サッカーW杯(ワールドカップ)ロシア大会の抽選会で、日本がH組に入ったことを示すボード。初戦でコロンビアと対戦する=12月1日、モスクワ(共同)(写真:共同通信社)

2018年のサッカーW杯ロシア大会出場32チームの組み合わせ抽選では、2017年10月に発表されたFIFAランクに準じて第1〜4ポットに分け、行われた。開幕までの約6カ月間をどのように見ているのか、セルジオ越後氏に聞いた。

――来年6月に開幕するサッカーのワールドカップ・ロシア大会の組み合わせ抽選会が12月1日に行われました。日本はポーランド(FIFAランク7位)、セネガル(FIFAランク23位)、コロンビア(FIFAランク13位)と同じグループHに入ったわけですが、この結果について、どんな印象をお持ちですか。

大前提として、ポット4の日本(FIFAランク55位)は、どのグループに入っても格上との対戦になるわけで、恵まれたグループなどない、ということを認識しなければいけないと思います。ドイツやブラジル、スペインといった優勝候補との対戦が避けられたからといって、勝ち抜ける保証はありません。

改めて対戦相手を見ると、ヨーロッパ、アフリカ、南米の3チームと一緒で、これはギリシャ、コートジボワール、コロンビアと一緒だった前回のブラジル大会と同じなんですね。

でも、相手のレベルは前回よりも高くなっています。ポーランドはギリシャよりも実力が上だし、前回のコートジボワールはドログバを筆頭にベテランばかりでしたが、今回のセネガルは攻撃陣に若く、生きのいいアタッカーが揃っている。コロンビアには前回1-4と惨敗しましたが、そのときは負傷欠場だったエースのファルカオが今回はいます。

「日本は弱い」ことを改めて認識すべき

――コロンビアのメディアは「最高の抽選結果だ」と報じているようです。

おそらくポーランド、セネガルも同じように思っているんじゃないですか。とくに日本戦での勝点3は堅いぞ、と。だから、日本が「恵まれた組み合わせ」だとか、「決勝トーナメント、行けるぞ」なんて勘違いしていると、1分2敗と惨敗したブラジル大会と同じ失敗を犯すことになりますよ。

「日本は決して強くない」「日本は弱い」ということを改めて認識することから、準備を始めなければなりません

――決して強くないということを改めて突きつけられたのが、11月のヨーロッパ遠征でした。11月10日のブラジル戦は1-3、14日のベルギー戦では0-1で敗れました。この2試合に関しては、どうご覧になりましたか?

ブラジルもベルギーもベストメンバーではなかったし、本気を出していないのは明らかでした。そんな相手に、日本は勝機を見出せなかった。日本戦に関してベルギー国内でどう報じられたのかは知りませんが、少なくともブラジルでは「日本に勝った」というニュースは、ほとんど報じられていません。

ブラジルにとっては文字通り「テストマッチ」だったわけです。それなのに日本国内では「ブラジル戦の後半は善戦した」とか、「ベルギー戦は惜敗だった」という報道が見られましたが、国民を騙すような報道はいい加減、止めなければいけません。

――この遠征では、これまで日本代表の中心だった本田圭佑(パチューカ/メキシコ)、香川真司(ドルトムント/ドイツ)、岡崎慎司(レスター/イングランド)が招集されなかったことも、話題になりました。

香川自身も言っていたようですが、なぜ、今なのか、僕も疑問に思います。彼らはアジア最終予選の途中からベンチを温めることが多くなっていたんだから、もっと早い段階で外すタイミングがいくらでもあった。

それなのに、なぜ、ヨーロッパ遠征で外したのか。もしかしたら、ハリルホジッチ監督は保険をかけたんじゃないですか? ブラジル、ベルギーに惨敗して解任論が巻き起こったら、「3人を呼ばずにテストを優先したから負けたんだ」と言い訳をするために。


本田・香川・岡崎の3人を呼ばなかった背景を分析するセルジオ越後氏(撮影:今井康一)

――そう勘ぐりたくもなるような、不自然なタイミングだったと。

そうですね。残念なのは、本田、香川、岡崎の3人が外れたからといって、世代交代が進んでいるわけではないことです。

新しい選手が彼らを押しやったわけではなく、彼らが衰えただけ。彼らに代わってスタメンを張っている大迫勇也(ケルン/ドイツ)、原口元気(ヘルタ/ドイツ)、久保裕也(ヘント/ベルギー)はヨーロッパで活躍しているわけでも、日本代表で結果を残し続けているわけでもない。

