見、いびつな軌道に見える鈴木のストローク。そこに神髄が隠されていたのだ。
ここからは誰もが認める鈴木の練習量の話を。辻村氏に「パターは練習すればしただけ上手くなるのか?」という質問を投げかけてみた。
「まずしないと無理です。そこから、どうしたら上手くなるのかを考えて練習しながら、気づいていかないとダメ。練習無くしてそれに気付けるものではないし、才能だけでは限界がある。パッティングは要領じゃありません。その為には質の良い練習が必要で、そのためにはこだわりがある」。そして練習量が匠のパッティングに影響している部分が大きいと続ける。
「メンタルが技術につながってる部分は確実にあると思います。失敗を恐れてたら、しっかりとボールをヒットできないし、叩けない。打つ前の不安はいらない。1打というものに集中しきる。練習量の裏付けがあるから自信がでる。だから勝負どころでも勇気を失わず攻撃的なパッティングができる。最高の球を最高のメンタルで打てる。それが女王の伝家の宝刀です」
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
<ゴルフ情報ALBA.Net>

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