このコラムの著者、マーク・ダフィ(56)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米BuzzFeedで広告批評コラムを担当していた業界通コピーライターだが、2013年に解雇を通達された。趣味のホッケーは結構うまい。◆ ◆ ◆「ようこそ! 私の名前はフランク・ブラント(もちろん本名じゃない)、ボールド™(Bald™)のファウンダーです。ボールドは世界初、完全に透明な広告エージェンシーです。私は、実際にはボールド(頭髪が無い)ではないのですが、『ブランディング』のために頭髪を常に剃り上げています。もちろん従業員は皆、頭がピカピカですよ。女性のスタッフだって、例外ではありません」。「いま業界で一番大事なのは透明性。ですよね? あとストーリーテリングでしたっけ? 我々のストーリーは……隠すものは何もありません! というものです。どうでしょうか。ラガーフェルド氏による、透明なビニールの衣服をオーダーメイドして、従業員は皆、着用しています。下着も無しです! お皿も壁もドアもトイレの壁もすべてガラス製にしてみました。そこの1万ドル(約110万円)のガラス製コーヒーテーブルのうえに我々の定期刊行物があるのに気づきましたか。そのなかには我が社の会計帳簿が誰にでも見られるように挟み込んであります。粉飾ですか? もちろんしていますよ!」。「ボールドは、デジタル広告に特化していることになっていますが、それは完全なホラ吹きでございます。我々が特化しているのはキックバックです! 形式上のキックバック用パワーポイントを用意しており、どんな潜在顧客にもプレゼンテーションをさせていただきます。予算に合わせて新車から新しいビーチハウスまで、さまざまなキックバックをします。これまでのクライアントでは、最高マーケティング責任者さんたちのお子さんの大学の学費も負担したことがありますよ。大学を卒業したけれど、仕事を見つけていない、ぐうたら息子がいますか? 私の会社ではいつでも窓際のデスクが空いております」。「もちろん、私たちは幅広いスペクトラムのオンラインやモバイルのプロダクションを行うことができます。スペクトラム、良い言葉でしょう。中身のない、こういった下らないお言葉がお気に入りな方が多いんです。サードウェーブなコーヒーにオーガニックでナチュラルなノンシュガー甘味料はいかがですか?」。「私たちがプレゼンするアイデアはすべて、あくまでもささやかな提案です。編集、書き直し、やり直し、何でもお気に召すままにしてください。我々の提出した書類をトイレットペーパーの代わりに使っていただいても構いませんよ。私たちのではなく、貴方さまのブランドですから。頭髪がないことに加えて、私たちはエゴもまったく持っておりません。クライアントによる変更に、従業員が少しでも不満気な表情を見せたりしたら、その瞬間にクビになります。今年、4人のアートディレクター、3人のクリエイティブディレクター、それから18人の、違いました19人のコピーライターをクビにしました」。「廊下に飾ってあるスローガンは気に入っていただけましたでしょうか? どれもすべて、ネット上で適当に見つけた格言の類です。どれもこれも響きは賢いけれども、ちっとも中身がないことにお気付きいただけましたでしょうか? 私のお気に入りは『原子状粒子』です。素晴らしいですよね」。

左「ブランドとは、カスタマーのあらゆるタッチポイントにおいて繰り広げられるストーリーのことだ」。右「すべてのデジタルマーケティングにおける原子状粒子、それがコンテンツ」。

 

「我々のデジタル広告は成果があるのか? そんなことは、私には知る由もありません!! より透明な疑問としては、デジタル広告に成果があるものなんて、一体存在するのか? というものです。答えはおそらく、ノーですね。でも心配はご無用です。皆さんには仕事があって、ビーチハウスをどこに建てるかを選ばないといけませんからね。私たちがでっちあげた、いや我が社オリジナルの評価基準を使った報告書を作り上げますから。我が社オリジナル、良い言葉ですよね。この報告書を上司に見せていただければキャンペーンの結果『エンゲージメント』が生まれた(笑)と説得できますよ。というのも、我々はキックバック以外にも賄賂でコントロールできる外部団体によるケーススタディを作らせることも得意としているんです」。「各案件を担当するのはこちらの部署です。ほとんどが女性で、もちろん髪はありません。こちらの案件のサイズですと、バイスプレジデント以上の担当をつけさせていただきます。というのも、アカウントエグゼクティブもシニアプロデューサーもコピーライターもアーティスティックディレクターも皆バイスプレジデントなんです。良い考えだと思いませんか?」。「我が社に多様性がちゃんとあるのか、ですか? 多様性がそんなに重要でしたら、白人以外の従業員を何人か雇っておきますね。もしよろしければ、我が社の姉妹エージェンシーであるマニフォールドモットレー(Manifold Motley)ともおつなぎしますよ。あちらは世界で一番多様性があるエージェンシーです」。

「広告は無駄」

 

「こちらが私のオフィスです。この看板、見たことがあるかもしれません。これはアート作品なんですが、オリジナルなんですよ。かなりの値段がしました。クライアントには、これは皮肉が効いているでしょう、と言っているんです。分かります? (私にお金を払っている)クライアントにとっても皮肉で、二重に皮肉が効いているんです。分かりますか? ちょっと難しすぎるかもしれません」。「ほかには、お見せできるものはないですが、我々は完全フルサービスの、360度サポートの、完全無欠な記録を誇る……もういいですよね。おごりますから、角のハンバーガー屋に行きましょう。ひとつ25ドル(約2800円)です」。【 マーク・ダフィ氏の連載<記事一覧>はこちら 】Mark Duffy(原文 / 訳:塚本 紺)