かといって国内組から生きの良い選手が出てきたかというと、そうでもない。杉本健勇(セレッソ大阪)も長澤和輝(浦和レッズ)もインパクトは残せませんでした。

ハリル監督の攻撃姿勢は

――ハリルホジッチ監督は前線から積極的にボールを奪いに行き、相手に自由に攻撃を組み立てさせない、いわゆるハイプレスを敢行させました。4年前のブラジル大会で率いたアルジェリアでも、そうした戦術でチームをベスト16に進出させています。

そうした姿勢はブラジル戦でも、ベルギー戦でも見えました。でも、ブラジル戦では開始10分で早くも先制されて、腰砕けになってしまった。

それにハイプレスのサッカーでは90分持たない。あれはガタイが良くてフィジカルの強いアルジェリアだからハマったスタイルで、日本人に同じサッカーは無理だと思いますね。2010年の南アフリカ大会で岡田ジャパンがやった超ディフェンシブなサッカーのほうが結果を出せる。

今年、浦和レッズがACL(アジア・チャンピオンズリーグ)を制して10年ぶりにアジア王者になりましたが、レッズも必死に守ってワンチャンスをモノにするスタイルで優勝した。今の日本代表も、時間帯によっては引いて守ってカウンターを狙わないと勝てないでしょう。

でも、そうした戦い方を試す時間ももうなくなってきている。強豪チームとテストマッチを行える機会は、もう来年の3月しかないですから。

――その点で残念だったのが、予選を突破した直後の10月のテストマッチでしたね。国内でニュージーランド、ハイチとの対戦でした。予選の大詰めで対戦相手が限られているとはいえ、日本より予選突破が遅かった韓国は敵地でロシアと、スイスでモロッコと対戦しましたから。

その通りだと思いますね。交渉が下手なのか、交渉に出遅れたのか。遅いということで言えば、東京五輪代表チームの立ち上げも遅いと思います。

10月、森保一監督の就任が発表されて、12月のタイ遠征(M-150カップ)でチームが立ち上げられますが、去年のリオ五輪が終わった時点か、少なくとも今年の頭には監督を決めて、今年5月のU-20ワールドカップ、10月のU-17ワールドカップもその人物が総監督の立場で視察すべきだったと思います。東京五輪で本気でメダル獲得を狙うなら、それぐらい早くから準備を進めるべきでしょう。

――12月9日には、日本、韓国、中国、北朝鮮の4チームが争うE-1サッカー選手権(旧東アジアカップ)が東京で開幕します。インターナショナルマッチウイークではないので欧州組を招集できないですから、国内組にとって最後のテストの場となります。

もちろん、国内組の見極めもテーマのひとつですが、僕は優勝を求めます。東アジアで勝てない監督がワールドカップで勝てるわけがないし、東アジアの大会でチームを優勝へと導けない選手を日本代表に加えても、ワールドカップで勝てるわけがない。そもそも本気で優勝を狙わなければ、選手を見極められるわけもない。

2年前の中国大会で日本は最下位に終わったけれど、案の定、そのチームから日本代表に定着した選手はほとんどいない。今回はホームでの開催なんだから、優勝できなかったら監督はクビという世論を作り上げるべきでしょう。そうじゃなければ、森保監督率いるU-20日本代表を参加させたほうが、日本サッカーにとってよっぽど有意義だと思います。

12月と3月はどう戦うか

――E-1サッカー選手権が終われば、ワールドカップ前のインターナショナルマッチウイークは3月しかありません。開催国のロシアあたりと戦えるといいのですが。

もちろん、海外に遠征して強豪と戦えるに越したことはないですが、今回ばかりは、国内でも有意義な親善試合を組める案があります。


セルジオ越後(せるじお えちご)/1945年ブラジル・サンパウロ市生まれ。日系2世。18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。1972年に来日し藤和不動産サッカー部(現:湘南ベルマーレ)に所属。エラシコというフェイントの創始者といわれる。現在はH.C.栃木日光アイスバックスのシニアディレクターや、JAFA(日本アンプティサッカー協会)スーパーバイザーとしても活動中(撮影:今井康一)

――と言いますと?

ワールドカップ予選で敗退した強豪国――イタリア、オランダ、チリの3チームを招いて親善試合を開催するんです。イタリアにとっては新監督の初陣になるかもしれないし、GKブッフォンのラストゲームになるかもしれない。

オランダにはロッベンやストロートマン、チリにはビダルやサンチェスといったワールドカップで見たかったビッグネームがたくさんいる。日本代表の強化としても相応しいし、注目度も高まりますよ。

とはいえ、ワールドカップのこの3チームを差し置いて日本がワールドカップに出場するわけですから、甘い準備をしていたら失礼です。12月のE-1サッカー選手権も、3月のテストマッチも負けたら監督解任という危機感を持って戦ってもらいたいですね。

(文中一部敬称略)