エイベックスは2017年11月、ロゴも刷新。社名の「a」と企業理念のMad+Pureのメビウスの輪をイメージしている(撮影:田所千代美)

「おかしいんじゃないの」――といわれても、純粋に追い続け、「それってマジ!?」を生む。2017年4月にエイベックスが定めた新たな企業理念(会社側の説明ではタグライン)、「Really! Mad+Pure」を翻訳すると、そんな意味になる。

155億円投じた新本社の中身

エイベックスの業績は2013年3月期をピークに減益が続く。そこで同社は2016年5月に成長戦略を刷新。「第3創業」を掲げ、ライブ・アニメ・デジタル領域への注力、組織改革、経営理念の見直しを打ち出していた。

そして2017年5月に冒頭の「Really! Mad+Pure」を経営理念として策定。新たな組織や働き方改革の一環として、新本社を12月1日に竣工させた。

南青山通りに面した本社は地上17階、地下2階建て、延べ床面積は2万8344平方メートル。社員約1500人が働く巨大オフィスだ。総工費は有価証券報告書によれば、155億円に達する。

竣工を前にした11月30日、エイベックスは報道陣向けの内覧会を実施した。プロジェクトを担当した加藤信介グループ執行役員は「エンターテインメント企業ならではのオフィスを実現したかった」「コミュニケーションが生まれる場所にしたい」と語る。

今回竣工した新本社の特徴は大きく分けて3つある。

1つ目は自由な発想を産むためのクリエイティブな設備だ。IT企業などでは当たり前となっている全社フリーアドレスを導入したほか、6〜9階、12〜15階はリボンのような流線型の長机を配置。さらにIDカードだけではなく、試験的に顔認証システムを取り入れた。

また最上階の17階には米国西海岸をイメージした社員食堂「THE CANTEEN」(ザ・キャンティーン)を導入。席数は400弱で、ホテルのラウンジや広場、個人用テーブル、アジアンダイニングなどさまざまな要素を取り入れた。「おしゃれなだけではなく、社員が行ってみたいと思うような場所にしたかった」(加藤グループ執行役員)。

2つ目は外部との協力体制だ。2016年11月にベンチャー向け投資を目的としたエイベックス・ベンチャーズを設立している。

今回、エントランスを上がったところには「avex EYE」(エイベックスアイ)と名付けたコワーキングスペースを設置。「同じ業界の人たちだけじゃなく、異なる価値観やスキルのある人が混ざり合うことで揺らぎを起こしたい」(加藤グループ執行役員)。

新本社にスタジオを配置予定


プロジェクトを率いた加藤信介グループ執行役員。お気に入りは17階の社員食堂だという(記者撮影)

そして3つ目がエンターテインメント企業として、よりアーティストとの距離を縮めることだ。

2018年夏のオープンに向けて工事中だが、新本社の4階にレッスンスタジオを、5階にはレコーディングと映像用のスタジオを設ける計画だ。

これまでレッスンスタジオは原宿、本社は青山という距離にあったが、今回は育成中のアーティストとの距離を近くしたり、アーティストの活動へのアイディアを持ち寄ることも可能になる。

「今までのライブやマーチャンダイジング(グッズ販売)、ファンクラブ、ヒットアーティスト(の育成)事業に加えて、テック(テクノロジー)を組み合わせることで、届けられる感動は何倍にもなる。その両輪でやっていく」と加藤グループ執行役員は語る。

エイベックスの業績浮揚には、ヒットを生み出し続ける必要がある。新本社はその一助となるのか。